トレンド情報-シリーズ[1998年] |
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(1998.10) |
AT&T-BT国際合弁事業の革新性はネットワーク・インテリジェンスの開放にある。未来網がパイプのようなIP網になれば、サービス内容は基幹網キャリアーの手を離れ、競争は価格とサービスシステムの2局面で行われて、複雑なエンドシステムである移動通信網キャリアーが重要な鍵を握ることとなろう。
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●AT&Tのバンガード・セルラー・システムズ買収 |
●移動通信網は高機能のパイプ(Stupid Network) |
●日本のワイヤレス通信の課題
(注)1997年度は情報通信総合研究所推定
売上高の増加率にもかげりが出た。固定網/移動網サービスの1997年度売上高構成比は3対1に近いが、最近3年間の変動から見て両者が同率となり移動電話市場が固定電話市場を追い越すのは時間の問題になったと思われる。 そこで21世紀に向けた日本のワイヤレス通信全体の成長戦略が課題となり、(1)オフィスや家庭の利用軸では無線LAN・高速無線アクセス(Wireless Local Loop:WLL)など固定通信網の代替え、(2)歩行中や走行中の利用軸ではノートパソコン・PDA・カーナビ等のモバイルコンピューティング、(3)衛星通信/放送の取り込み等のモバイルマルチメディアが検討されている。データ通信利用についてメリルリンチ証券の太田アナリストは、米国での音声/データ通信トラフィック比が50:50であるのに対して、日本の96年度通信トラフィックの構成比は音声75%、データ通信25%で4年ほど遅れているが、PC保有・インターネットアクセスの普及などで4~5年で追い付くと言う。 将来展望を考えるとき重要なのは、(1)固定通信は番号通信(電話に出るのはかけた相手に限らない、人がメディアにつく)だが、移動通信はパーソナル通信(人へのアクセス、メディアが人につく)である、(2)移動通信は移動中だけに使われるものではない(屋内利用、屋外での停止時の利用も)、そして(3)グローバル化への対応(グローバルなシームレス通信の進展)などの基本を認識することである。 この第(2)項に関連しては、位置登録・追跡交換・認証・ハンドオーバー・無線アクセス管理など移動通信網特有の機能が、パーソナル通信網一般として重要であると理解される。パーソナル通信は、移動端末がなくても、移動通信網でなくても、人の通信の移動性が確保されればとの考えである。 そこで固定ー移動の融合について既存事業者のとり得る戦略の選択と言う課題がある。戦略として(1)既存移動網と既存固定網の統合、(2)既存固定網による番号ポータビリティやパーソナル番号の提供、(3)移動網事業者との提携/買収、(4)固定ー移動統合網の建設などがあり、市場支配力の観点からの参入規制などが制約条件となるが、日本の産業再編成はどのように展開されるか。外資の出方とNTTドコモの取扱いが鍵となろう。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(関西大学総合情報学部教授 高橋洋文) (入稿:1998.10) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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