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マンスリーフォーカス
No.34 May 2002

世界の通信企業の戦略提携図(2002年5月8日現在)

100. 経済は回復へ、通信企業は地獄の季節(概要)

 米国商務省が2002年4月26日に発表した2002年第1四半期実質国内総生産(GDP)の速報値が年率ベースで予想を越える+5.8%だったことで、世界経済回復への期待を込めた新聞見出し「米景気一気に立ち直り」(2002.4.27.日経)が現れた。

 ところが、2002年第1四半期実績から見た電気通信企業については、過剰設備、山なす負債、苛烈な競争による「地獄の季節(hellish time)」が続く形勢である
米国第2位の長距離通信事業者ワールドコムのB.エバース社長兼CEOは業績低下と不明朗会計問題から身が持たなくなって4月30日に辞任した。

 米国第4位の地域通信事業者クェストは2001年秋以来の収益性低下に証券取引委員会調査の報道から1年前の1/10まで株価が急落した。

 移動通信事業者のスターと目された英国ボーダフォンの株価は、加入者純増実績が予想以下だったため4月25日に4年来の最安値を記録した。

 今回のテレコム不況の特色は「底が見えない」ことで、経済界の動きの半年遅れで回復した過去の歴史にない現象が起きている。何故こうなったか、7年分を1年で投資するほどの大拡張をやったことが最大の理由であろう。

101. テレビは大衆娯楽の王者(概要)

 エコノミスト誌の特集記事「テレビジョン」("Suevey: TELEVISION" The Economist 2002.4.11.)によれば、ネットワークテレビ、衛星放送、ビデオ、双方向テレビなどの多チャンネル化・多メディア化にもかかわらず、人々の求めるコンテンツは個別化していない。変化したのは経路だけで、大衆は同じ番組を違う時に見ているのが現状だと言う。これは東京大学社会情報研究所水越伸助教授が紹介したアメリカのメディア史研究者ミッチェル・ステフェンスの所説『現在のインターネットで進行しているのはデジタル革命ではなく、テレビという視聴覚メディア革命がいまだに続いている、つまりインターネットはテレビの進行形だ』と変わっていない。

 米国のテレビを批判する者は、視聴者の選択の幅は広がったが視るべき番組が極めて稀だ。それはアメリカのTVは番組を視聴者に売り込むよりも視聴者を広告屋に売り付けているから、また、進行する企業統合はリスク・テイクと創造性の敵だからと言う。しかし、かつてTVドラマは映画よりレベルが低いものと見下されていたが、今日はTVドラマは映画よりクリエイティブな作品とされ、名声はTVにシフトしている。

102. インドの通信自由化の近況(概要)

 現在インドには固定系電話が約3,600万、携帯電話が約600万あるが、人口が約10億なので普及率は低い。今も4才以下の子供の半分が栄養不良の國として、電話はこれまで贅沢品だったが、インド政府はディジタル・デバイド対応政策に熱心である。向こう5年間に$200億の移動通信投資が行われる見通しで、中国に次いで大きい市場として世界の注目を集めている。

 「1999年新電気通信政策」は(1)固定系事業は自由参入、(2)移動系事業は政府系(旧国内独占のBSNL、MTNL、旧国際独占のVSNL)と民間で各区域 4社、(3)国内長距離電話は2000年8月から開放、(4)国際電話は2002年4月から開放、(5)国際海底光ファイバ接続は2000年7月から開放などの枠組みを設定した。DOTの政策機能とTRAIの規制機能の権限配分は調整されたものの、多種類の事業免許の更新とIP電話免許など新免許の追加もあり、具体的な免許付与の案内(guideline)と入札に当たって既存事業に配慮して調整的なDOTと自由参入に忠実なTRAIの対立は続いており、自由化体制整備はなお進行中と言える。

<寄稿> 高橋 洋文(元関西大学教授)
編集室宛 nl@icr.co.jp
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