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Global Perspective 2012
2012年8月24日掲載

台湾におけるメッセンジャーアプリ:LINE、WeChat、Cubie

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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NHN Japanは2012年8月17日、「LINE」の登録ユーザー数が全世界で5,500万人を突破したことを発表した。LINEはユーザー同士であれば国内・海外を問わず、無料で音声通話やメッセージが利用できるアプリである。ここ最近でもブラックベリー端末への対応、「LINEクーポン」発行、仮想通貨「LINEコイン」導入など顧客開拓や新サービスの提供に積極的である。

本稿では台湾を切り口としてメッセンジャーアプリを見ていきたい。

台湾の通信事業者VIBOとの提携

2012年7月、「LINE」を提供するNHN Japanは台湾の通信事業者VIBOと提携を発表した。両社は共同でのプロモーション活動、サービス開発の協力を行っていくとのことである。提携を記念して、VIBOの利用者がLINEのキャラクターぬいぐるみを格安で購入できるキャンペーンを実施している。また、LINEのスタンプキャラやぬいぐるみが登場するテレビCMも放送している。台湾ではスタンプキャラ同様にLINEのキャラクターのぬいぐるみが大人気である。

(図1)台湾でのLINEのキャラクターぬいぐるみ(左)とVIBOとの提携(右)

(図1)台湾でのLINEのキャラクターぬいぐるみ(左)とVIBOとの提携(右)

台湾におけるLINEのテレビ広告・公式アカウント

ここに来て突然、台湾でLINEが急激にヒットしたのではない。台湾では2012年2月から台湾の女優、グイ・ルンメイを起用してLINEのテレビCMを放映していた。とはいえテレビCMが放送されたのは6か月前であるから台湾でのLINEの普及の勢いは目覚ましいものである。
さらに、2012年6月からは台湾、香港、タイで「LINE 公式アカウント」の提供を開始した。日本国内からも台湾だけでなく海外有名人のアカウントを追加することは可能である。
今後も台湾での更なるLINEの展開に期待が寄せられる。
また台湾では「LINEカメラ」も人気があり、スタンプ付の写真の送受信も盛んに行われている。シンプルだが楽しめるコミュニケーションである。

(図2)LINEカメラでスタンプが付与された台湾大学(左)、
台湾北部・淡水の夕日(右)の写真

(図2)LINEカメラでスタンプが付与された台湾大学(左)、台湾北部・淡水の夕日(右)の写真

台湾で人気のメッセンジャーアプリ:WeChatとCubie

台湾では「LINE」のほかに人気があるメッセンジャーアプリとして「WeChat」と「Cubie」を見てみる。

(1)台湾でも人気のWeChat
中国最大のオンラインゲーム企業であるテンセントが2011年1月から提供しているメッセンジャーアプリ「WeChat」も台湾では人気がある。日本ではあまり馴染みがないが、中国や台湾、香港の中華圏の他に東南アジアでも大人気のアプリである。利用者数は全世界で1億人以上いる。世界中の見知らぬ人ともコミュニケーションができるのがウリの出会い系メッセンジャーアプリとも言えるだろう。見知らぬ人とコミュニケーションができるとのことで、メッセージを知らない人に発して、そのメッセージを偶然拾った人とコミュニケーションが可能な「Drift Bottle」という機能がある。試しに使ってみたが、いまだに中国人以外と繋がったことがない。
2012年7月現在、WeChatでは「LINE」のようにスタンプの有料販売や仮想コインのような収益源となる具体的なビジネスモデルは確立されていないが、現在はユーザー基盤の拡大に注力しているとCEOはコメントしている。既にLINEの約2倍のユーザー数を保有するWeChatの今後のビジネスモデルには注目である。

(2)台湾生まれの手書きメッセンジャーアプリ:Cubie
2012年3月に台湾で生まれたメッセンジャーアプリ「Cubie」は手書きのメッセージを送受信できるのがウリである。写真にも手書きでメッセージを添えて送付することも可能である。日本ではまだ馴染みがないが台湾を中心に東南アジアでは人気があり、2012年7月時点で約250万の利用者がいるとのことだ。利用者の約7割が若い女性とのことである。アプリに関しては国境を越えて提供することができるので、利用者もどこの国のアプリかを意識して利用することはほとんどない。

人で複数のメッセンジャーアプリの使い分け

メッセンジャーアプリは今回紹介したLINE、WeChat、Cubie以外にも世界中でたくさんある。他にもViber、カカオ、WhatsApp、Rebtel、fring、Nimbuzz、TangoそしてSkypeなど目的や利用シーンに応じてユーザーは使い分けている。これは台湾だけに限らず、日本も含めた全世界で共通したメッセンジャーアプリの使われ方であろう。あまりにも多すぎると利用者も使い分けが面倒になってくるので、今後はだんだんと特定のアプリに集約されていく可能性はある。

大きな差異のないユーザインターフェース

メッセンジャーアプリのユーザインターフェースは多くのアプリで大きな差異はない。それぞれのアプリ毎に様々な差別化(LINEならスタンプ、Cubieなら手書きなど)はあるが、総合的に見ると大きな差異はなく、ユーザーは新しいメッセンジャーアプリを利用する際に入っていきやすい。独自色が強すぎて使い勝手の悪いユーザインターフェースでは利用者から逃げられてしまうだろう。

(図3)左からLINE、WeChat、Cubieのユーザインターフェース

(図3)左からLINE、WeChat、Cubieのユーザインターフェース

最後に

台湾でも老若男女を問わず街中でメッセージのやり取りや通話をしている。台湾では夜になると街のあちこちで夜市があり、そこでは中古や新品の携帯電話を売買している店がある。今後はこのようなメッセンジャーアプリに対応していない携帯電話端末は売れなくなる可能性もあるのだろう。携帯電話は通話とSMS(ショートメッセージ)を行うものだけでなく、メッセンジャーアプリを活用してコミュニケーションするためのプラットフォームになってきている。
メッセンジャーアプリに国境はない。今回は台湾を軸に紹介したがメッセンジャーアプリは台湾だけでなく、今後も全世界で拡大していくだろう。そしてコミュニケーションツールとしてのメッセンジャーアプリとソーシャルメディアの境界はだんだん曖昧になってきている。

(図4)台湾の夜市での携帯電話販売店

(図4)台湾の夜市での携帯電話販売店

【参考動画】台湾でのLINE広告(2012年)

【参考動画】LINEを訴求する台湾VIBOの広告(2012年)

*本情報は2012年8月22日時点のものである。

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