●IMT-2000標準化の見方
ITU-R(国際電気通信連合無線通信部門)のIMT-2000標準化特別会合(99.2.6.)で、QualcommとEricssonの知的財産権(IPR)問題に関連して中断している標準化作業の進め方が協議された。QualcommはIPR問題を先議し結論を得てから標準化作業を再開せよとの主張を繰り返したが、他の関係者はIPR問題の解決と切り離して標準化作業を継続すべきだとの意見であった。従来早期解決に熱心でなかったFCCが「IPR問題はIMT-2000の基本パラメータの勧告予定である99年3月までに解決すべきだ」との立場をとったことが注目される。
IMT-2000は第2世代移動電話(ディジタルGSMとcdmaOneが主流)を継ぐ第3世代移動電話(3G)で、高品質・高能率な音声通信を提供するほか、移動中384Kbps、静止時2Mbpsの高速データ通信を実現する。その国際標準を目指しEricssonなど日欧連合のW-CDMAとQualcommなど米国のcdma2000が、妥協によって共通部分を増やしつつも主導権をかけて対立を続け、QualcommがCDMA特許を駆け引きに使っているのである。
日本ではNTTの800MHz帯PDCサービスで周波数が窮迫しており、日本シティメディア買収で得たテレターミナル用帯域の余裕2MHzの転用や1.5GHz帯PDCサービスの小セル化によっても、2001年目途のIMT-2000サービス開始まで容量不足が続く。周波数事情からディジタル化を急いできた日本で、IMT-2000は2GHz帯で20MHzづつ割り当てられる予定であることから待望されている。
日本以外でIMT-2000の導入を特に急ぐ事情はない。米国ではD-AMPS、CDMA、GSMと3ディジタル方式が併存し、PCSの場合は3方式を含む7方式が市場実験中であり、規格一本化には時間がかかるものとされている。西欧ではGSMW-CDMAの高度化路線が確立されているものの、高速データ通信に関しては、現行の9.6Kbps、14.4Kbps、57.6KbpsHSCSD(High Speed Circuit SwitchedData)などから一挙に3Gに跳ぶのは現実的ではない。中間項として高速パケット無線(General Packet Radio Service:GPRS)やGSM高速版(Enhanced Data forGSM Evolution:EDGE)など384Kbps級サービスを実用化し、高速データ通信の利用法を熟成させるべきだとの考え方がある。
Qualcomm/Ericsson知的財産権問題解決待ちのところ、最近のウォール・ストリート・ジャーナル紙(99.2.22.)によれば、両社は99年4月にテキサス連邦地裁で開かれる特許裁判で和解し、特許相互使用を許諾する模様と言う。
標準化のもう一つ大きな課題にマルチメディア・コンテンツのデータ記述方式の統一がある。郵便とそのリアルタイム・メディア電気通信、新聞とそのリアルタイム・メディア放送の四つのメディアに続いて、今や出版をリアルタイム化した第六のメディアが生まれようとしている。そこでは今放送のディジタル化である「データ放送」と通信の新興勢力インターネットの「IPマルチキャスト」の二つの流れが鎬を削っており、新サービスの一つにモバイル放送がある。マルチメディア・コンテンツ・データの記述方式については、こうした放送・通信の融合をカバーする国際標準化が求められている。
テキスト・データの記述方式はNokia、Ericsson、Motorolaによる移動電話機向け情報伝送方式WAP(Wireless Application Protocol)が事実上の国際標準として認知されている。ところが、マルチメディア・コンテンツ・データの記述方式については、欧州のディジタル放送標準化作業から生まれた国際標準(ISO) MHEG-5(Multimedia and Hypermedia coding Experts Group Phase-5)と米国の標準化団体ATVEF(Advanced Television Enhancemet Forum)が推奨するインターネットWWWのHTMLベース方式の二つの流れがある。モバイル放送を実現するには、両者を統一するか、いずれかを選び無線系に乗せなければならないが、放送/通信二大メディアのせめぎあいにからみ単純にいかない。
日本ではモバイル空間に第六メディアを創造する動きが活発で、すでに移動体向け衛星放送会社「モバイル放送」が設立されている。ディジタル地上波放送が移動体受信に強いOFM方式を採用するため、これをインフラとするこも検討されている。こうした環境下、電気通信技術審議会は99年1月にBSデータ放送データ記述方式の標準について、他メディアとの整合性と将来性から最も望ましいXML方式 ! 、他メディアとの整合性とXMLへの移行が容易なことから望ましいHTML、現時点で望ましいMHEG-5の三つを候補とした。
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