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Global Perspective 2014
2014年9月16日掲載

日本はインドにサイバーセキュリティ分野でどのような貢献ができるのか?

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
副主任研究員 佐藤 仁

インドのモディ首相が2014年8月30日から日本を訪問していた。9月1日には安倍総理大臣と日印首脳会談を行い、会談終了後、両首脳は「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」と題する共同声明に署名した(※1)。今回の共同声明では、今後5年間で日本がインドに官民で約3.5兆円の投融資をし、直接投資額や進出企業数を倍増させる目標を明記され、日本政府が交通インフラや工業団地の整備などを後押しする。また、外務・防衛閣僚級協議(2プラス2)創設を念頭に置いた対話強化など安全保障分野で連携を深める姿勢も打ち出した。通常の共同声明のように曖昧なものでなく、多くの項目において期限が区切られていたり、明確なものが多いのが印象的だった。

共同声明「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」(仮訳)の中には、サイバーセキュリティにおける協力についても「政治、防衛及び安全保障のパートナーシップ」の中に一行だけだが、記載されていた(※2)。ODA分野のように具体的な期限や金額などが明示されてはいない。

10.両首脳は、海洋及びサイバー分野の安全保障における広範囲な共通の利益を認識し、これらのグローバル・コモンズの全体性と不可侵性を保つため、お互いに、また志を共有するパートナーと共に取り組んでいくことを決定した。両首脳は、海洋安全保障、航行及び上空飛行の自由、民間航空の安全、妨げられない合法的な通商活動、及び国際法に従った紛争の平和的解決への共通のコミットメントを確認した。

日本とインドでのサイバーセキュリティ分野での協力は、2012年4月に開催された第6回日インド外相間戦略対話において立ち上げが合意され、2012年11月に開催された「第1回日インド・サイバー協議」から本格的に始まっている(※3)。最近では、2013年3月に開催された「第7回日・インド外相間戦略対話」においても、サイバーセキュリティの重要性は二国間で確認されており、そこでサイバー協議の第2回会合を2013年中に開催したいという話もあがった。

インドはパキスタンやバングラディッシュといった周辺諸国からのサイバー攻撃が日常的に多い国である。特にインドは核保有国であることから、核施設へのサイバー攻撃は同国の安全保障への大きな脅威であることから、サイバーセキュリティ防衛は国家の安全保障の重要な1つの柱である。そして従来からIT分野に強いインドでは、サイバーセキュリティ対策の人材育成にも注力している。

今回、二国間の共同声明においても、サイバースペースを「グローバル・コモンズの全体性」と位置付けており、同領域の不可侵性を強調している。各国のサイバースペースは各国が自らの責任において防衛しなくてはならない。

日本のサイバーセキュリティ防衛力は国際社会の中でも決して強いものではない。それは日本がサイバースペースにおいて攻撃を行わないからである。サイバー攻撃は相手のサイバースペースの脆弱性を検知し、そこを攻撃することによって相手のサイバースペースに侵入し、情報摂取やシステム破壊を行うことである。そして攻撃すると同時に、自らのサイバースペースに脆弱性がないかの確認とシステム改修を行うことが可能となる。

インドのようなサイバー大国と協力することによってサイバースペースの防衛力の強化を図ることは重要であるが、グローバル・コモンズであるサイバースペースにおいて日本が「ただ乗り」だけすることは許されないだろうから、日本からもサイバーセキュリティ分野で、インドや世界に貢献できるリソースを早急に確立させる必要がある。日本はサイバーセキュリティ分野においてインドに対してどのような貢献ができるだろうか。

(参考)

*本情報は2014年9月5日時点のものである。

※1 外務省(2014)「日・インド首脳会談(概要)」(平成26年9月1日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sw/in/page3_000896.html

※2 外務省(2014)「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」(仮訳)(平成26年9月1日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000050478.pdf

※3 外務省(2014)「第1回日インド・サイバー協議の開催」(平成24年11月5日)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/24/11/1105_07.html

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