トレンド情報-シリーズ[1998年] |
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(1998.4)
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WTO基本協商の合意が、韓国の情報通信市場に多くの変化をもたらすと予想されるが、その中でも外国の通信事業者が、韓国市場へ進出することが認められること、韓国の国内市場における競争激化、及び韓国の通信事業者が海外へ進出する機会が増大する等、3つの側面での変化が注目される。
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ア.外国の通信事業者による韓国市場への進出(1) 公衆網との接続による音声再販売事業WTO基本通信協商の結果、最も外国の通信事業者が参入する可能性が大きい分野は、公衆網に接続する音声再販売事業であるといえよう。音声再販売事業の場合、設備を保有する事業に比べ、設備投資が相対的に少なくて済むため、早期に事業に着手することが可能であり、一部の高収益区間のみサービスを提供するクリームスキミングが可能であるため、国内に設備を保有するのが困難な外国の通信事業者にとって、参入が容易であり魅力的な投資対象となるであろう。音声再販売事業に対して予想される外国の通信事業者の進出形態は、外国人による投資が49%まで認められる1999年からは国内企業との共同投資形態で進出すると予想され、外国人の株式保有が100%まで許容される2001年からは外国通信事業者の単独進出が予想される。
(2) 有線/無線通信事業
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無線通信分野の場合、有線通信に比べ、設備投資が少なくて済み、同一人の株式保有所有が33%まで認められるため、外国人が参入する可能性が、有線分野に比べ高いと考えられる。特にPCS、TRS、無線データ等新規サービス分野では、ジョイント・ベンチャー、事業提携などを通じて参入することが予想される。 |
イ.国内通信市場の競争激化及びM&Aの活性化情報通信部はWTO基本通信協商の妥結に伴い、1998年から外国通信事業者の国内市場への参入が可能になることから、技術力と資本力を備えた先進国の通信事業者の韓国通信市場への参入が加速化されると予想し、事前に国内通信市場における競争導入を推進している。従って、国内通信市場は、国内事業者間の競争の激化はもちろん、外国通信事業者とも、サービスの質と料金面において競争しなければならない困難な状況に直面すると見られる。現在、主要な通信事業者である韓国通信、DACOM、オンセ通信、STテレコム、新世紀通信、ハンソル・テレコム等主要な通信事業者はもちろん、無線呼出サービスを提供している中小規模の通信事業者すべてがこれまで政府の参入規制下において比較的安定した形で事業を展開してきたが、これからは全面的な競争にさらされ、自ら競争力を確保するための努力を怠れば、生存することがむずかしい環境に直面するようになる。多数の事業者の出現と、し烈な競争は、国内通信市場における公正競争の確保という問題が重要課題として登場することとなり、このための法・制度上の整備と、公正競争問題を担当する中立的な規制機関の必要性が増大すると思われる。一方、競争の激化は、事業者間のM&Aの活性化をもたらすことになる。経営基盤の脆弱な事業者と、支配的な大株主がいない通信事業者を対象として、通信事業に参入することを希望する大企業(三星、大宇、現代等)が、M&Aを試みると予想され、既存の通信事業者間のM&Aも活性化すると思われる。現在、M&Aの対象としてもっとも注目されている事業者はDACOMである。DACOMはすでに1995年から、三星、LG、東洋等の大企業間で株式保有の拡大競争が始まっており、現状では保有規模の大きい株主がいない状況であり、そのうちにM&A競争が起きる可能性がある。DACOMの他にも一部のPCS等新規事業者の中にも資金力の脆弱な事業者と株式保有構造が複雑な事業を対象にM&Aが行われる可能性がある。また、情報通信部もこれまで通信事業者を対象にしたM&Aを禁止してきたが、1998年からM&Aを認める方向で検討を行っている。 |
ウ.国内通信事業者の海外進出拡大WTO基本通信協商の妥結は、国内通信市場に外国の通信事業者の参入を認め、国内市場を蚕食されるという側面もあるが、全世界の通信市場の90%以上を占める69カ国の通信市場が1998年初めから開放されるに従い、韓国の通信事業者も外国通信市場へ参入する機会が与えられたという側面もある。特に韓国の企業が関心を持つ東南アジア市場と中南米市場の場合も、大部分、50%以上の外国人投資を認める計画であり、これらの市場に対し、韓国企業の進出が活発に推進されると思われる。 |
(海外調査部 鈴木泰次、邊在琥) e-mail:suzuki-t@icr.co.jp (入稿:1998.3) |
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