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Global Perspective 2014
2014年5月19日掲載

「歩きスマホ」生徒が体験:事故や怪我をしてからでは遅い

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

2014年5月13日の朝日新聞デジタル版で「ながらスマホ、生徒が体験:豊川工高」という非常に興味深い記事が出ていた 。下記に引用して紹介したい。

(以下引用、下線筆者)

ながらスマホ、生徒が体験 豊川工高
(朝日新聞デジタル版 2014年5月13日)

スマートフォン(スマホ)を歩きながら、自転車に乗りながら使用することによる重大な事故を予防しようと、愛知県豊川市の県立豊川工業高校で、交通安全教室が開かれた。全校生徒約700人が見守るなか、「ながらスマホ」の実験をして危険性を学んだ。

 (2014年5月)8日にあった交通安全教室で講師を務めたのは、愛知工科大学工学部長の小塚一宏教授=交通工学=と「ユタカ豊川自動車学校」の藤原康正副校長の2人。教室では、額に瞳の動きを追うカメラを付けた生徒が、手ぶらで歩く時と、スマホを操作しながら歩く時の視線の動きを比較。手ぶらでは、近づいて来る人や周囲をまんべんなく見ているのに、「歩きスマホ」では、一瞬だけ視線を上げたものの、視線はほぼ画面に釘付けになった。

 「自転車スマホ」や、イヤホンを付けて「歩きスマホ」した時の実験もし、同様の視線の動きを確認した。小塚教授は「画面に釘付けになると、注意力不足で人や物にぶつかる危険性が増すことを認識し、事故を未然に防いでほしい」と生徒たちに注意喚起した。

 教授は2011年、名古屋市の繁華街で「歩きスマホ」の危険性を調べ、普通に歩く時に比べて視野が20分の1になり、歩く速さも7割程度に落ち込むことを突き止めた。このデータを取り込んでコンピューターでシミュレーションした結果、東京・渋谷のスクランブル交差点では、他人にぶつかったり、転んだりする人が続出。青信号の46秒間で交差点を無事横断できたのは、1500人中わずか547人だったという。同高校では、自転車運転免許制度を取り入れるなど、事故防止に取り組んでおり、今回の交通安全教室もその一環で企画された。「ながら歩き」に詳しい小塚教授とともに講師となった藤原副校長には、自転車の正しい乗り方の指導などをしてもらった。

「歩きスマホ」の実験に参加した3年生の前川恵理さん(17)は、「自転車スマホをついやってしまうことがある。実験では本当にぶつかりそうになって危なかった。こんなに危険だと思わなかった。これからは『ながらスマホ』はしません」と話した。

記事の後半部については、以前に「渋谷交差点で全員が「歩きスマホ」したらどうなる?:NTTドコモのシミュレーション」でも紹介した。

「歩きスマホ」で事故や怪我をしてからでは遅い

今回、高校生に対して実際に「歩きスマホ」がどれだけ危険であるか、実際にシミュレーションを通じて指導している。「普通に歩く時に比べて視野が20分の1になり、歩く速さも7割程度に落ち込む」と数字であげられても、どの程度危険なのか想像できないだろうが、実験を通じて「歩きスマホ」の危険性を学ぶことによって、その重要性を痛感できるのではないだろうか。

実際、駅やデパート、町の中では今でも「歩きスマホ」をしている人はたくさんいる。ある意味、毎日の歩行がすでに「危険性を感じる実験」をしているのかもしれない。しかし、毎日の「歩きスマホ」では怪我や事故に巻き込まれてしまう確率が高い。また自身だけでなく他人にぶつかって相手を怪我や事故に巻き込んでしまう恐れもある。

このような実験は単発的なものではなく、全国的に展開していくとよいのではないだろうか。「自転車スマホ」やイヤホンを付けた「歩きスマホ」なんてもはや「凶器」のようなものである。それらによって自分だけでなく、周囲まで事故に巻き込む可能性があることを徹底的に周知すべきであろう。

そして中学生や高校生だけでなく大人でも「歩きスマホ」をしている人が多い。むしろ大人の方が多いかもしれない。「歩きスマホ」で事故や怪我をしてからでは遅い。大人から範を示すべきであろう。
1人でも多くの人が「歩きスマホ」をやめるようになればよい。自戒も込めて。

*本情報は2014年5月19日時点のものである。

※1 朝日新聞デジタル(2014年5月13日)「ながらスマホ、生徒が体験:豊川工高」
http://www.asahi.com/articles/CMTW1405132400002.html

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