ホーム > Global Perspective 2013 >
Global Perspective 2013
2013年5月23日掲載

台湾大学発のメッセンジャーアプリ「FunChat」は「LINE」を超えることができるか

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁

2013年4月、台湾大学の学生らが「FunChat」というメッセンジャーアプリを開発したと報じられた(※1)。目標は台湾でも大人気のメッセンジャーアプリ「LINE」を倒すことだ、と述べている。

台湾で圧倒的に強い「LINE」

台湾で圧倒的に利用されているメッセンジャーアプリは「LINE」である。「LINE」はご存知のように日本でも大人気で、全世界で1億5,000万を超えており、そのうち台湾では1,200万を超えている。台湾の人口が約2,300万であるから半分以上の人がダウンロードしたことになる。若者を中心にMRT車内や街中でスマートフォンを見つめながら「LINE」をしている姿をよく見かける。「LINE」は台湾においてテレビや雑誌、新聞、電車での広告、現地通信事業者との提携、キャラクターがぬいぐるみなど玩具になってコンビニの店頭などで見かけるなど、リアルでのプロモーションを積極的に展開している。またメッセージ機能だけでなく、「LINE POP」といったゲームうや公式アカウント、スタンプ販売など総合力でサービスを提供している(参考レポート)。

手書きイラストが作成・送信できるメッセンジャーアプリ「Cubie」と「FunChat」

台湾発のメッセンジャーアプリとして有名なのは「Cubie」である。2012年10月には日本のNTTグループが同社に約2,200万円出資している(※2)。「Cubie」の特徴は「手書きで作成したイラスト」や「写真への手書き文字」が送信可能なことである。

今回台湾大学がリリースした「FunChat」も同様に手書きイラストの作成、送信が可能である。たしかに「LINE」にはない機能だから差別化になるかもしれない。手書きのイラストだから作成に時間がかかるが、世界に1つだけのオリジナルのイラストであり、作成者の個性が出る。

台湾では「手書きイラスト」や写真に手書きをすることが人気あるのだろうか。「Cubie」は東南アジアでも人気があるとのことだから、台湾だけで「手書き」が人気あるという訳ではないようだ。

(図1)FunChat画面イメージ(上2つ)とCubie画面イメージ(下2つ)

(図1)FunChat画面イメージ(上2つ)とCubie画面イメージ(下2つ)

(出典:FunChat、Cubie)

まずは多くの人に利用してもらうこと

「LINE」が圧倒的に強い台湾市場で「LINE」を倒すことを目標として、新たに登場した「FunChat」であるが、「Cubie」の他にも世界的に大人気の「WhatsApp」や中国系の「WeChat」などのメッセンジャーアプリも台湾では人気がある。

メッセンジャーアプリはコミュニケーションのプラットフォームとして自国だけでなく、全世界で利用されるプラットフォームになりうる。そのためにも台湾市場だけでなく、世界で利用されることを意識したプロモーションやサービス開発が必要になってくる。

メッセンジャーアプリは言うまでもなく、まずは多くの人に利用されることが重要である。メッセンジャーアプリはメッセージのやり取りをする人がいないアプリは誰もインストールしない。どんなにかわいいオリジナルの「手書きイラスト」を作成しても送付する人がいなければ面白くもない。

メッセンジャーアプリは同アプリでの個人間でのメッセージのやり取りは基本的に無料である。多くの人を集めてメッセージのやり取りが行われるようになったら、集まった人々を対象にゲームやスタンプ販売、公式アカウントのような企業向けサービス展開、広告など何かしら付加価値をつけた分野で収益を上げることを考えないといけない。実際に「LINE」でも売上の50%がゲームでの課金で、30%がスタンプ販売である。

「FunChat」を開発した台湾大学のチームでは「我們團隊的目標是打敗LINE」(我々のチームの目標は「LINE」に勝つこと)と打倒LINEの意気込みを語っている。打倒LINEに向けた台湾発の新しいメッセンジャーアプリ「FunChat」は今後どのようなサービス展開を行っていくのか、その動向に注目している。

【参考動画】

*本情報は2013年5月15日時点のものである。

(参考)

※1 Vista2.0(2013)May 5,2013『手機即時通訊軟體市場再添新軍,臺大學生推出Fun Chat』
http://blog.vista.tw/archives/2013/05/05/1250 (中国語)

※2 NTTインベストメントパートナーズ(現ドコモ・イノベーションベンチャーズ)2012年10月31日 『Cubie Inc.への投資について』
http://www.docomo-i-ventures.com/topics/121031.html

このエントリーをはてなブックマークに追加
▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。