トレンド情報-シリーズ[1998年] |
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(1998.8) |
IT業界レポートも第五回となり、今回はデータウェアハウスとOLAP関連についてレポートします。 ERPが基幹系と呼ばれるのとは対照的に、データウェアハウスもOLAPもSFAやCTIと同様の情報系と呼ばれるシステムです。どの企業も基幹系システムは似ていますが、情報系は企業の戦略的部分が色濃く反映されます。基幹系システムがなければ企業は機能しませんが、情報系システムはなくてもなんとかなりました。日本が市場開放と規制緩和に動かなければ、ERPはもちろんSCMもSFAもCTIも、そして今回のデータウェアハウスやOLAPについても、日本企業が注目することはなかったでしょう。日本企業が業界の中で形だけの競争をしてきたのとは違い、生き残りをかけた競争に突入した現在では、企業戦略をいかに迅速に実現できるかに企業生命がかかっています。企業戦略の実現を可能にする情報系システムの重要性は競争激化の時代になって、大きくクローズアップされることになったのです。 企業の統合的資源管理(企業全体の効率性の追求)、資源利用計画、関連企業や顧客に至るまでの企業業務の合理化、このような企業業務の複雑化にさらに分析機能を強力に追加する必要性が生まれてきました。企業が抱える膨大な情報の有効利用のための分析システムとして、あらたにデータウェアハウス、OLAP、データマイニングといったソフトウェアが企業システムに導入され始めました。いわゆる意思決定支援システムです。 データウェアハウスは1990年にインモン(William H.Inmon)が提唱した“意思決定のためのデータ倉庫”のことで、ERPが日々集めた膨大なデータの集積であるデータベースからマーケティングなどに必要なデータを抽出し、整理することで意思決定支援のデータを整備する考え方です。代表的なデータウェアハウス・ソフトウェアとしてはRed Brick Systems のRed Brick Warehouse がありますが、従来型のリレーショナル・データベース(RDB)が基幹業務システムERPのデータ処理、OLTP(On Line Transaction Processing)を主眼に設計されているのに比べて、データウェアハウスはデータ分析、OLAP(On Line Analytical Processing)を主眼に設計されています。 過去10年くらいの間RDBMSはOLTPに最適になるように設計されてきましたが、DSS(Decision Support System)意思決定支援システムの研究が1975年位からIBMやカルフォルニア大学バークレー校で始まり1985年位からDSSに適合するRDBの必要性が市場でも出てきました。1993年にDSSやEIS(Executive Information System)の具体的実現のために、リレーショナル・モデルの提唱者E.F.Codd博士は多次元データベースと分析であるOLAPの12のルールを定義しました。 OLAP12の定義
より膨大なデータをより早く分析して、日々の意思決定に役立てようとすることは、今後の企業経営や企業戦略に重要な要素となってきました。 加速度的でかつ広範囲なグローバル企業経営の変化に対応して、RDBをソフト製品として販売しているベンダーもデータウェアハウス専門ソフトベンダーもデータウェアハウスの実現とより優れたソフトの開発に力を入れつつあります。 ただ、混乱も生じます。それぞれの開発ベンダーが必要と考える機能は個々に違いますし、当然ソフト製品それぞれが特徴のあるものになってしまい、ERPと同様にどれがOLAPなのかと言われるとそれぞれ違っているものすべてをOLAPと言う以外ありません。企業の個別システムにあったソフト製品の選択が難しいのは、OLAPやデータウェアハウスの場合でもまったく同じです。 OLAP関連の主要ソフトをあげておきます。
ここで整理しておきます。 これまで五回にわたりレポートしてきましたが、企業情報システムはまさに規模においても、質においても加速度的進化を続けています。ERPをコアとした情報システムの進化は周辺業務システムに拡大し、連携して新しい企業システムを生み出しています。 ERPにSCM、SFAの機能を拡張するベンダー、データベースにデータウェアハウス、OLAP機能を追加するベンダー、さまざまなベンダーがそれぞれのソフトとの連携を考えそれぞれの方向に自らを進化させつつあります。 これまで、ハードウェアに縛られ、ハードウェアはOSを限定し、OSはアプリケーションをさらに限定するという状況で、コンピューター・ユーザーの選択肢は限られていました。ユーザーはコンピューターを使うのではなく、コンピューターが提供するサービスが目的であったとすればハードウェアもOSも関係ないアプリケーションの制約がないシステムがユーザーの最大の目的であったと思えます。企業経営を支えるための制約のない業務システムソフトの選択の自由こそがユーザーが望むことだったと考えるのです。企業が個別に開発するのではなく、企業組織や戦略の変化に迅速に対応するソフトウェア製品の制約のない選択がこれからの企業経営に重要な意味を持ちます。
コンピューター企業主導のハードウェアを使うという時代は終わりました。OSに縛られたアプリケーションという制約もなくなりつつあります。 メ ーカーやベンダーが押し付けたシステムではないユーザーが望むシステムの選択の自由が実現するのです。企業情報システムの選択の自由の開放が、これからの企業情報システムを供給するすべての企業で認識されなければなりません。ユーザーの選択に制約のあることが、そのベンダー企業にとって致命的欠陥となりえるのです。 企業システムはユーザーのものであり、ユーザーにより検証・評価されなければならない。 企業情報システムの選択の自由の開放を可能にしたテクノロジーとそのきっかけを作ったERPソフトウェアパッケージの意義は重要です。 今後、企業ユーザーは加速度的に進化する企業システムの賢い選択者にならねばなりません。難しいことですが選択の自由はユーザーの勉強にかかっています。分からないとユーザーが選択を放棄した時、システム屋お任せシステムになった時、また制約の時代に逆戻りです。企業が多くの選択肢の中から様々な選択のできる時代に、日本企業も賢い選択者になってくれることを望んでいます。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
中嶋 隆 (入稿:1998.8) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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