ホーム > 風見鶏―”オールド”リサーチャーの耳目 2014 >
風見鶏―”オールド”リサーチャーの耳目
2014年8月1日掲載

スーパーフォーミュラ(第3戦)、富士スピードウェイ観戦―クールジャパン/アジア発の自動車文化―

(株)情報通信総合研究所
顧問 平田正之

7月13日(日)、静岡県駿東郡小山町にある富士スピードウェイ(FSW)にスーパーフォーミュラ第3戦の観戦に行ってきました。実は、私はカーレースのファンで特にフォーミュラカーが大好きなことを最初に白状しておきます。さらに私が時々観戦しに行くのは応援するチームがあり、チームメンバーと親しくしているためでもあります。DOCOMO TEAM DANDELION RACINGがそのチームです。まずは、フォーミュラカーの勇姿を御覧ください。

(写真1)フォーミュラカー走行時

(写真1)フォーミュラカー走行時

日本ではカーレースというとスーパーGTなどGTカーが人気で、どうしてもフォーミュラカーは陰に隠れがちですが、私はカーレースの本命はやはり走りを本格的に追及するフォーミュラカーだと思っています。フォーミュラカーは、一定のフォーミュラ(規格)に従って安全性を確保しつつも最低限の装備のみで速度を競う設計がなされていて、一般の市販車とは対極にある車です。GTカーが市販車の改造版をベースにしているのとは違って、フォーミュラカーは大体次のような特徴を持っています。すなわち、

  1. オープンホイール―車輪が社外に剥き出し
  2. オープンシングルシーター―座席は1つでドライバーが露出
  3. 後輪駆動
  4. 軽量で方向指示器や前照灯などの保安部品がない

などです。さらに、車体の前後方に大きなウイングが付けられて、車体を地面に押さえつけて安定性を向上させるダウンフォースを発生させているのもフォーミュラカーならではです。

フォーミュラカーレースは世界に数多く存在しますが、何といっても最高峰は御存知のフォーミュラ1(F1)クラスですし、また有名なものでは、北米のインディカー・シリーズがあります。日本で行われているスーパーフォーミュラレース(2014年は全7戦)は、独立カテゴリーのシリーズでF1とインディカーに次ぐ内容と水準を誇っています。フォーミュラという名称からF1に続く下位レースと誤解されることが多いのですが、しっかり独立したアジア発のスタンダードフォーミュラなのです。この点になるとどうしても説明に力が入ってしまいます。お許しください。スーパーフォーミュラの車両は、同一制作のシャーシ、同一設計のエンジン、同一仕様のタイヤとなっていて、基本的にはレース参加チームのマシン条件は同一レベルでの競争となっています。これこそフォーミュラ(規格)の意味なのです。

富士スピードウェイでのレースは55周、全長約250qで行われ、特にFSWのメインスタンド前の直線コースは長いので最高速度が時速300q以上になります。私が応援するDOCOMO TEAM DANDELION RACING(以下、ドコモ・ダンデライオンと呼びます。)は、一昨年2012年にチーム優勝を果たした強豪(現実は中堅クラスか?)ですが、自動車産業関連企業ではなく、主にICT関連企業が中心のサポートとなっています。NTTドコモとの関係もチーム名で分かるとおり長く続いていますが、それは超高速で移動する車両とのモバイル通信を確保するための検証の必要性に由来しています。ここにICTとの関連があり、私がこの“風見鶏”で取り上げる理由でもあります。

スーパーフォーミュラレースでは、スタッフ全員のチームワーク、ドライバーの技量とメカニックの技能、監督・リーダーの統率と作戦など、マンマシン一体の取り組みが現場の緊張感を通して伝わってきます。ドコモ・ダンデライオンチームでもレース前にピットウォークが行われ、間近かで車両整備の様子をみることができるのですが、分解された車体を見ながら味わう人と機械の複雑な一体感もまた何とも言えないレースの醍醐味でもあります。コース上でのドライバー同士の駆引きやピットインのタイミング、給油やタイヤ交換の所要時間などレースの進行とともに楽しみは倍増していきます。フォーミュラカーの発する轟音を聞くとどうしても興奮を押え切れなくなります。スーパーフォーミュラは、テレビの露出はあまり多くはありませんが、JSPORTSやBSフジ、またスカパーで生中継されていますので、どうぞ御覧下さい。お願いします。

(写真2)ピットイン時

(写真2)ピットイン時

スーパーフォーミュラは、アジアのスダンダードフォーミュラを目指してアジア中心にグローバル展開を進めているところですが、F1やインディが欧米発なのでアジア発の自動車文化として、このスーパーフォーミュラは、日本の貴重な売り(クールジャパンの財産)に成長できる可能性を持っていると信じています。成長発展著しいアジアにおいて、自動車の普及に伴いようやく自動車文化も成熟しつつあり、富裕層中心にフォーミュラカーレースへの関心が高まってきています。そこで、スカパーの協力の下、今年から7戦すべてに渉りインドネシア国内でインドビジョンによる衛星波ライブ放送が実施されています。アジアに向けた放送コンテンツとして有望だと思います。

加えて、モバイル通信会社として、ドコモ・ダンデライオンチームをサポートしているのですから、走行中の車上からの映像やエンジン音、車中のドライバーの姿やスタッフとの情報交換模様などを、例えばNOTTV(mmbi)で放送したり、dビデオで配信したり、スリリングなコンテンツとして活用できるのではないかと思います。フォーミュラカーからの放送・配信という新しいコンテンツは、モバイル通信(放送)サービスとしてとてもクールではないでしょうか。モバイル通信との関係はハード面の伝送に止まらず、ソフト面でのアプローチも可能です。アジア各地にスーパーフォーミュラが浸透するにつれ、日本発のモバイル通信コンテンツとしてアジアに広がっていくことでしょう。まずは、日本でこうしたスリリングなコンテンツを活かす工夫が望まれます。

このエントリーをはてなブックマークに追加
▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。