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マンスリーフォーカス
No.70, May 2005

世界の通信企業の戦略提携図(2005年5月1日現在)

208. テルストラの完全民営化検討開始(概要)

オーストラリアの政治システム

 2004年秋のオーストラリア連邦総選挙で自由党・国民党連合が世論調査の労働党優位予想を覆して勝利を収め、自由党J.ハワード党首を首相とする第 4次保守連合内閣が誕生した(2004年12月)。下院議席配分が選挙前(保守連合81労働党65その他4)から選挙後(保守連合87労働党60その他3)へと27議席差に増したうえ、定員76の上院の過半数39議席を獲得したことから、テルストラ(TLS)の完全民営化の行方にも影響する事態となり、敗れた労働党M.レイサム党首は僅か13ヶ月で辞任し(2005.1.28)、かつて党首だった(1996-2001)K.ビーズレー(Kim Beazley)が無競争で後任を引受けた。

 オ−ストラリアは成文憲法をもつ議会制民主主義国家であり、エリザベス?が名目的国家元首で憲法上の国家元首は連邦総督、議会の招集・解散や閣僚の任免など最高の機能をもつ。ただし、その国事行為は慣例的に内閣の「助言」に従った名目的なもので総督自身も内閣が人選し通常オ−ストラリア人長老政治家が選ばれる。ほとんどのオ−ストラリア人は難しい元首論を知らずエリザベス?の名代が総督と信じている。オ−ストラリア連邦議会は、下院が150選挙区1区1名の小選挙区制、上院が12州毎に議員6名づつ6年任期で3年毎に半数改選、2直轄地域は3年任期議員各2名と定められ、候補者氏名を印刷した投票用紙に優先順位を最下位まで記入させる「記号式無記名投票制」が植民地時代から採用され、最終集計まで時間がかかる。ただし人口の85%以上が都市に居住し下院選挙区の分布も都市集中なので、集計終了次第当選としてもIT化の威力で早く決まるようである。議会の解散は上下両院とも事実上首相が決めるので、3年以上選挙をしないと憲法に触れるが短期解散は時折ある。なお、上院議員は憲法によりオーストラリアの年度変り7月1日就任となっている。

 労働党政権として1949年以来久しぶりに政権奪還に成功した第21代AU首相G.ウィットラム(1972.12.5-1975.11.11)は、中国との国交回復に続いて国連人権憲章に基づく女性の地位向上策や地域開発・環境教育など各種改革を急ぎ過ぎて反対派過半数の上院に遮られ法案審議停滞により退陣を余儀なくされた。異例の事態で首相代理に指名された自由党M.フレーザー党首は議会を解散・同時選挙を行い地滑り的勝利を収めた。下院議席配分は自由党68・労働党36・国民党23など、定員増を含む64議席を争う上院議席配分は自由党27・労働党27・国民党7などとなり、保守連合第22代首相(1975.11.11-1983.3.11)となった。

 次の選挙から労働党が強くなり第23代首相R.ホーク(1983.3.11-1991.12.20)さらに第24代首相P.キーティング(1991.12.20-1996.3.11)と続いた。
オ−ストラリアは、1970 年代の3年+80年代から13年間の労働党政権の間に、米国との同盟関係を保ちつつ英国を源流とする「白豪主義」から親アジアに変った。R.ホーク首相がAPEC発足(1989年1月)の功労者となった背景の一つには、オ−ストラリアが受け入れた移民の構成変化がある。1977年に来た移民58,000名の半数が欧州からでアジアからは15%に過ぎなかったのが、2000年に来た移民97,000名のうち欧州出身者が19%に落ちアジア出身は35%に躍進したのである。

 ハワード首相は「バトラー(断固として闘い抜く人」である。1788年以来オーストラリアの海岸に下ろされた囚人は自ら獄舎を造り闘い抜いて自活した。流刑囚に次いで渡航してきた移民も同じ、欧州出身もアジア出身も同じことをしてきたのが基本である。オーストラリアの多文化共存には自由党・国民党・労働党の差は基本的にはなく、持続的経済成長、低失業率の連続、政府債務も小さく財政黒字が続いてきた。しかし最近は多文化主義に反対しアジア系移民排斥訴える「ワン・ネーション」が現れたり、経済改革も10年目の「改革疲れ」の頃となり新しい取組みが必要になってきた。

通信自由化の取組み

 オーストラリアの電気通信事業民営化に手を付けたのは第4次ホーク労働党政権のミクロ経済政策であった。1990年11月当時の通信体制は(1)国内サービスはテレコム・オーストラリア、(2)国際サービスはオーストラリア国際通信サービス会社( OTC、(3)衛星通信サービスはオーサットの国営事業3社独占だったのを(1)+(2)のオーストラリア・国際通信会社(AOTC)と(3)オーサット売却・民営化による新規事業者の二社体制(寡占)とし、1996年度末 (1997.6.30)以降は完全自由化を図る方針が発表された。AOTCは設立手続完了(1992年2月)後テルストラに改称された(1993年4月)。オーサット売却は国際入入札が行われ(1991年11月)、英国のC&W・米国のベルサウス(BLS)・オーストラリア企業連合からなるコンソーシアムが落札しオプタス・コミュニケーションズ(出資率C&W/BLS各24.5%、Optus51%)が誕生した。

 電気通信自由化はフレーザー保守連合政権下で加速された。関連法10本を含む新しい電気通信法(1997.7.1施行)は、合計1000頁を超える膨大な法文は規制緩和・非規制化を徹底するものであった。
その枠組みの特徴は(1)通信事業者の数を制限しない、(2)タイプも区別しない(キャリアーとサービス・プロバイダーだけ)、(3)キャリアー間、キャリアーとサービス・プロババイダー間の完全な相互接続を保証する。(4)新規参入キャリアーに対する技術上・財務上の基準は設けない(参入を制限する結果になる)、(5)ノンコード・アクアセスを認める(事前登録利用者の発信にキャリアーコードは不要)、('6)フラッグ・キャリアーTLSを除き外資規制は撤廃する6点である。

テルストラ民営化の経緯と課題

 テルストラ民営化は1991年テルストラ法に基づく。もともと1991年AOTC法として制定され(1991.6.26成立)、改称に伴い読み替えられ第2条「テルストラの公共的所有」により国が株式を保有する特殊会社となっていた。自由党は完全民営化を目指したものの第1次保守連合ハワード内閣はまず政府持株の1/3を売却する一部民営化法を成立させ(1996.12.19)、実施(1997年11月)によりA$140億(US$104億)を得た。この法改正案は第2条第1節「政府所有過半数確保」を加える「テルストラ(公共所有稀釈法)」の形としている。
しかし1998年3月に議会に提案した完全民営化法案は野党労働党と地方での通信サービス低下を懸念する独立系議員の反対により上院で否決された。そこで第2次ハワード内閣は「民営化強化法案」を提案し政府所有過半数確保を強調して成立させ(1999.7.5)、政府持株の16.6%を売却し残る政府持株ギリギリ51.8%としてA$160億(US$104億)を得た(1999年10月)。

 テルストラ政府持株売却第1段階(1997年11月売出)は機関投資家向けは1株当りA$3.40、個人向け1株当りA$3.30で行われ、第2段階(1999年9月売出)は1株当りA$7.40で行われた。ところがテルストラ株価はこの頃を最高値としてその後益々厳格な規制、強まる移動通信市場競争、国内固定通信事業の低下、海底光ファイバ投資合弁事業(香港関連会社リーチ)の業績不振等に伴い低落し、昨秋の総選挙(2004.10.9)後も2004年予算書記載のA$5.25を割っていた(2004.11.1終値A$4.66)。

2005年初頭TLS社Z.スウィトコスキーCEOは任期終了前にも退任すると辞意を表明、TLSは経営幹部調査会社エゴン・ゼンダー・インタナショナルに後任探しを依頼した。
TLS2004年7-12月期(2004年度上半期)決算は、売上高が対前年同期比5.1%増のA$113.8億、純利益対前年同期比1.9%増のA$23.4億と予想を上回り市場シェアも移動通信46%、国内固定通信66%と歯止めがかかった感じだが、後任候補情報が盛んな情況でCEO更迭の後戻りはなさそうである。

 肝心のTLS完全民営化法案提出の動きに関しては、総選挙直後残る政府持株は一括売却が良いに決まってるとしたN.ミンチン財務相が既に予備調査委託済みのビジネスアドバイザー2社に加え、コンサルタント企業イコンテックに売却方法を諮問した(2005.5.6)。新予算年度(2005-2006)にA$300億(US$230億)もの売却は恐らく世界一の規模と見てオーストラリア国債の大規模入札やナスダック上場時グーグルが行った募集方法などをヒントに最適な方法を得たいと考えたようである。

209. 内向する西欧の主要通信企業(概要)

 好調な2004年7-9月期業績・通年見通しにより明るく新年を迎えた西欧主要通信企業は、2005年第1四半期(1-3月)業績もおおむね順調ななかで、1990年代後半性急な拡大投資後バブル崩壊で痛手を蒙り債務償却に苦労した教訓から、得意な事業の本国市場を固めてから新市場に取り組む慎重な姿勢が主流となっている。世界展開体制が完成に近づき2004年度決算が売上高1.2%増純益2%増になりそうなボーダフォン(VOD)は別として、下表のドイツテレコム(DT)・テレフォニカ(TEF)・フランステレコム(FT)・テレコムイタリア(TI)など既存総合通信企業は東向きEU拡大に沿ったメガディールを求めるより、揺らぐ固定通信の柱をブロードバンドや無線と融合サービスで埋め合わせ足場を固める戦術を展開している。

表 世界の情報通信サービスプロバイダーTop30(2005.5.1現在)

DT

 欧州最大の通信事業者ドイツ・テレコム(DT)の2005年1-3月期決算は国際会計基準に基づく初の四半期業績で、売上高が対前年同期比3.5%増の143.8億ユーロ、純益が対前年同期比59.8%増の10.1億ユーロとなった。純益は会計基準の変更で営業権や利子の償却額が減少したことも影響しているが、増収増益は米国携帯電話事業が2004年第4四半期に続き売上高対前年同期比27%増と好調で英国13%減や本国2.2%減の衰勢を埋め合わせ移動通信事業全体で売上高7.6%増を実現したことが大きい。DTは消費者向け国内固定通信事業の不調に対し四つの戦略事業域(SBA)、(1)インターネット事業(T-Online)、(2)ブロードバンド事業、(3)移動通信事業、(4)企業対応部門を設定して対抗する戦略を進めてきた。しかしインターネット事業がドイツ国内市場での価格競争激化から第1四半期業績は現金収支ベースで18%減と悪化したためT-Onlineを本体に再統合することとした。グループ全体の2004年度決算を審議した DT株主総会(2005.4.26)はリッケ会長の戦略を評価したものの、T-Online最後の株主総会(2005.4.28-29)は、T-Online株式とDT株式の交換比率(1:0.52)が低過ぎるとの批判に答える審議が長時間にわたり二日がかりになった。

TEF

 テレフォニカ( TEF)の2004年度連結決算(2005.2.28発表)は、グループ売上高が対前年度比比6.8%増の304.2億ユーロで、グループ営業粗利益が前年度比4.9%増の94.4億ユーロであった。米国ベルサウス(BLS)の中南米子会社買収完了に伴う為替レート変動並びにコンテント・メディア事業などの連結係数の変更を加味すると粗利益は前年度比8.3%となり、2004年度利益目標(+7%〜+10%)を達成したことになる。売上高地域別では、スペイン60.3%、中南米34.8%で、2004年末ユーザ・ベースは対前年比26.4%増の1.18億、BLS子会社(2005.1.7合併)を加えると1.22億、移動通信子会社テレフォニカ・モヴィレスは好調だが、テレフォニカが固定系音声市場の73%またブロードバンド市場の58%を確保しているのに移動通信市場におけるテレフォニカ・モヴィレスのシェアはやっと半分、アメナなど新規参入者が活発である。

だがTEFグループの経営生産性は欧州通信企業の中で比較的高く、一方で債務残高210億ユーロ程度を維持しつつ一株当り0.4ユーロ配当の上、保有する国債残高が資本準備金の5%に近づくと25株当り1国債交付すると言う利益株主還元政策を続けている。従ってTEF株価は比較的高く世界の情報通信サービス企業の時価総額番付で上位にいる。チェコテレコム買収が株価にもたらす影響が注目されていたが、トルコ・テレコム競売への入札から撤退するとの声明により格付けが維持ないし一ランクアップするくらい証券市場に密接である。

FT

 フランス・テレコム( FT)の2005年第1四半期業績は、売上高は対前年同期比3.5%増の116.2億ユーロ、営業粗利益は対前年同期比3.3%増の43..4億ユーロとほぼ予想通りであった。一般向け固定電話部門で通話トラフィック12.6%減により売上高が2.6%減の56億ユーロのとどまったが、オレンジ・ブランドの威力で移動通信部門が対前年同期比8.9%増の53.3億ユーロキロした稼ぎとの総合である。企業通信部門はまだ小さいがヨーロッパに展開するDSL加入数は590万に達しインターネット収入は9.3%伸びた。
メディア企業ヴィヴェンディ・ユニバーサル(VU)の固定通信子会社セジェテルとフランスのブロードバンド事業者No.3ヌフテレテレコムの合併(2005.5.11合意)により強力な競争相手ヌフ・セジェテルが誕生する。No.2のDT子会社クラブ・アンテルナットも影響されるが、フランスの新情報通信市場の競争は激化しよう。また2004年決算は現在作成中だが、国際会計基準導入に伴い2004年末債務残高が13.6%増え営業利益率が若干下がる。FTの筆頭株主はフランス政府で当面株価に影響はないとして、引締め経営が求められる。

TI

 テレコム・イタリア( TI)の2005年第1四半期業績は、売上高が対前年同期比1.3%増の71.8億ユーロ、純利益が対前年同期比10.2%増の6.56億ユーロ、債務残高も2004年末から32.3%増え435億ユーロであった。いずれもTI持株56%の移動通信子会社テレコム・イタリア・モビレ(TIM)の完全子会社化に伴う変化を含む。
テレコム・イタリアは2005-2007年3カ年で投資削減11億ユーロ、経費節減4億ユーロ合計15億の統合効果を上げる戦略計画を策定した(2005.4.13発表)。計画ではTIMの本体統合(2005年6月末予定)に伴い海外事業は別会社を設立し国内事業は本体の部門にする。TIMグループとしての最終記録である2005年第1四半期中間決算は、チェコ・ベネズエラ・ギリシアなど赤字子会社の重荷がとれてEBITDAが対前年同期比14.7%増の5.69ユーロになり、統合費用負担に伴い本体の債務残高が急増したのである。ギリシア子会社TIMヘラスの株式競売で得た11.4億ユーロが生む資本利得4.32億ユーロはTIMグループ最終決算書に記録される。

BT

 Top30番付に並ぶヨーロッパ唯一の固定通信事業者BTグループ(BT 2004年度決算(2005.5.19発表)は、売上高が対前年度比1%増の 186.2億($353)、純益)が対前年度比4%増の 21億であった。2004年度第4四半期(2005年1-3月)の業績は売上高対前年同期比2%増の48億、純益対前年同期比21%増の 5.57億で、売上高は連続5期、純益は連続12期尻上がりの増収増益記録した。ニューウェーブ事業(ITサービス・ブロードバンド・モバイル)2004年度売上高の対前年度比32%増の 45億が示すようにまだ1/4の比重ながら固定系在来サービス特に通話料10%減を埋め合わせた。新規分野3本柱のうち稼ぎ頭は第4四半期の伸び77%でモバイルはまだだが、2005年度第1~2四半期からはボーダホン(VOD)提携による固定・移動切替え携帯電話ブルーフォン)の無線接続が可能になり対ホーム総合通信戦略が始動する。B.ヴェンヴァイエンBT CEOは「500万加入を超えたインターネットに次いでブルートゥースが伸びれば新規分野で増収が狙える」と期待する。

210. オンライン音楽配信サービスの新局面(概要)

 世界的人気商品となったアップル社の携帯音楽プレーヤー「アイポッド」を追いかけて音楽再生機能を強化した携帯電話機が続々登場する情勢下アップル社は廉価版の「アイポッド・ミニ」を発売した。アップル社が始めた有料音楽配信サービス「iTMS」の楽曲販売が加速度的に伸び開店以来の累計が4億曲を超える時ヤフー社は競合他社の半額以下となる「ヤフー・ミュージック・アンリミテッド」を始めた。「1曲99セント払ってダウンロードした楽曲は永久保持」というアップル料金と「月決め$6.99、年契約$60(月当り$5)で聴き放題」定額制会費」のヤフー料金のいずれがより消費者を引付けるか哲学をかけた値下げ競争の始まりである。同時に大手レコード会社とアメリカレコード協会(RIAA)のナプスター停止請求に始まる足掛け6年に及ぶ著作権侵害訴訟の連邦最高裁判断が近く下される予定で、法的対応も新局面を迎えようとしている。

 かつてソニーのウォークマンは1979年米国発売以来3年半で600万台売れ音楽の聴き方を変えたと言われた。アップル社が2001年秋米国で発売したアイポッド(iPod)は以来3年あまりで1,000万台を超えた。アップル社はMAC PC向けの音楽ネット配信サービス「iTMS」を開店し、以来2年間の累計楽曲販売が4億を超え、準備楽曲数は15,000に達した。ソフト・ハード一体の使いやすい機能を提供すると言うアップル社 S.ジョブスCEOのアイディアが的中した。
 アップル社はサービス開始時5大レコード会社の協力を取り付けて購入可能な楽曲20万曲を準備し、消費者は音楽ジャンル・アーティスト・曲名で検索し、好みの音楽を一曲99セントでPCに取り込み、個人観賞用なら無制限にCDに保存可能とした。このサービス条件が消費者に受けたが、発売後一週間の楽曲販売数(ダウンロード)100万曲、4ヶ月で準備曲数100万曲を超える大ヒットは、それまでの有料音楽配信サービスのような月額会費・コピー禁止条件抜きで、一曲買いによるマイ・ミュージック・ライブラリー作成後「アイポッド」に移し持ち歩ける便利さが評価されたと思われる。
 データの書き換えが速い大容量フラッシュメモリーを持つ携帯ディジタル音楽プレーヤー「アイポッド」に対して、家電・無線メーカーは取り敢えず携帯電話機のマルチ機能として音楽を加え500曲又は150曲蓄積可能な「ミュージックフォン」発売で対応した。マイクロソフト社(MS)はウィンドウズ・メディアプレーヤー10モバイル版の開発を急ぐ一方、音楽配信サービス「MSNミュージック」を導入した(2004年10月サービス開始)。アップル社S.ジョブスCEOは「うちは100万曲準備で1.25億曲販売済みなのに 向うは準備曲数50万で販売数は0」とコメントした。

 携帯電話機メーカーはにディジタル音楽プレーヤー機能内蔵携帯電話機を提供しユーザに音楽を直接ダウンロードさせ、ホットなディジタル音楽プレーヤー市場で儲けることを期待する。ウィンドウズ・モバイルはビジネス向けデバイスも含め3G網製品やWiFiプラットフォームを出荷してこれに応える。こうした情勢変化に伴いアップル社は、重量が従来の最小機アイポッド・ミニの1/5、容量512Mb(120曲収容)価格$99と容量1Gb(240曲収容)価格$149の廉価版「アイポッド・シャッフル」を発売した(日米同時2005年1月)。安くCDを聴けるレンタル店の普及によりネット配信率が極めて低い(2%)日本音楽市場の特性から未導入のiTMSも近くサービス開始しそうである。日本のレコード会社のなかに「CDはレコードに対して音質・操作性・収益性が圧倒的に優れていたので5年でメディア交代が行われた。CD市場が6年前の2/3に縮小した最大の理由は携帯電話・DVDなど娯楽に費やすカネの使い道の多様化で、新しい音楽産業のビジネスモデルを考える時が来ている」との意見も出てきた。

 2005年に入ってウィンドウズ・ディジタル・ミュージック・フォーマットが利用可能となり、2月に新生ナプスター社、4月にリアルネットワークス社(RN)と音楽配信サービスが開始された。
 ヤフー社が始める音楽ネット配信サービス「ヤフー・ミュージック・アンリミテッド」(2005.5.11発表)は、月決め会費$6.99を支払うと100万曲以上のライブラリーが聴き放題となり、一年分を一括して支払うと月額$5と徳用。契約期間が過ぎると音楽ファイルを再生できなくなり、永久に保持する場合は一曲当り追加料金79セントを請求される。これはRN社の定額制料金年契約$179・月決め$15・一曲買い79セント、ナプスター社の定額制料金年契約$179・月決め$15・一曲買い99セントという料金のほぼ半額であり、ヤフー社の発表は両社の株価を急降下させアップル社株価も2%下げた。

 MS社B.ゲイツ会長は「独立のディジタル音楽プレーヤーが無くなりはしないが、明隆に将来の携帯音楽プレーヤーは携帯電話機になる。パソコン革命の主役アップルがやがてマイナーになったようにアイポッドの成功も長くは続かない」とコメントした。

<寄稿> 高橋 洋文(元関西大学教授)
編集室宛 nl@icr.co.jp
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