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情報通信 ニュースの正鵠
2010年12月22日掲載

2010年情報通信業界の10大ニュース

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 気が付けば、2010年も残りあとわずか。今年も、個人的に印象に残った情報通信業界の10大ニュースをまとめておきたい。

第10位 いろいろな3D製品の登場

 4月にパナソニックのプラズマ・テレビ「ビエラ」、6月にソニーの液晶テレビ「ブラビア」が3D対応製品を発売し大きな注目を集めた。国内薄型テレビ市場でトップシェアを持つシャープは、4原色を採用し鮮やかな色調を売り物にする3D液晶テレビ「クワトロン」、東芝は高性能演算装置「セル」を搭載した機種や裸眼で視聴できる「3Dグラスレスレグザ」を投入し差別化を狙った。テレビ以外でも、パソコンやスマートフォン、デジカメなど、さまざまな3D製品が発売された。これまでのところ、売れ行きはいま一つのようだが、多くの3D対応製品が市場に登場した一年であった。

第9位 存在感を増す中国・インド

 13億人と11億人。桁違いの人口を抱える中国とインドは、情報通信業界においても日に日に存在感を増している。例えば、日本最大の携帯電話事業者NTTドコモの加入者数は現在約5,700万だが、インドでは、それ以上の加入数を持つ携帯電話事業者が5社も存在する。また中国最大(すなわち世界最大)の携帯電話事業者「中国移動」の加入者数はなんと5億8,000万。インターネット・ユーザの数もそれぞれ数億人とされている。

第8位 なんでも仮想化

 最近のICT業界のはやり言葉の一つが「仮想化」。サーバの仮想化、ストレージの仮想化、デスクトップの仮想化など。物理インフラの単位と利用の単位は、もはやリンクしないのが当たり前になってきた。仮想化が注目されるなか、ネット動画で「仮想化の落とし穴」を、わかりやすく、かつ、楽しく説明したユニアデックスの高橋さんが「仮想化エバンジェリスト」として有名になるという一幕もあった。

第7位 ブロードバンド政策への注目

 アメリカでFCC(連邦通信委員会)が3月に公表した「全米ブロードバンド・プラン」は、今後10年間で500MHzの周波数帯を新たにブロードバンドに割り当てる方針を打ち出し注目を集めた。ヨーロッパでも欧州委員会が9月に、無線周波数政策に関する提案を発表。スマートフォンやタブレット端末の普及により、モバイル端末からのインターネット利用が急増するなか、周波数政策の重要性が再認識された。日本では「光の道」議論がメディアを賑わせた。

第6位 EMS市場で進展する一極集中

 アップル、ノキア、モトローラなど、世界中の大手メーカーから機器製造を請け負っているFoxconn。2009年末に約75万人だった従業員が、今月「100万人を超えた」と報道されている。このニュースは、規模の経済がはたらくEMS(電子機器受託製造サービス)市場において、Foxconnへの一極集中が進みつつあることを示唆している。米iSuppli社の予測によれば、世界のEMS市場における同社のシェアは2011年に50パーセントを超える見通し。

第5位 コンシューマライゼーションの顕在化

 調査会社ガートナーが数年前から提唱してきた「ITのコンシューマライゼーション(consumerization of IT)」の動きが顕在化してきた。コンシューマライゼーションとは、大雑把に言うと「新製品がまず消費者市場で先行し、それがのちに企業に採用される」傾向のこと。コンピュータをはじめとするITの最先端の製品は、まず軍事目的で開発され、その後大企業向け、そして最後に消費者市場で提供される、というのがかつての常識であった。しかし最近では、消費者市場で人気の出たiPhoneやiPadが企業市場でも売上を伸ばしたり、家庭用ゲーム機プレイステーション3を300台以上つなげて米国空軍がスーパーコンピュータを構築したりといった、逆転現象が目立ち始めている。

第4位 情報セキュリティへの危機意識が高まる

 尖閣諸島沖で中国漁船が日本の巡視船に衝突した事件で、日本政府が公開を躊躇していた記録映像がYouTubeに流出。米国では、アフガン紛争やイラク戦争に関する軍の機密情報や、外交公電が相次いでWikiLeaksで公開された。誰でも情報発信者になることができるインターネットという新たなメディアの普及が、情報セキュリティにもたらす影響の大きさをあらためて認識させる事件が頻発した。12月には、WikiLeaksの創設者ジュリアン・アサンジ氏が逮捕されるという騒動もあった。

第3位 タブレット端末の躍進

 4月3日に米国で発売されたアップルのiPadが大ヒット。9月25日までの6か月弱で、約750万台を販売し、50億ドル(約4,200億円)近い売り上げを計上した(関連商品含む)(注1)。iPadの成功を受けて、多くのメーカーが似たようなタブレット端末を市場に投入。競争が激化している。タブレット端末は、これまでパソコンやケータイに縁遠かった人達からも好感を持って受けいれられており、単に新しいガジェットの1つではなく、情報端末の利用シーンを大きく変貌させるポテンシャルを持つ製品といえる。

(注1)アップルのアニュアルレポート(Form 10K)より。同社の会計年度は9月25日締めになっている。

第2位 とにかく「ソーシャル」

 ネットトラヒックの調査を行うHitwise社によれば、米国では3月の第2週に、ソーシャル・ネットワーキング・サイトFacebookのアクセス数が、検索サイトのグーグルを超えた。Facebookを創設し億万長者となったマーク・ザッカーバーグ氏は、Time誌の「今年の人」にも選ばれた。5億5,000万人ものアクティブ・ユーザを抱えるFacebookは、いまや中国、インドに次ぐ巨大マーケットと評される。実際、Facebook向けにソーシャル・ゲームを開発するZynga社は、FarmVilleなどのヒット作を連発し急成長を遂げた。ソーシャル・ゲームは日本でも人気。「パッケージ型のゲーム・ソフトが売れなくなった」と言われる一方で、モバゲータウンのDeNAやグリーの存在感が増している。2009年に火のついたTwitter人気も健在。「キャパシティー・オーバーの際に表示されるクジラがカワイイ」と一部で人気者になったりもした。その他、「これからのテレビはソーシャル機能が重要」だとか、「ソーシャル・リーディングが面白い」とか、「ショッピングもソーシャル化する」とか...。あらゆるところで「ソーシャルが大事」と言われ続けた2010年だった。

第1位 ネット動画の台頭

 ネットワークトラヒックのマネジメント機器を製造しているSandvine社が10月に公表したレポートによれば、北米の固定ブロードバンド・トラヒック(ピーク時間帯)の実に20%をNetflix社のビデオ・ストリーミングが占めているという。Netflixというのは、もともとはDVDのレンタル・ビジネスを行っていた会社だが、最近はインターネットを通じたビデオ・オン・デマンドに力を入れている。これが大当たりし、2010年初頭に53ドルだった同社の株価は11月末に200ドルを超えた(その後少し値下がり)。一方日本では、ドワンゴが提供する「ニコニコ動画」が黒字化。動画共有サイトとして黒字化を達成した稀有な事例であるとともに、UGC(ユーザ作成コンテンツ)でエンドユーザ課金が成立しうることを示した点でも意義深い。この他にも、9月にリニューアルされたアップルTVや、10月にソニーとロジテック社から対応製品が発売されたグーグルTVなど、ネット動画関連で多くのニュースが注目を集めた。2010年は、ブロードバンド環境の整備に伴い、インターネット上での動画配信ビジネスが本格的に立ち上がり始めた年と位置付けることができるだろう。


 今年は、この他にも、「スマートフォン競争の激化」、「電子書籍サービスへの取りくみ」、「ARサービスの広がり」、「位置ゲー人気」、「LTEサービス開始」など、いろいろなニュースがあり、10件に絞り込むのは大変だった。

 今回上位にランクインした、ネット動画やソーシャル・メディアは、いずれも数年前から注目されてきたサービスであるが、その影響力の大きさが目に見えるかたちで現れてきた。その他、コンシューマライゼーションや仮想化、EMS市場の一極集中など、業界の構造変化が顕在化した一年でもあった。「在感を増す中国・インド」を第9位としたが、携帯電話やインターネットが、一部の先進的な市場だけでなく、あらゆる国のすべての人々が利用するサービスになるとすれば、多くの人口を抱える市場の存在感は、今後さらに高まっていくことが予想される。


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