マルチメディア・ローカル・アクセス技術の展望
TCIは現在約18億ドルを投じてケーブルテレビ施設の高度化計画を実施中であり、450MHz以下の現施設を都市地域では750MHz、その他は550MHz、ないし最低450MHzに広帯域化しディジタル同軸光複合システムに格上げしつつある。また、TCIは97年末までに1/12のディジタル圧縮技術の開発に成功し、大量のSTBをMicrosoftとSun Microsystemに発注した。AT&Tの要請により、TCIはディジタル化計画の前倒しを始めたが、合併時までに幾ら使ってどれだけ進捗しているか、情報はさまざまである。ケーブルテレビシステムによる高速インターネットアクセスサービスは@At Homeが実施中である。問題は電話サービスで、AT&Tは、長期的にはパケット・ベースのディジタル電話IPTelephonyを指向し技術的見通しは立っているとしつつも、当面アナログ電話サービスの試験的提供は行うとしている。
流産したBA-TCI合併の時と最も違う環境変化はインターネットの普及・離陸である。AT&T分割のためISDNの普及が遅れた米国では、インターネットアクセスは加入電話回線+モデムと専用線で始まり、それを追ってケーブルテレビ、無線、ADSLが競争している。インターネット電話時代が到来したと思ったら、市内電話はともかくも、長距離は電話・データ・静止画・動画等をすべてディジタル信号にして伝送するIPネットワーク時代の展望が開けてきた。音声や映像のディジタル圧縮技術開発競争が激しく展開され、ついにはATMもSONETもいらない、理想は「IP over fiber」つまりIPパケットをそのまま光ファイバで伝送することと言うビジョンが登場した。
将来の基幹網を見通して、ローカル・アクセス網の現状と近未来にすり合わせる作業は難しい。しかし、競争とデファクト・スタンダードの時代には躊躇は許されない。AT&Tがリスクに挑戦し、TCI買収に踏み切ったのも、こうした見方であろう。
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