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情報通信 ニュースの正鵠
2011年10月24日掲載

CEATEC JAPAN 2011を振り返る

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 今月はじめに幕張メッセで開催された最先端IT・エレクトロニクスの総合展“CEATEC JAPAN 2011”。興味深い展示がいろいろあったが、その中から個人的に印象に残ったものを5つほど紹介しよう。

(1) 4Kテレビ/プロジェクターの発売

「4K」というのは、水平方向に約4,000の走査線を持つ映像の呼び名。4Kディスプレイ自体は、5年ほど前から参考出品というかたちで展示会場を賑わせてきたが、いよいよ一般家庭向けの製品として発売されることとなった。

高精細映像の解像度比較

 4K対応の液晶テレビを12月半ばに発売するのが東芝。“REGZA 55X3”はフルHDの4倍の画素数を有するQFHD (3840 x 2160) の55インチ・ディスプレイを搭載する。もっとも、テレビ放送やブルーレイディスクなどが、フルHDを前提に製作されている現状では、テレビの側で通常の映像を高画質に変換する必要がある。4Kテレビの発売は、その変換技術が実用レベルに達してきたことの表れでもある。

 REGZA 55X3は裸眼3Dテレビにもなる。その場合「フェイストラッキング機能」を用いて、視聴している人がいる場所を検知。見ている人にとって最も見やすい立体映像を表示させることができる。これらの最先端技術を詰め込んだ同製品の価格は約90万円。この価格帯で、どれだけ販売数を伸ばせるのか注目されるところだ。

4K液晶テレビ

 一方、ソニーはデジタルシネマ規格の885万画素(4096×2160)の解像度を持つ4Kプロジェクター“VPL-VW1000ES”を展示した。発売予定は12月下旬で、価格は168万円。REGZAよりもさらに高価だが、大スクリーンでの視聴が想定されるプロジェクターにとって、4Kの解像度は魅力的。説明員によれば、「60インチ〜300インチ」での視聴を推奨するという。4Kや8Kという高解像度は、テレビよりプロジェクター製品向きなのかもしれない。

(2) テレビとスマートフォン/タブレットの連携

 最近、大手テレビ・メーカーがこぞって手掛けているのが、テレビとスマートフォン/タブレットとの連携である。録画番組を携帯端末にダウンロードして外出先で視聴したり、スマートフォン/タブレット端末をテレビのリモコンにしたり、ソーシャル機能を持たせたりなど、いろいろなアイディアがある。

テレビとスマートフォンの連携

こうした連携サービスは、展示会場で見る分には面白いのだが、設定や操作が面倒くさいと、結局利用されずに終わりがち。是非使いたいと思う機能が簡単操作で実現できるかどうか、今後の動きに注目したい。

(3) ソニーの新しい電子書籍端末

ソニーブースには、電子書籍端末「リーダー」の新バージョンが展示されていた。

新「リーダー」で最も重要なのは、通信機能が搭載されたこと。Wi-Fi版が10月下旬、3G対応版が11月下旬から発売される。従来は、電子書籍をパソコンで購入して端末にダウンロードする必要があったが、これで端末から直接購入することが可能になる。

通信機能を利用してウェブ・ブラウジングを行うこともできるが、モノクロの電子ペーパー画面でネット・サーフィンをしたいと考えるユーザがいるかどうかは微妙。iPadなどのタブレット端末と競合するわけではなく、あくまでも電子書籍端末の付加価値といった印象。

ソニーの新「リーダー」端末

(4) スマート・ヘルス

近年、いろいろな製品に通信機能が搭載されて「スマート化」しつつあるが、そうしたスマート化のメリットが大きそうな分野の代表格が健康/医療分野。

体重計、血圧計などで測定したデータを、スマートフォンに転送して管理するアプリケーションが複数展示されていた。日々の血糖値記録が欠かせない糖尿病患者向けのサービスもあった。高齢化社会の進展に伴い、ますます重要性が高まりそうな分野である。データの転送には、USBケーブルでの接続やブルートゥースなどによる無線接続のほか、フェリカを使う例もあった。主なユーザが高齢者になるであろうことを考えると、操作はできるだけ簡単にしたいところ。いちいち接続する必要がない無線通信や、かざすだけで利用できるフェリカに分がありそうだ。

通信機能付き体重計 通信機能付き血圧計

(5) ロボット・スーツ

 インテル・ブースでは、サイバーダイン社が“HAL(Hybrid Assistive Limb)”のデモを行っていた。HALは、装着者の意思を読み取って人の動作をサポートするロボット・スーツ。筋肉を動かそうとする時に発生する生体電位信号を皮膚から検知して動く。なんだかSF小説の中の話しのように思えるが、すでに100カ所程度の医療機関で、歩行困難な患者のリハビリに利用されているという。性能がさらに向上し、低コストで量産できるようになれば、介護サービス、災害地での救援活動、建築現場での重作業など、いろいろなシーンでの活用が期待できそうだ。

ロボット・スーツ


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