3Dテレビ、モバイルAR(拡張現実)、タブレット型端末。2010年のICT業界は、年明け早々、数々の新サービス/新製品の話題で賑やかだ。
そんな中、地味ながら見逃せないニュースがある。それは、デジタル・カメラや携帯端末などで利用されている小型メモリー「SDカード」に、「SDXC(SD eXtended Capacity)」と呼ばれる次世代規格を採用した新製品が登場したことだ。
既に複数のメーカーが64GB(ギガバイト)や48GBのSDXCカードを発売している。
2月にパナソニックが発売した、SDXCカード対応のデジタル・ビデオ・カメラの場合、64GBのカード1枚に、最大27時間30分のフルハイビジョン映像が録画できるという(録画可能時間は撮影モードによって変化する)。
「64GB」と言えば、ほんの数年前までパソコンのハードディスク容量であった。それが、切手程度のサイズのSDカードに収まるというだけでも驚きだが、今後その容量は徐々に増えていき、いずれ2TB(テラバイト)の製品が登場すると予想されている。
「2TB」と言っても、ピンとこない人も多いと思うが、「テラ」は「ギガ」の千倍なので、2TBは64GBの約31倍である。前述のビデオ・カメラの例でいうと、2TBのSDXCカードには、850時間ものフルハイビジョン映像が録画できるという計算になる。
メモリーがここまで大容量になると、ユーザーのビデオ・カメラの利用方法にも変化が生じる可能性がある。今までのように、イベントの時だけ撮影するのではなく、常時ビデオ・カメラを回し続ける人もでてくるだろう。
睡眠時間が8時間だとすれば、1日の活動時間は16時間。2TBのSDXCカードなら、仮に起きている間、ず〜っとカメラを回し続けても、50日間以上の映像を記録することができる。
「ビデオ・カメラを手に持って生活するのは面倒だろう」と思うかもしれないが、小型化の進むビデオ・カメラは、今後、ゴーグルやメガネに内蔵される可能性がある。
米国Liquid Image社のビデオ・カメラ付き水泳ゴーグル
(ゴーグルの右側にカメラ、左側にフラッシュを内蔵;4月発売予定)
つまり、ビデオ・カメラ内蔵のゴーグルを身に付けて生活すれば、その人が目にした視覚映像をすべて動画として記録することが可能になるということだ(もっとも周りの人には嫌がられるかもしれないが...)。
そうなると、「過去の記憶を映像で検索する」とか「他人の記憶を追体験する」という、SF映画などで夢想されていたことが、社会的に許容されるかどうかは別として、技術的には可能になる。
SDカードが次世代規格に移行するというニュースは、業界関係者以外はほとんど気にかけていないかもしれない。しかし、長期的にみるとそれは、人々のICT製品の利用方法に大きな影響を与える可能性を秘めているのだ。