トレンド情報-シリーズ[1999年]

[緊急トレンド・レポート]

ビジネス・モデル特許の衝撃

(1999.9)


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米国で認められている、ビジネス・モデルの特許が日本で本格的に動き出しました。特許庁はこれまで曖昧でしたが、はっきりとビジネス・モデルの特許化を認める発言を始めました。

ビジネス・モデル特許については、業界雑誌の日経コンピュータの9/13号(P136〜P145)に「ビジネス・モデル特許の衝撃」という記事が発表されました。日経新聞(8/28第一面「企業新世紀」新産業離陸の条件)では、まだ曖昧だとしてきた日本における特許化が日経コンピュータ9/13号で特許庁のコメントとして認める方向で掲載されました。新規アイデアの業務プロセスを含むビジネス・モデルの特許化により以下のことが考えられます。

今後考えられる状況

  1. SI企業は部分的にもビジネス・モデル登録の業務プロセスをシステムに組み込めなくなります。また、知らないで特許侵害をした場合は、SIと注文ユーザー両方が損害賠償、使用停止、開発システム廃棄処分の対象となりえます。

  2. 経営コンサルタントや業務コンサルタントが、勝手にビジネス・モデルを提案できなくなりました。提案内容に特許済みビジネス・モデルの有無の判断と特許回避の方策が必要になります。これも知らずに侵害すれば損害賠償の対象となります。

  3. ITによる実現を前提にしており、今後ベスト・プラクティス、テンプレートなどあらゆるITコンセプトの利用によるシステムが特許の対象となりえます。

  4. 今後、ソリューションを仕事とする、メーカ、SI、ベンダーコンサルタントなどビジネス・モデルの調査・研究・登録に来週以降業界全体が動き出すと思われます。簡単なビジネスの仕掛けが特許となる時代になることで、業界の混乱は来週以降大きくなると思われます。

ビジネス・モデル特許に対する対応

  1. 至急に、国内および海外の登録済みビジネス・モデル特許の調査・情報蓄積が必要となります。(特許情報の収集と蓄積)
  2. 今後、システム開発やコンサルティングに組み込まれる業務処理のアイデアや提案されるビジネス・モデルに特許侵害はないか、十分な検討が必要になります。(特許情報の分析と登録)
  3. 現在、進行中の案件、プロジェクトについても至急に対応が必要です。(現状の業務への影響分析)
  4. 今後、メーカーやベンダー、SI、コンサルティング・ファームなどSEやコンサルタントに対するビジネス・モデル特許の侵害について至急に教育する必要があります。(ビジネス・モデル特許の社内教育)
  5. 何が特許で、何が新規のアイデアか、各企業が情報をデータ・ベース化して管理する必要があります。(ビジネス・モデル特許情報の共有化)
  6. 今後の開発契約や特許侵害、特許使用停止命令、特許使用料の支払など法的対応も組織的に準備する必要があります。(ビジネス・モデル特許に対する法的対応の準備)
  7. 今後、ビジネス・モデル特許の対応ができない企業は、システム開発ばかりでなくコン  サルティング業務もできなくなる可能性があります。(ビジネス・モデル特許による現状業務への影響と制約の分析)
  8. これまで、IT業界でシステム開発やコンサルティングを仕事にしてきたSEやコンサルタントはビジネス・モデルの手法や特許情報の教育が必要です。本格的な手法理論のないSEやコンサルタントの淘汰が始まります。(将来的人材育成と教育体制の見直し)

少し考えるだけでも、これだけのことが考えられます。個人的にはビジネス・モデル特許の件はもう少し(6ヶ月ほど)先の案件と考えていましたが、急に動き出してきました。さらに、9/11の日経新聞には国立大学における大学や教授の評価として、論文よりも特許を重視する方針が記事として掲載されました。まさに8月から9月にかけて大学や官庁(特許庁)などいきなり特許化の体制を強化してきたわけで、今後業界全体の問題として大学も巻き込んだ議論が始まる気配です。IT業界のSEやコンサルタントもいよいよ本格的な経営工学、システム工学、モデリング手法といった知識なしでは生き残れなくなりそうです。企業にも個人にもこれまでやってきた模倣やまねが有料になる時代が来つつあります。オリジナルの創造が価値あるものとして認められ、保護される時代は個人が大企業に勝てる時代でもあります。ビジネス・モデル特許で小さな会社が大企業を打倒することができるようにもなります。創造性が認められる時代に、生き残る企業や個人であるのか、真剣に考えなければいけない時代になりそうです。

ビジネス・モデル研究会

情報通信総合研究所では、これまでビジネスとITの研究をしてきましたが、このたびのビジネス・モデル特許の動きに対応して、ビジネス・モデル研究会を結成します。 すでに、ビジネス・プロセス・モデリングで世界的に有名なドイツ、サールランド大学のシェアー博士が設立されたIDS Scheer社の「ARIS」のビジネス・モデリング手法研究会である「ARIS研究会」の幹事会社でもある情報通信総合研究所がビジネス・モデル特許の本格化を受けて「ビジネス・モデル研究会」を結成したいと考えています。
世界中で使用されている180を超えるモデリング手法の研究や欧米のビジネス・モデル特許の情報収集、国内におけるビジネス・モデル特許情報の分析、会員企業に対する情報提供、研究会の開催などが主な活動になります。
当面は、準備事務局で設立準備をしたいと思います。
多数の企業関係者の参加を期待します。

参加申し込み、お問い合わせはFAXまたはE-mailでお願い致します。

ビジネス・モデル研究会 準備事務局
情報通信総合研究所
ソリューション・ビジネス・グループ
担当者 中嶋 隆

住所:東京都港区南青山1-12-31
TEL:03-3470-7911 FAX:03-3470-2679

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