トレンド情報-シリーズ[1999年] |
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(1999.9) |
ここでは、次の2点について明らかにしたい。
郵政省の『平成11年版通信白書』によれば、日本のインターネットの普及率(全人口に対するインターネット利用者比率)は、世界で13位である。日本よりも普及率の高い12ヶ国について、住宅用市内通話料金比較を試みる。ここでは、市内通話料金の水準を左右する制度(ユニバーサル・サービス基金や加入者アクセス・チャージなどの補償体系が整っているかどうか)の違いについては考慮せず、単純に料金比較を試みる。 |
1−1:インターネット普及率が高い諸国の市内通話料金体系 下表は、インターネットの普及率が高い諸国の市内通話料金体系を示したものである。
この表からわかるように、普及率が高い国の中には、米国やカナダやニュージーランドのように月額定額制、また、オーストラリアのように1通話あたり定額料金制を採用している国もあるが、その他の国の市内通話料金は日本と同じ従量料金である。 |
1−2:インターネット普及率上位12ヶ国との市内通話料金比較 市内通話サービスといっても、各国でサービスの質(区域の広さや保守その他の品質)に差があり、料金水準だけで比較することには無理があるが、あえて料金比較をしてみよう。 ほとんどの国が、ピーク時間帯(平日昼間:8:00〜17:00)とオフピーク時間帯(平日昼間以外と休日・祝日)の2時間帯である。オフピーク時間帯の通話料金は、ピーク時間帯に比較して格安の料金設定をしている。しかし、同じ従量制とはいえ、料金体系は一律ではない。たとえば、北欧諸国では、1分あたりの通話料金は極めて安いが、通話毎に通話料金とは別に一定のセットアップ料金がかかる。このセットアップ料金は、高い国で通話毎に5円〜11円である。また、ベルギーでは、10分以上通話分の料金は30%割引になる。(この他、アイルランドは普及率15位であるが、インターネット接続用の料金を特別に設けており、通話料金の高いピーク時間帯の料金を通常の約4割の料金にしている)。 このように通話時間に応じた料金に加えて1通話毎にセットアップ料金を課す国や、通話時間が長くなると1分あたり通話料金が割り引かれる国もあり、単純に料金表を提示するだけでは明確な料金比較ができない。そのため、インターネットに15分間接続した場合の料金で比較してみたのが下図である1。日本の通話時間帯に従って、3つの時間帯で比較してみた。 1:あるISPのインターネット接続時間は平均約15分である。(Amir Atai, 'A Newchallenge', TELEPHONY, 1998.11.9. p46)
図表:インターネット15分間利用時の料金比較 (1)ピーク時間帯(平日昼間)
(2)オフピーク時間帯(平日夜間19:00〜23:00、土日・祝日昼間)
(3)オフピーク時間帯(深夜早朝23:00〜8:00)
注)OECD Analytical Databaseより1997年の数値で円換算した
3つの表を照らし合わせると明らかなように、日本のピーク時間帯での通信料金は平均並みであるが、オフピーク時間帯においては高い点が特徴である。日本ではオフピーク時間帯にかけ放題になるテレホーダイ・サービスが提供されているとはいえ、こうした割引サービスへの契約を考慮に入れない場合、インターネットの接続時間が長くなればなるほど、諸外国との格差は広がる。 |
1−3:西欧諸国における月額定額料金導入の動向 すでに示したように、欧州諸国では、市内通話料金は従量制であり、定額料金制の国はない。しかし、インターネットの普及に伴い、フランス、アイルランド、英国において、市内通話料金に定額制導入の動きがある。ただし、米国のような定額制(上限時間を設定しない完全な定額制)ではない点が特徴である。
市内通話料金が従量制の欧州諸国では、市内通話料金に完全定額制の導入は困難であるようだ。それに対して、ADSLやCATVなどその他のアクセスによる定額制の導入が行われそうである。最近、英国、フランス、ドイツでは、ADSLサービスの提供に関する報道が目立って増えている。例えば、フランス政府は、1999年11月からのフランス・テレコムのADSLサービス提供を認可したが、その通信速度は電話回線の約10倍で月額料金は265フラン(約5,300円)になる予定であると報じられており、米国の料金とほぼ同水準になる見込みである。これらに関しては、第3回目以降に取上げる予定である。 |
1−4: まとめ 先の2つの問題提起について、わかった点について簡単にまとめてみると、
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(情報流通研究グループ/通信事業研究担当 横山邦江) e-mail:yokoyama@icr.co.jp (入稿:1999.9) |
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