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情報通信 ニュースの正鵠
2014年8月13日掲載

特定のサービスしか使わないユーザなら格安になるスマートフォンの料金プラン

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
清水 憲人

米国のVirgin Mobile USA(注1)は先月末、ユーザ自身の利用方法に応じて料金を選択できるスマートフォン向けの料金プラン「custom」を発表した。

 最低料金は月額6.98ドルだが、これには20分間の通話と20通のテキスト・メッセージ(SMS)の利用しか含まれていない。あとは利用スタイルに応じて料金を積み重ねていくのだ。

 例えば、利用できる通話分数を500分に増やすとプラス6.00ドル、テキスト・メッセージを500件に増やすとプラス4.50ドルといった具合だ。インターネットを利用する場合にも、データ量によって料金が変わってくる(注2)。

(図表)Virgin Mobile customの月額料金

そして、これが最大の特徴となるが、月額5.00ドルを追加すると「Facebook無制限」や「Twitter無制限」というオプションを利用できる。

したがって「もっぱらFacebookばかり利用する」ユーザなら、支払う料金は、最低料金の6.98ドルに5.00ドルを加えた合計額11.98ドル(約1,200円)で済む。

Facebookを利用していれば、友人の紹介したサイトにアクセスする機会もあるので、データ利用量がゼロというのは現実的ではないが、理屈のうえでは月額1,200円でFacebookに無制限にアクセスできることになる。

スマートフォンのデータ通信料金はこれまで、利用量と通信速度で決まってきた。利用の少ないユーザであれば、データ量や通信速度が制限される代わりに料金が安く設定される「格安プラン」を利用するという選択肢があるが、ヘビーユーザの場合は事実上選択肢がなかった。

ところがその状況に変化の兆しが見られる。米国では今年に入ってから、特定のサイトへの通信を特別扱いするサービスが登場し始めている(注3)。今回発表されたVirgin Mobile customの場合で言えば、利用するサービスがFacebookやTwitterなどに限定されていれば、料金をかなり安く抑えることが可能になる。

日本でも、こうした料金プランを歓迎するユーザはいるだろう。

LINEとTwitterで友人とのやり取りに明け暮れる人、ウェッブにアクセスするのはネット通販の買い物がメインという人、余暇の大半をニコニコ動画で過ごす人。インターネットの利用は人によってさまざまだ。

日本の場合、例えば、LINEとTwitterを無制限に利用できる月額2,000円くらいのプランが登場すれば、多くの若者が飛びつくのではないだろうか。

もっともこうしたサービスには批判もある。FacebookやTwitterなど、携帯キャリアと連携できるような大手のサービスばかりにユーザが集中することになり、新しいサービスが台頭する機会を失う可能性があるからだ。「あらゆるインターネット・トラヒックは平等に取り扱われるべきであり、特定のサイトへのアクセスだけが無料になるのは不公平だ」という主張である(注4)。

Virgin Mobile customのようなサービスが「特定サイトの優遇施策」と批判され消えていくことになるのか、それとも、「消費者の選択肢を増やす新たなプラン」としてユーザを獲得していくことになるのかは、インターネットの将来に大きなインパクトを持つ可能性がある。今後の動向を注目しておきたい。

(注1)Virgin Mobile USAはSprintの子会社で、Sprintのネットワークを利用してサービスを提供するMVNO(Mobile Virtual Network Operator)。ちなみにSprintはソフトバンクの子会社

(注2)料金プランの詳細についてはVirgin Mobile USAのホームページ(http://www.virginmobileusa.com/custom/#/)を参照

(注3)1月にAT&Tは、企業がエンドユーザの通信料を肩代わりする仕組み「スポンサード・データ」を発表。6月にはT-Mobile USAが、アンキャリア戦略の第6弾として音楽ストリーミング・サイトへのアクセスを無料化する施策「ミュージック・フリーダム」を発表している

(注4)いわゆる「ネット中立性議論」

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