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Global Perspective 2012
2012年10月31日掲載

期待される新たな市場A2M:「動物と人」とのコミュニケーション

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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2012年10月19日、ドイツの通信事業者ドイツテレコムが、フランスのMEDRIAと提携して、牛の分娩や種付けなどがモニターできるM2Mサービスを発表した。両社はヨーロッパ全土の約5,000の農家で展開を計画している。

人間以外の「次の一手」

ドイツテレコムではM2Mに注力しており、2012年になってから積極的にM2Mサービスを提供している。ドイツ市場では人を対象にした携帯電話普及率はすでに135%を超えており、成熟市場だ。欧州全体を見渡してもほぼ全ての国で人を対象にした携帯電話普及率は100%を超過した飽和市場である。スマートフォンも普及しつつあり、それに伴ってデータ通信市場も成長してきている。通信事業者としては「次の一手」となる収益源を求めている。そのような中、人間以外で通信を発生させるM2Mには注目が集まっている。

M2MとはMachine to Machineの略称で機械間での通信に用いられる用語である。M2Mの市場予測は世界の様々な調査会社が提示しているが、どの調査においても今後成長が期待される市場である。例えば2012年9月にMarketsandMarketsが発表した調査によると、2017年までにM2Mの市場規模は26.7%成長の860億ドルまで成長すると予測している。

期待される動物市場:A2M(Animal to Man)

今回のドイツテレコムの取組みは「牛」が対象である。M2Mソリューションと称しているが、動物とのコミュニケーションだから、「A2M(Animal to Man)」または「A2M2M(Animal to Machine to Man)」だろう。動物と人間のコミュニケーションは今後も成長が期待できる市場である。

牛は全世界で13〜14億が飼育されている(FAO 2008)。世界の家畜市場を概観すると、羊で約10億、豚が約9.4億、ヤギが約8.6億である。他にも水牛(約1.7億)、馬(約5,800万)、ロバ(約4,200万)、ラクダ(約2,400万)、ラバ(約1,100万)と多くの家畜がいる。さらに鶏(約184億)、アヒル(約11億)など家禽まで目を向けるとさらに多くなるが、家禽との通信はしばらく先の話だろう。

欧州では広大な大地に放牧された牛、馬、羊をよく見かける。欧州にいる家畜の数は世界の中ではほんの一握りである。ブラジル、インド、中国、アメリカのような大国の他にヤギは中東やアフリカにも多くいる。

2012年7月には世界での携帯電話契約者数が60億を突破したことを世界銀行が報告した。この数字はプリペイドも含まれている。海外では1人で複数枚のSIMカードを保有していることが多いため、単純に世界人口70億人のうち60億人が携帯電話を保有している訳ではない。(GSMAによると全世界で実際に携帯電話を利用しているのは約32億人)
とはいえ携帯電話は世界各国において、もはやコモディティ化しており中古端末も流出している。プリペイドのSIMカードであれば入手は容易である。携帯電話を保有することのハードルが世界で下がってきている。それに伴って携帯電話の加入者もいずれ頭打ちになり価格競争も激しくなってくることが想定される。「人と人」のコミュニケーションだけに依拠していても市場はいずれ飽和していく。
「人」の次の新たな市場として「動物と人」のコミュニケーションに着目してみると、まだまだ開拓の余地は多いにある。古代から人間と家畜は縁が切れない関係にある。コミュニケーションツールの発達が人間と家畜の関係をより緊密にしていくことを期待している。

【参考動画】
今回導入される牛向けサービス

(参考)

*本情報は2012年10月30日時点のものである。

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