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情報通信 ニュースの正鵠
2013年8月7日掲載

なんだかんだ言ってもアップルが依然として強いことを示す2つのデータ

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
清水 憲人

先月23日にアップルは、2013年4月〜6月期決算(注1)を発表した。

前年同期比で、売上高は1%増、営業利益は21%減、当期純利益は22%減となり、1月〜3月期に続いて増収・減益であった。

概ね予想されていた結果とはいえ、2四半期続けて減益となったことは、アップルの驚異的な成長が終わりを告げつつあることを裏付ける象徴的なニュースである。

もっとも「アップル、失速鮮明」「株価低迷アップル、巻き返しなるか」といった記事タイトルを眺めていると、あたかもアップルの経営が苦境に陥っているかのように思えてくるが、まったくそんなことはない。

アップルは依然として強い。そのことを示す2つのデータを紹介しよう。

1つ目は利益率の比較である。減益になったとはいえ、アップルの利益率は携帯端末業界の中で突出している(注2)。

図表1 主な携帯端末メーカーの業績比較

会社によってセグメントの分け方が異なるので、携帯端末事業だけを純粋に比較することは難しいが(注3)、世界の大手メーカーのなかで、きっちり儲けを出しているのはアップルとサムスンだけだ。アップルの営業利益率は前年同期の33%から26%に大幅に低下したが、それでもサムスンより8%ポイント以上高い。

2つ目のデータは、金融資産額(注4)の推移である。

iPhone(2007年発売)とiPad(2010年発売)の大ヒットにより大儲けしたアップルは、ここ数年、有価証券を買いまくっている。今年の6月末時点でアップルが保有している有価証券と現金及び現金同等物の合計額は、日本円で14兆円を超えている。もっとも、資金の大半は税金対策のために海外にプールされており、必ずしも自由に動かせるわけではない。キャッシュリッチのアップルが、今年の5月に社債(注5)を発行したのにはそうした事情がある。ちなみに、アップルの子会社で同社の資金を運用するBraeburn Capitalは、「隠れた世界最大のヘッジファンド」と呼ばれている。

というわけで、引き続き圧倒的に高い利益率を誇り、資金も潤沢に持っているのがアップルである。iPhoneとiPadの急成長がひと段落した今、同社が次に何に注力するのか、注目されるところだ。 

(注1)アップルの会計年度は9月〆のため、2013年4月〜6月期は2013年度第3四半期となる

(注2)アップルにはiTunesやApp Storeなどから得られるプラットフォーム収入や、ソフトウェアの販売収入もあるが、売上の89%はiPhone、iPad、Mac、iPodなどのハードウェアの販売である

(注3)比較に利用したセグメントは以下の通り:サムスン(IT&Mobileセグメント)、ソニー(モバイル・プロダクツ&コミュニケーション・セグメント)、ノキア(Devices & Servicesセグメント)、LG(Mobile Communicationsセグメント)。モトローラはグーグルのセグメント情報の「Motorola Mobil」のデータを引用した

(注4)会計用語で「金融資産」という場合には、売掛金なども含むが、ここでは「現金及び現金同等物」と「有価証券(短期及び長期)」のみの合計をグラフ化している

(注5)アップルは今年の5月に、株式買戻しなどの株主還元を実施するために約1兆7千億円(170億ドル)の社債を発行した

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