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マンスリーフォーカス
No.32 March 2002

世界の通信企業の戦略提携図(2002年3月8日現在)

 永らくご愛読いただいております「マンスリーフォーカス」は、3月より有料サービスへ移行させていただくことになりました。InfoComニューズレターでは、「概要」と「提携図」をご提供させていただきます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
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94.動揺する衛星通信産業(概要)

 半年前にある通信業界誌は、『衛星のうねり(Satellite surge)』と題して、放送衛星の役割の見直しやヨーロッパ勢の台頭のなか、今後一年間のM&Aにより衛星通信産業は変貌するとの観測記事を掲載した。民営化三羽烏インテルサット、インマルサット、ユーテルサットとヨーロッパ衛星会社(SES Astra)の上場が焦点で、タイミングは業績と市場動向次第と言うことだった。

 ところがこの半年間に起きたことは、非運のイリジウムが新衛星の打ち上げに成功した(02.2.13)ものの、グローバルスターが2001年7-9月期に大幅赤字を出し年が明けると破産申請にに至って(02.2.14.)、移動衛星通信が振るわないことだった。しかし、衛星機器製造・サービス企業ローラル・スペース・アンド・コミュニケーションズは赤字を削減し(2001年業績速報02.2.14.)、サービス業最大手パンナムサットは$20億の債務借換に成功し(02.2.25.)、インマルサット・ベンチャーズは2001年の利子・税・償却前利益(EBITDA)$2.8億を確保した(02.3.5.速報)。最近SESグローバルとエコスターによる衛星高速インターネット合弁事業の噂が流れており、これからが注目される。

95.パソコン独禁訴訟再開(概要)

 米国司法省とマイクロソフトは2002年2月28日に反トラスト法訴訟で2001年11月2日に合意した和解案を一部修正したと発表した。和解案への対応は、和解案に同意する州と同意せずに訴訟を継続する州に分かれ、和解組には競争技術協会(Association of Competitive Technology:ACT)などマイクロソフト追随企業が応援し、訴訟継続組にはサンマイクロシステムやAOL TWなどのライバル企業がついているが、特に利害関係のない一般人が「抜け道が多くてマイクロソフトのパソコンメーカーに対する報復力が温存される」と当初和解案に批判的であったため、手直ししたものである。

 コリーン・コラーコテリー判事の下、和解組が参加するタニー法に基づく吟味手続(judicial review)は3月6日から開始、訴訟継続組が参加する是正命令・排除措置(remedy)見直し審理は3月11日から開始する手筈になっていたところ、訴訟継続組が訴状の一部を3月4日に修正したため、マイクロソフトは準備の都合があるのでRemedyヒアリング開始を遅らせるよう3月5日に請求し、判事は1週間延期とした。

 アナリストのなかにはマイクロソフトは既に同意審決を前提にした戦略展開を始めていると見る向きもある、まずは訴訟再開である。

96.東南アジア3カ国の通信自由化(概要)

 タイ・バーツのフロート制移行で1997年アジア危機の契機となりIMFの指導下1999年第2四半期には韓国に次ぐ経済回復を示したものの今は新憲法に基づく民主化が中心課題であるタイ、32年続いたスハルト体制から1999年10月にワヒド政権に交替したが政治経済安定化に失敗して2001年7月にメガワティ政権に移行し漸く課題解決に取り組むインドネシア、危機対応に当たりIMFに頼らず1998年11月の資本取引規制導入により国際社会から批判を浴びたが自力で経済再生に成功したマレーシア、と言う特徴的な東南アジア3カ国の通信自由化の現状をみる。

タイ王国
 WTO自由化枠組みに従うタイ新通信法は、前チュアン内閣が起草しタクシン内閣に引き継がれ2001年12月に議会を通過したが、外資制限を従来の49%以下から25%に下げたため既存事業者の扱いに問題を生じ、また公的独占前提の事業権制(収入分配方式)から免許制(免許料方式)に移行した自由参入体制を監理する独立規制機関「国家通信委員会(NTC)」の設立が事実上の前提となるため、まだ実施されていない。既存国営独占TOTとCATの民営化は公企業会社化法(Corporatization Act、1999年4月成立)により実施されるが、タクシン内閣はこれもNTC設立後とすべきだとして、TOTは2002年4月CATは2002年6月とする原案を2002年1月に無期延期した。

インドネシア共和国
 インドネシアの現行通信法はスハルト体制下で起草されハビビ大統領時代の1999年9月に成立しワヒド政権下に施行された。その枠組みは(1)免許制下すべての事業者は平等、(2)すべての事業者にユニバーサルサービス義務、(3)すべての通信事業を外資に開放(外資法により95%まで)と開放的だが、政省令など具体的レベルは制限的で不安定な環境下新体制の整備は進んでいない。BOT方式によるインフラ整備プロジェクトの打ち切りに伴う外資への補償問題が続いている。国内通信事業者PT Telekom(TLK)と国際通信事業者PT Indosat(ITT)は既に民営化されているが、政府持株比率がそれぞれ81%、65%と高い。政府の2002年度民営化計画によればITT持株は6月と10月に分けて売り出される。

マレーシア連邦
 マレーシアは通信・放送・インターネットを総合する野心的な1998年通信マルチメディア法を1998年10月に公布し、独立規制機関マレーシア通信マルチメディア委員会(MCMC)をスタートしている。既存通信事業者テレコムマレーシア(TMB)は1990年に上場されたが今も政府系が2/3所有している。目下の焦点は携帯電話事業者5社に対して次世代(3G)免許3を予定することに伴う業界再編成である。

<寄稿> 高橋 洋文(元関西大学教授)
編集室宛 nl@icr.co.jp
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