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情報通信 ニュースの正鵠
2011年8月4日掲載

非常識なまでの急成長で世界一の大企業にのぼりつめそうなアップル

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 先月19日、アップルが第3四半期(4〜6月期)決算を発表した(アップルの会計年度は9月締め)。

 各種メディアが報じた通り、引き続き業績は絶好調。第3四半期を終えた時点で、売上、利益ともに、昨年度の年間業績を既に大きく上回っている。

図表1 アップル業績推移

 好調な業績発表を受けて株価も値上がり。7月26日には初めて400ドルの大台に乗せた(その後少し値下がり)。業績不振にあえいでいた1997年頃と比較すると、株価は80倍に膨れ上がった。

 7月末時点で、アップルの株式時価総額は3,620億ドル(約29兆円)。これは、マイクロソフト(2,295億ドル)とインテル(1,182億ドル)の合計よりも大きい。マイクロソフトのウィンドウズとインテルのプロセッサーを搭載した、いわゆる「ウィンテル」パソコンに市場を席捲され、経営危機に陥っていた時代のアップルを知る者にとっては、隔世の感がある。

図表2 アップル × “ウィンテル”株式時価総額比較

 7月末現在、アップルの株式時価総額は、エクソン・モービルの3,931億ドル(約31兆円)に次ぐ世界第2位。株価のトレンドを見る限りにおいては、アップルが世界一になる日は近いように思える(過去5年間にアップル株価は6倍になったが、エクソン・モービル株価は16%増にとどまっている)。

 躍進の足がかりとなったのは、言うまでもなく音楽プレイヤーのiPod。2001年に発売されたiPodは2004年頃から人気に火が付き、発売後5年半で1億台を販売。2006年にはアップルの売上の半分がiPodを含む音楽関連事業になった。

図表3 アップルの売上規模と内訳の変化

 iPodの成功で黒字基調に転換したアップルの成長を、さらに加速させたのがスマートフォンのiPhone。2007年に発売されると、毎年バージョン・アップを繰り返し、そのたびに話題を呼んだ。販売台数は4年弱で累計1億台に達し、現在ではアップルの売上の45%を占める稼ぎ頭となっている。

 さらに昨年発売されたタブレット端末iPadも大ヒット。発売後1年間で約2,000万台を販売し、その売上は既にiPodを上回っている。

 起業したばかりの新興企業ならいざしらず、売上規模数兆円の大企業が、新製品を発売するたびに、大きく売上構成を変化させ、なおかつ売上、利益ともにこれほどの急成長を続けていくというのは、過去に例がない。21世紀に入ってから、世界的な大ヒット製品を3つも出したアップルならではの離れ業である。

図表4 iPod、iPhone、iPadの発売と売上の増加

 音楽プレイヤー市場でトップをひた走るiPod、スマートフォン市場において大きな存在感を持つiPhone、タブレット市場で独走するiPad。各端末の好調な売れ行きは、iTunes、App Store、iBookstoreの顧客拡大を意味する。急成長を支えているのは主としてハードウェアの売上であるが、各プラットフォーム上での取引に付随する手数料収入も徐々に増えている(2011年度は第3四半期までで39億ドル)。

 垂直統合型で、サードパーティが提供するアプリケーションの中身まで厳しく審査するアップルのビジネスモデルは、しばしば批判の対象となってきた。iPhoneやiPadが「90年代のPC市場におけるマッキントッシュと同じ運命をたどるのではないか」という指摘は、予測であるとともに相当数の業界関係者にとっての願望でもある。しかし、今のところアップルの勢いは増すばかり。

 この非常識なまでの急成長はいつまで続くのだろうか。


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