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ICTエコノミーの今
2014年8月7日掲載

消費のICT化を考える
家計消費支出におけるインターネットを利用した支出動向について―総務省家計消費状況調査データを用いて―

(株)情報通信総合研究所
マーケティング・ソリューション研究グループ
主席研究員 野口正人

一昔前はパソコン、今はスマホ、タブレットを用いた消費活動が順調に伸びている。書籍、洋服、食品、デジタルコンテンツ、情報サービス等々、消費行動においてICTがかかわる場面が広がっている。総務省が毎月発表している家計消費状況調査(※1)にはインターネットを利用した支出総額が掲載されており、消費のICT化の進展を金額で把握できる(数値はすべて名目値)。

グラフはその「インターネットを利用した支出総額」(※2)と「ICT関連消費」(※3)、「家計消費支出」(※4)の3項目を示したものだ。家計消費支出は1昨年までほぼ横ばいか若干下落傾向、ICT関連消費は2010年末をピークに低下傾向であったものが、昨年から若干上向いていることが見て取れる。

図1

一方、インターネットを利用した支出総額は、季節変動による上下はあるものの、統計を取り始めた2002年1月からほぼ一貫して増えている。当初、家計消費支出の0.3%程度であったものが、2014年5月には1.8%を占めるまでになった。支出額も2014年3月には消費増税前の駆け込み需要も含まれているが、7813円を記録し、この勢いはしばらく続きそうである。

そこで2015年3月までにどの程度増えるかを予測してみた。前提は、所得は前年度と同水準とし、トレンドや季節変動を考慮した。

図2

結果は予想に反して、2014年度の前半は平均で6%程度の伸びにとどまり、後半は前年度の消費増税前の駆け込み需要の反動減からマイナスの伸びとなる月も出る予測値となった。インターネットを利用した支出総額の予測値は年度後半に失速するように見えるが、当然、消費増税の反動減の影響を除いて考える必要がある。

また今回は所得変動の影響は除いているので、年度後半に向けて景気が上向き、所得が増えれば当然インターネットを利用した支出総額も増えるであろう。

さらにインターネットを利用して商品を購入する際に消費者にあった各種の心理的壁(個人情報や決済への不安)が急速になくなってきているとも言われている。またインターネットの利用を促進する通信料金の提供やスマホやタブレット端末の性能の向上、アプリケーションやシステムの高度化は今後も進展し、消費者のICTを利用したお買いものはさらに便利になっていく。

短期的には今回のように政策等の影響を受けることはあるであろうが、長期の観点から消費のICT化は今後も着実に進んでいく。消費のICT化が進めば、ICT関連サービスにプラスの影響をもたらし、それが企業のICT関連設備投資を呼び込む。設備投資の積極化はサービスの高度化をもたらし、消費のICT化をさらに進めるという好循環を生み出す。消費を起点としてICT関連経済は成長し、国内経済の成長に寄与する。

※1 http://www.stat.go.jp/data/joukyou/

※2 「インターネットを利用した支出総額」とは、インターネット上で商品・サービスの注文や予約をした場合の支出総額。店頭で直接注文や予約をした場合は含めない。

※3 「ICT関連消費」とは、ICT関連経済指標の一つで、固定電話通信料、移動電話使用料、インターネット接続料、携帯情報端末(PDA)、テレビ、パソコンなどへの支出額の合計。

※4 「家計消費支出」とは、特定の商品・サービスの購入金額の合計のほか、食費や光熱費などの支出を合わせた1か月間の支出総額。次の支出は総額に含めない。直接税、社会保険料、預貯金、保険掛金、借入金の返済金、財産購入。

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