●通信企業もマネーゲームの対象−オリベッティの逆転勝利
先のシリーズ第21回「99年4月からメガコンペティションは新段階」で、テレコムイタリアTOB(株式公開買い付け)をめぐる攻防戦は、ドイツテレコム/テレコムイタリア合併合意で終結したと報じたが、結果的にこれは誤報となった。巨大キャリア誕生の路線が敷かれたことで終結と見たのは、敵対的買収は成功しないと言う従来のヨーロッパ産業界の常識に囚われていたからで、99年初頭の時価総額で自己の20倍(ビジネスウィーク誌の「グローバル1000」98ランクでは13倍)もの巨大企業にTOBを仕掛けるオベッティ(OL)の戦意は止まることを知らなかった。4月30日にTelItalの1株当たり11.5ユーロ(12.20ドル)のTOBを開始したところ、売却申し込みが5月19日までに発行済株式数の9.032%、5月20日に19.89%に達し、最終5月21日午後5時に51.9%と過半数を超えて、攻防戦はOLの逆転勝利に終わった。
OLの提示価格は当初2月20日発表の10ユーロ(11ドル)より高くしたがDT/TelItal合併の値付け(13.75ドル相当)より低いものの、投資家が(1)合併案の株式交換よりOLの現金・社債・テクノス(OL子会社)株式ミックスを好んだ、(2)外国企業に主導権を握られるより自国企業に買収される方を選択した、(3)巨大独占化への懸念からとされる。経営不振のコングロマリットENIを3年で立て直したF.ベルナベTelItal社長が戦後生まれの若手経営者の代表で、左翼民主党中心の現ダマーレ政権の支持を受けていたのに対し、マントアの会計士出身のR.コラニンノ社長が2年で改革したOLはMediobannca、Lehman Brothers&Donaldson、Lufkin&Jenretteなどを財務アドバイザーとし、元財務顧問エンリコ・クッチャMediobannca名誉会長の旧世代人脈でTelItal大株主を組織した。J.P.Morgan、Lazard Freres、IMIとともにDT/TelItalの財務アドバイザーを勤めたCredit Suisse First Bostonまでが売却側に回り、ベルナベ社長の信認に背いたと言われる。
OLは5月22日株主総会でTelItal買収を決定し、5月25日のTelItal株主総会でベルナベ社長以下全取締役がリボナーティ会長に辞表を提出した。TelItal新経営陣は6月28日株主総会で選ばれ、新社長にはコラニンノOL社長が就任する。彼はOLとTelitalのトップを5年間は兼任したいと公言している。
敗れたDTはTelital合併だけが目標達成の道ではない、グローバル化戦略を堅持して移動通信、インターネットなどの高成長分野で対応策を練るとして、5月27日の株主総会でR.ゾンマー社長を再任した(2005年まで)。
DTの当面の買収対象としてはC&Wが売りに出した英国の携帯電話会0ne 2Oneが噂されている。0ne 2 OneはC&Wと米国のCATV会社Media Oneの折半所有だが、C&Wはネットワーク投資とIDC買収のため資金61億調達の際メリルリンチに斡旋を依頼し、Media Oneを最近買収したAT&Tも独禁規制の懸念から手放すことから、0ne2Oneはバンカメ、シティグループ、パリバ等による保有子会社に移され6月14日目標ではめ込み先が検討されている。価格は最低120億ドルとされるが、DTが160億ドルを提示したと噂される。いずれDT、FT、マンネスマンなどの中から買収者が選ばれるだろう。
最も厄介なのはTelIta合併合意の事前通知を怠ったとしてFTがパリ国際商業会議所に調停を依頼した損害賠償要求の解決などFTとの関係の修復である。DT/FT/スプリントの国際通信合弁グローバルワンついてはDT、FTとも維持するとしており、その黒字化と発展の促進が課題である。
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