●郵政省関連
郵政省では、インターネット上を流れるわいせつな画像やひぼう・中傷など青少年に有害な情報 の流通ルールを検討するために「電気通信サービスにおける情報流通ル ールに関する研究会(座長、堀部政男・中央大法学部教授)」を開催して検討をしてきた。1997年12月25日には報告書「イン ターネット上の情報流通ルールについて」(案)を公表している。報告書でなされた主な提言は次の通りである。
- *プロバイダーの責任
- 「法律によりプロバイダーの責任を規定することについては、なお慎重に検討すべきであり、当面は、プロバイダーの自主的対応に期待していくことが適当である」とした。
- *プロバイダーによる情報削除や契約解除
- 「公然性を有する通信」を1対1を想定した従来の「通信」と区別し、プロバイダーが有害だと判断した情報について「発信者への注意喚起、削除、利用停止及び契約解除等の措置」の法的根拠について、「電気通信事業法上、可能であると考えられる」として、現行法の解釈によって対応可能だとした。
- *会員情報の開示
- 有害な情報の発信者の実名や住所などの個人情報を被害者救済の観点から開示すべき手続きの制定を求めたほか、開示すべきかどうかを判断する第3者機関の設置の検討を提言した。
この報告書では、ネット上の有害情報に対する法規制については「なお慎重に検討すべ
き」との表現で報告書に盛り込まなかった。しかし、有害情報発信するユーザーの身元情
報を一定の要件に基づいてプロバイダーが開示する手続きの制定や、開示が適切かどうか
を判断する第3者機関の設置の検討を提言しており、郵政省はこれ受けて「情報通信の不
適正利用と苦情対応の在り方に関する研究会(仮称)」(座長・堀部政男中央大教授)を
設置して具体化策を検討中である。もし、会員情報に対する守秘義務が緩和されれば、現
行では難しい問題のある被害者からの情報開示請求への対応が容易になり、プロバイダー
としては苦情対応がしやすくなるといえる。
また、郵政省の外郭団体である社団法人テレコムサービス協会は、この報告書を受けて、1998年1月に「インターネット接続サービス等に係る事業者の対応に関するガイドライン」を策定している。
このガイドラインでは、青少年保護対策としてわいせつ画像などの有害情報へのアクセスを制限する青少年専用IDの発行を求めるとともに、迷惑メールや、なりすましメールなど匿名性の高い情報を発信した会員に対しては、利用制限などの措置をすべきであるとした。発信者情報の公表は「通信の秘密」として引き続き、プロバイダーの守秘義務とされた。あくまで自主規制のガイドラインであるため会員に対しても強い拘束力はないが、いわゆる有害情報に対するプロバイダーのコミットを求めている点が特徴的である。発信者情報の開示については、郵政省の結論を待つという立場を取っており、従来の考え方を維持している。
その他、「通信・放送の融合と展開を考える懇談会」では、1998年5月に「情報通信の多面的展開とサイバー社会 -通信・放送の融合を越えて-」という報告書を公表し、全般的な議論の整理を行っている。
また、外郭団体である日本データ通信協会は、インターネット接続プロバイダーからの会員の個人情報流出を防止するため、同協会の審査基準をパスしたプロバイダーに「適」マークともいえる「個人情報保護マーク」の交付する事を決めており、登録を1998年5月30日から開始している。
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