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情報通信 ニュースの正鵠
2012年7月19日掲載

ビッグデータ技術の活用で未来のSNSはこうなる(かも)

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2012年上半期の情報通信業界において最も注目を集めたキーワードといえば「ビッグデータ」であろう。ビッグデータをテーマにしたセミナーがあちこちで開催され、5月末にはNHKのクローズアップ現代でも取り上げられた。

インターネットやスマートフォンの普及により、多種多様かつ膨大なデータが日々収集・蓄積されている。これらの膨大な情報「ビッグデータ」をうまく活かすことができれば、これまで出来なかったさまざまなことが実現可能になる。

「社会を変える“ビッグデータ”革命」と題したクローズアップ現代では、コンビニのポイント・カードの情報から各商品のメイン購買者層を割り出して店舗毎に品揃えを変えたり、カーナビの走行情報から事故が起こる可能性の高い道路を見つけ出して対策を講じるなど、私たちが、普段何気なく利用しているサービスにおいて、すでにビッグデータの活用が進んでいることが紹介された。

同番組が「革命」という言葉を用いたことからもわかるように、ビッグデータ技術の影響は今後人々の生活のさまざまな側面に及ぶ可能性がある。本稿では、ビッグデータを活用することで「こうなるかもしれない」というSNSの未来像を3つほど紹介してみたい。

  1. さまざまな切り口で情報のソートが可能になる
  2. 道行く人々の姿の上にSNSアカウントを表示させることが可能になる
  3. 本人とまったく同じようにリアクションするリアルbotが登場し永遠に活動し続ける

1. さまざまな切り口で情報のソートが可能になる

今月初めにパシフィコ横浜で開催されたワイヤレス・テクノロジー・パークにおいて、NICT(情報通信研究機構)が、センサーデータによってTwitterの情報をソートする試みを展示していた。

(写真)センサーデータとTwitterの連携

写真  センサーデータとTwitterの連携

上の写真は気象庁の情報を活用して、台風が通過した地域において「台風」や「気象」という言葉を含むつぶやきを行ったTwitterユーザを表示させた事例である(画面中の、緑の円が台風の通過経路、赤が降水量、白がTwitterのコメントを表している)。

組み合わせるデータはなんでもよくて、電力需給が逼迫している地域のつぶやきとか、電車に20分以上の遅延が生じている路線近辺のつぶやきなど、いろいろなバリエーションが考えられる。

現在のSNSは、基本的に自分が選んだ人の情報を見て交流するサービスである。しかし、さまざまなデータを連携させて情報をソートすることができるのであれば、従来とは違った利用方法が生まれてくるかもしれない。

2. 道行く人々の姿の上にSNSアカウントを表示させることが可能になる

もう1年半ほど前の話になるが、2011年1月のコンシューマー・エレクトロニクス・ショーにおいて、画像認識技術を開発するベンチャー企業Viewdleが興味深い動画を流していた。検索してみたらその映像はネット上にもアップロードされているようなので、まずはそちらをご覧いただきたい。

あくまでも「将来のサービス・イメージ」ということではあるが、顔認識技術を活用して、人々の姿にFacebookやTwitterのアカウントを重ねて表示している。

展示会場にいたViewdleの社員は「端末で顔を覚えさせた友人について表示させる」と話していたが、ビッグデータの処理技術が飛躍的に進化すれば、ネット上に存在する世界中の顔写真データと照合して、道行く人々の姿と彼らのSNSアカウントをマッチングさせることも可能になるかもしれない。

3. 本人とまったく同じようにリアクションするリアルbotが登場し永遠に活動し続ける

Twitterにはプログラムで自動発信を行うbotと呼ばれるアカウントが多数存在する。元テニスプレイヤーの松岡修造さんをモチーフにした「修造bot」やタレントの高田純次さんの「高田純次bot」あたりが有名だろうか。

これらは、「熱血漢」と呼ばれる松岡修造さんや「平成の無責任男」といわれる高田純次さんの際立ったキャラクターを基に、いかにも「らしい」発言をするように作られたプログラムである(もっとも、修造botについては、臨機応変なつぶやきぶりに「本当は手動でつぶやいているのでは」という疑惑も存在するが)。

今後ビッグデータ技術が進歩すると、このような個性を人手で付加したプログラムではなく、その本人がネット上で行った行動を詳細に検証することで、本人と見分けのつかない極めて精巧なbotを機械的に作ることが可能になるかもしれない。

ソーシャル・メディア関連の情報サイトmashableでエグゼクティブ・エディターを務めるAdam Ostrow氏は、いまから一年ほど前のTEDカンファレンスにおいて「コンピュータの能力が向上し膨大な情報を処理する技術が発達すると、過去のツイートやブログへの書き込み、投稿した写真/動画の内容などをすべて分析し、本人とまったく同じようなリアクションを行うデジタル・ペルソナを作ることが可能になる」と予想した。同氏は、このようなデジタル・ペルソナが本人の死後も活動し続けるようになると、人の死という概念さえも揺らぎかねないと語っている。

(注1)本稿で紹介した動画は以下のリンクから視聴できます:

(注2)厳密には「TwitterはSNSではない」という意見もありますが、本稿ではSNSを広義に捉えてTwitterも含めています。


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