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マンスリーフォーカス
No.73 August 2005

世界の通信企業の戦略提携図(2005年8月12日現在)

217.新型ネットワークサービス企業の躍進(概要)

 大手インターネットサービス企業の2005年第2四半期業績は7月第3週から第4週にかけて発表され、ハイテクブーム再来の勝鬨を想わせた。発表順はまず世界最大の消費者サイト「何でも屋」であるヤフー(2005.7.19)、続いて世界最大のオンライン競売企業イーベイ(2005.7.20)、ネット検索技術企業出身メディアとして革新の継続を目指すグーグル(2005.7.21)、そしてインターネット通販企業アマゾン(2005.7.26)である。

ヤフー

 ヤフーの2005年第2四半期連結決算は売上高が対前年同期比51%増の$12.53億、純益(投資収益を除く)が対前年同期比70%増の$1,92億だった。売上高構成は米国内事業収入が69%、$8.7億で対前年同期比39%増、海外事業収入が31%、$3,83億で対前年同期比84%増である。ヤフーは利用者が世界25カ国3.45億名がアクセスしており、海外進出シフトが進んで海外事業の償却前利益対前年同期比116%増である。最近中国電子商取引サイト最大手アリババ・ドットコムに$10億出資し株式の40%を取得することとなった(2005.8.11合意)。これによりヤフーは有望な中国市場に展開できることになったが、販売戦略は益々首尾一貫しなくなる。ヤフーは主に消費者サイトでウェブ検索・ウェブメールからニュース・ミュージック・フォト・ゲーム・ライブチャットを提供しており、これまでB2Bを基本に中国卸売業者と外国小売業者を集めてきたアリババとの連携に適合しよう。

 ヤフーは1994年1月生まれのインターネット・ベンチャーでコミュニケーション・ハブを目指して成長、バブル崩壊ショック後ネット検索企業を次々に買収して広告サポートで「誰にも通じ何でも見つけ/買える場所」を提供するオンライン企業として確立した。インターネット販売品目最大の分類「検索」の2005年4-6月期米国市場シェアはNo1グーグル52%、ヤフー25%、マイクロソフのMSNサーチ16%である。2001年以来グーグルに検索業務委託してきたヤフーは2004年末に自立し、エンジン能力はグーグル以上と発表(2005.8.9)競争論議に火をつけたが、今のところマイクロソフトが実際に脅威を感じる企業はグーグルだけである。グーグルは検索技術を開発しウィンドウズに組込むマイクロソフトの将来性を警戒している。

グーグル

 グーグルの2005年第2四半期決算は売上高が対前年同期比98%増の$13.84億、純益が対前年同期比4.34倍の$3.43億だった。グーグルの決算発表資料には営業粗利益や純益に関しGAAP(一般に認められた米国会計基準)ベース数値とnon-GAAPベースベース数値が詳細に説明されている。前者はFASB(財務会計審議会)が定めた公的なもので後者はウォール街アナリストが古くから使ってきたもの、急速に成長・変動するグーグルの株価分析に便宜を図っているように思われる。

 検索サービスをめぐるヤフー対グーグルの競争の行方に関し両社の特徴の違いがある。ヤフーはシリコンバレー本拠地としながらロスキャンパスを拡充し映画界に人材を求めてきた。ヤフーの大望は21世紀メディア産業のリーダーとなることで、その産業ではコンテントは少数大企業がカネをかけて制作するのでなく、利用者自らがフォト・ビデオブロッグ・ポッドキャスト・ハイパーリンクなどにより制作すると考え、ヤフーは編集者又はコミュニティへの信頼を前提とする。

 一方、グーグルは心底からの技術企業、核心は計算方式で、社是は機械を信頼せよである。グーグルの求める人材は技術の達人であり、利用者が投稿するコンテンツを機械が選択してストーリー・リストを作成しアクセスに備え人手による編集はしない。グーグルの技術者が膨大な投稿データを処理するコンピュータ・コードを革新するだけである。

 ヤフーについては若し検索産業の教科書を作成するとして誰を書き手にするかの問題がある。自社の社員に書かせれば信頼すべきネット検索の名声とナビゲーションのブランドが消滅する。外注すればヤフーの投資額を正当化・回収することが出来なくなるかも知れない。この葛藤はコンテント制作を選択しないグーグルには生じない。

イーベイ

 イーベイの仕組みは、利用者は売りたい品目を表に載せ、24時間サービスのオンライン品目表を見て、興味ある品目に値をつける。品目はキーワード・価格帯・種類・料金種別・産地・通貨・支払方法などテーマ別に取引プラットフォームに編集され、買手と売手はこれに登録しなければならないが誰でも表を見られる。買手が希望の品をチェックするとシステムが価格帯限度までオファーし落札者が決まり、売手のオファーに買手が直接応じることもできる。買手のシステム使用料は只で売手は掲載料を支払うものとされ、商品・サービスの代価+掲載料=最終取引額及びコード番号が決まる、これに他人はアクセス出来ず、取引の実行つまり引き渡しと支払いは当事者が連絡を取りあって行うというもの。イーベイは通信+トランザクションコストに基づく掲載料だけを収入とする安価・便利な正直者を前提としたシステムなので急成長したと言える。

 しかし、オンライン取引市場の拡大に伴い必然的に悪者も群がるようになり、イーベイは種類弁別・セキュリティ専門家にプラットフォームを見張らせ、詐欺やインチキを摘発・排除する努力を強化している。また成約した取引の買手・売手に感想・評定を求める評判システムを始め、利用者に公開している。イーベイ取引はオンライン決済サービスのペイパルが行ってきたが、登録ユーザの原簿設定に当たっては確立された銀行・クレジットカード会社のアカウントで確認するが、その詳細をユーザに開示することなく機密を保っている。

 イーベイの2005年第2四半期連結決算は売上高が対前年同期比40%増の$10.86億、純益が対前年同期比50%増の$2.916億だった。売上高では対前年同期比の下がり傾向が止まり、米国市場の対前年同期比27%増$4.236億より海外事業の対前年同期比51%増$4.188億と海外比重が高まる傾向になった。イーベイの海外ウェブ・サイトは25カ国に展開し、ヤフーに敗れた日本からは2002年に撤退した。

 イーベイのサイトは次から次へと新品目が載せられ「中古車」のように予想外のものも登場、「定額」が取引総額の30%までに増え、26万以上の仮想店舗の商品がリスト・アップされ、実質的にイーベイに寄生したオンライン競売業者の参入も盛んである。しかし、ウィットマンCEOはこうした競合を問題にせず「今日の買手はショッピング史上最も多い選択肢に恵まれている。世界最大の取引プラットフォームになるのに最も大切なのはイーベイ利用者全員の幸福感を保つこと」とする。

 イーベイは2005年1月掲載料の一部を値上げして独占価格反対t非難されたが、ほかに行き所がないのが独占で、小さなオンライン取引サービスは幾らでもあると言う。イーベイは一方で2005年からローカル・インターネット企業への投資を活発化している。

アマゾン

 オンライン通販企業アマゾン・ドット・コムは1994年設立/1997年5月上場の元祖オンライン小売業者で、地球上最大の書店と名乗って創業のうえ全方向に拡大した。アマゾン・ウェブ・サイトは図書・CD・DVD・ビデオから玩具・道具類・家電製品・家具・衣料品・健康美容品・医薬品・グルメ食品・各種消費者サービスとさながら地球上最大の「何でも屋」のように商品・サービスを扱うが、今も書籍が主力商品である。

 アマゾンの2005年第2四半期業績は、売上高が対前年同期比26.4%増の$17.53億、純益が対前年同期比31.6%減の$5,200万だった。減益は新会計基準の採用で所得税が増えたためで調整数値による営業利益は7四半期連続で二ケタ成長した。
創業者で株式25%を所有する会長・社長兼CEOのJ.P.ベゾスは売上げより利益重視の戦略を打ち出しているもののこの一年間株価横ばいで新方向はまだ現れない。

218. 米欧通信サービス企業は競争の新段階(概要)

 SBCコミュニケーションズ+AT&T、ベライズン+MCI、スプリント+ネクステルの三大買収合意を契機に米国通信サービス産業はAT&T分割以前のような統合期に入り、隣接業域に乗り入れサービス提供する越境時代を迎えている。しかし提供サービスは単純な電話とデータ通信だけだった20年前と違い、携帯電話やインターネットが加わりデジタル化・ブロードバンド化に伴いIP電話・IPTVまで登場し、情報通信サービスプレーヤーは通信事業者・ケーブルTV事業者・インターネット事業者(ISP)を始め、融合・多様化して、最近は電話・携帯電話・ブロードバンド・放送の4種類を提供する「クァドゥルプル・プレーヤーまで指向されつつある。今やビジネス機会を求めて技術・サービス・人・資金が国境を越える競争の新段階が展望される。

インターネット規制緩和と米国通信企業

 分割で市内電話に閉じこめられた旧ベル系電話会社(ベビーベル)は1996年連邦通信法により、長距離通信への進出をを認められたのと引き換えに市内網開放義務を負いケーブルTV会社と相互に競争出来ることになった。しかし携帯電話2004年末1億7,500万と固定電話を超える大躍進を遂げたのに対し、固定電話は値下げ競争の影響を受けて減収し始め、ケーブルTV会社の電話サービスにもシェアを奪われ、通話を代替する電子メールトラフィックを支える存在となった。ただ長距離通信事業については州単位に認可を得て顧客を獲得していった。ビジネス通話が急速にデータトラフィックに変り、通話をパケット化して送受するVoIPサービスが拡大し始めたため、一層深刻になった長距離通信事業者はベビーベルの買収オファーに応じたのである。

 インターネット規制或いはISPに自由を認める制度は、かつて長期間かけて結論を出したFCCコンピュータ調査を土台にして創設されたものなので、別々の市場にまたがる融合サービス事業に適した枠組みを検討する1996年通信法改正には手順の工夫が必要である。IPTVサービスに関しケーブル掘削の路線権・放送の管轄権・番組コンテント規制の州市町村関係の新たな取組みも必要である。

 FCCはこれまでブロードバンド通信の一種であるDSLサービスを「通信サービス」に位置づけ、SBC・ベライズンなど地域通信会社にその地域通信網を競争相手に安い接続料で提供するよう開放義務を課していた。ケーブルTV会社のケーブルモデムによるブロードバンドサービスは情報サービスであると認め開放義務を免除した後も地域通信会社DSLサービスについて通信サービスとしての義務を存続させていた。FCC公開会合(2005.8.5)は全員一致決定で厳しい規制の通信サービスから非規制の情報サービスに再分類した。但し、DSLプロバイダーは関係機関が辺地電話サービスに助成金を供給する抜本的施策を整えられるよう向う270日間引き続きユニバーサルサービス基金の支払いを続け、又円滑な移行を確保するためアクセス先のISPとのネットワーク契約1年間継続を命じられた。

 このように規制緩和の新しい環境が整っていくと業界の関心は益々競争の進展に伴う再編成と金融市場の評価に向かう。SBCコミュニケーションズ+AT&Tとベライズン+MCIという二大買収に対するFCCと司法省の認可も近づいているが、スプリントのネクステル$350 億買収が一足先に完了した(2005.8.12)。と言っても両社を合わせて新会社スプリント・ネクステル(Sprint Nextel: S)とする手続が終了しニューヨーク証券取引所の新株取引が始まるだけで、ネクステル株主に対する新株の交換や多数の懸案処理はこれからであり、スプリントの固定系電話事業(750万加入、年間売上げ$60 億)の分割は1年先である。しかし当面アナリスト推定値の最高で時価総額お$790億と言われる新会社が「世界の情報通信サービスプロバイダーTOP30社」の上位に入ることは確実である。

表 世界の情報通信サービスプロバイダーTOP30(2005.7.29現在)

ドイツテレコムの成長戦略

 西欧の代表的民営化通信企業としてドイツテレコムは固定系売上の衰勢を移動系・ブロードバンド売上で埋め合わせ海外投資にも成長をかける戦略を基本とする。消費者の固定電話離れにつれ携帯電話・電子メール・IP電話の売上げ・利益を拡大してきた。

 ドイツテレコムの2005年第2四半期決算(2005.8.11発表)は、売上高が対前年同期比2.6%増の147億ユーロ、純益が対前年同期比63.4%増の9.43億ユーロであった。
営業粗利益=EBITDA(利払・税金・償却利益)は対前年同期比6%増の52億であった。無形固定資産を64%削減して6.24億ユーロとし前年同期1.11億ユーロ得た税金を今期は7.63億ユーロ支払ったため純益はアナリスト予想の12億ユーロを下回った。期末の債務残高は海外投資・配当支払いの結果2004年末より50億ユーロ増えて445億ユーロとなった。

 移動通信事業Tモバイル(T-Mobile)の全世界加入数は8,090万に達した。国内では競争激化で売上高が第1四半期より1.8%減じたものの新規加入623,000を獲得し、コスト圧縮努力により売上げに占める営業粗利益率を2.1%引上げ42.1%とした。成長の推進力米国子会社TモバイルUSAは新規加入972,00を獲得して1920万加入とし純益を21%増の3.87億ユーロとした。しかしヨーロッパではオランダのKPNやスイスのスイスコムより高成長だが、テレフォニカやフランステレコムには及ばない。

 ドイツテレコムはオーストリア第4位移動通信者テレリングを現金13億ユーロで買収することとなった(2005.8.4合意)。テレリングは米国携帯電話会社オールテルが買収したウェスタン・ワイヤレスの子会社で6月末加入者数108万なので、T-モバイル オーストリアの210万加入と合わせるとオーストリア第1位移動通信事業者モビルコム・オーストリア330万加入に接近する。

 ドイツテレコムが移動通信に代わる成長の柱と期待するブロードバンド事業は本体再統合と決まったものの、最終株主総会(2005.4.28-29)がもめて承認されはしたが少数株主から決議無効提訴があり手続未了のためT-オンライン2005年第2四半期決算が発表された(2005.8.10)。売上高は対前年同期比4.5%増と緩やかながら5.22億ユーロを記録したものの、営業粗利益は対前年同期比29.1%減の9,260万ユーロ、純益は対前年同期比35.7%減の5,290万ユーロと競争値下げの影響が出た。

 ドイツ国内の新規獲得DSL加入者はアナリスト予想250,000に対し実績182,000で第1四半期実績より45%減となり、第2四半期純増150,000と称する第2位ブロードバンド事業者ユナイテッド・インターネットを僅かながら初めて下回った恐れがある。

 T-Onlineが海外で獲得した第2四半期新規DSL加入者対前年同期比43%増239,000に国内分を加えた合計は418万加入で、6月末DSL加入者総計は1,365万に達した。ドイツテレコムのブローバンド事業への挑戦はこれからである。

219.世界の中の中国と情報通信(概要)

 古来中国には「一年で収穫したい者は穀物の種を蒔き、何年か先の収穫を望む者は樹木を植え、100年間の繁栄を欲する者は人を育てよ」という格言があると言う。巨大労働力の世界経済市場参入は向う50年或いは100年に及ぶインパクトをもたらすとの見方で日中関係や東アジア経済圏の諸問題を考える必要があろう。

中国経済改革の課題

 1994年にとう小平は90才と建国45周年を迎え改革開放政策による高成長を目にしたが、人民元の信認は貿易収支赤字よる度々の切下げと資本逃避の悪循環から地に落ち対ドル33%という大幅切下げ(1994.1.1)を余儀なくされていた。以来20年生産力の飛躍的増大わけても輸出産業の成長から、輸出額は当時の6倍強に膨らみ貿易総額は日本を抜き米国・ドイツに次ぐ世界第3位になり、外貨準備高は2005年6月末に$7,000億を突破、世界一の日本に迫っている。

 中国人民銀行の今回の切り上げ(2005.6.21発表:対$+2.1%)と為替制度改革($ペグ制→通貨バスケット制)は、経済・安全保障・価値観という多面的な対立・協調軸をもつ米中関係の新しい展開の第一歩である。中国が人民元相場を決める際に参考とする通貨バスケットの構成について、米国JPモーガンは「ドル55%、ユーロ20%、円15%、英国ポンド・豪州ドル等その他通貨10%」と見る。中国の外貨準備通貨別構成が2004年3月末現在ドル65%、ユーロ・円各10%づつ、9月末現在ドル60%、ユーロ・円各15%づつと変ってきたことからの推測である。通貨バスケット制の採用で中国は米ドル以外の通貨への外貨準備の分散を加速するかも知れない。世界は今「不均衡下の均衡」というべき微妙なバランスの上に立っている。米国の消費者が借金を拡大しながら中国をはじめ世界からモノを買い、その需要に支えられて世界は成長を続けている。米国の赤字を埋めているのが中国などの外貨準備資金による財務省証券の購入で、それが米国の長期金利を低位安定させ米国の住宅投資ブームを支える。米中両国の不均衡拡大の下に成長を続ける構図である。

 中国の課題は、内需主導の経済発展、特に消費の拡大である。国内総生産(GDP)における輸出の比重は2005年上半期42%と1993年の15%の3倍近く、しかも輸出の半分以上は中国に進出した日米欧など外資系企業が稼いでおり、中国経済成長の原動力は輸出と外資が柱になっている。中国政府は、当面の国家目標の一つである北京オリンピック(2008年)と上海万博(2010年)は今の枠組みのままで成功させたい。不均衡の拡大は望まないが、成長を犠牲にするわけにはいかない。人民元改革も中国と世界の「均衡のとれた持続的成長」のなかで漸進的に進める、一人っ子政策の影響で中国の労働年齢人口(15才60才)は2020年頃から減り始めるので、その前に「責任ある大国」になっておきたい、歪み是正・格差縮小など国内問題は自己解決という立場である。

 こうしたマクロの枠組みは比較的はっきりしているが、6カ国協議・AEANサミットなど外交・通商関係になると問題が複雑で中国の出方も不透明だが、もともとリスキーなインターネット・ベンチャーやタイミングがものをいう広告業では最近米国企業の中国進出が目立つ。

 中国のインターネットは伸び盛りの時期は過ぎたが、アクセス回線数が世界第2位の1億に達し利用場所の順は第一に家庭、第二にビジネス、第三がカフェとなり、国際トラフィック増大で相互連結網のパンクが危惧される程である。インターネット・ポータル第一号ソフォはMMSを提供していたところ一年前国際接続取締規程違反で中国移動通信集団から閉鎖命令を受けたが。満期前の.8月.1日から解禁の通知を受けた。「インターネット電子広告サービス管理規定(2000.11.8)は生きていても運用は緩やかになったようである。

 米国の最大手インターネットサービス企業はいずれも中国に進出している。グーグルは中国の検索サービス最大手百度に少数株主として出資(2004年6月)していたが、百度は今回米国ナスダック市場に上場し(2005.8.5)公募価格の4・5倍というITバブル後最大の初日終値をつけた。イーベイは中国のネット競売大手企業易趣網を買収し(2004年6月)完全子会社化していたが、ネット決済子会社ペイパルも中国に進出した(2005年7月)。ヤフーは中国の電子商取引サイト最大手アリババ・ドット・コムに$10億出資して株式40%を取得することとした(2005.8.11合意)。

 中国のアナリストによれば2004年の検索広告市場は$1.48億と推定されるが、イーベイのウィットマンCEOは「中国は10年以内に世界最大の市場になる」と今年は$1億の投資資金を準備している。結果は時が経たなければわからないが、米国企業が中国で成功するには強力な地元提携者が必要なことは確かである。

インターネット発展の現状

 中国インターネット情報センター(CNNIC)の『中国インターネット発展状況統計』(第16次報告)によれば、2005年7月現在中国のインターネットの概要は以下の通り。

  • コンピュータ・ホスト数は4,560万(専用線接続670万、ダイヤルアップ2,070万、その他1,820万)と前年同期比25.6%増。

  • ユーザ数は1億300万で対前年同期比18.4%増。前年同期の増加率28%より鈍化。
    アクセス別は専用線2,970万、ダイヤルアップ4,950万、ISDN550万、ブロードバンド5,300万。重複あり合計値≠1億300万。
    このほか2携帯電話や携帯情報端末によるアクセス450万。

  • CN登録ドメインネームは622,534(COM36.5%、NET4.6%、GOV3.2%、ORG1.9%、Adm.Area6.3%、EDU0.5%、AC0.1%、SLD47.3%)。

  • 地域的分布は北京市21.1%、広東省14.6%、上海市9.9%、海外7.1%、浙江省6.7%、江蘇省6.2%、山東省4.6%、遼寧省3.0%。河南省2.1%、湖南省2.1%

  • ユーザ属性 性別は男性59.6%、女性40.4%。男女比が女性微減(−0.3%)。
    年令別は18-24才37.7%、18才未満15.8%、25ー30才17.4%、31-35才10.4%、
    36-40才7.3%、41-50才7.4%、51-60才3.0%
    結婚・未婚は未婚59.0%、結婚41.6%
    学歴別は大学卒26.0%、短大卒25.6%、高卒31.3%、中卒以下14.2%。

  • ウェブサイト数は677,500で前年同期比8.8%増。分布はCOM66.3%、NET11.5%、ORG3.5%、GOV1.7%、地方0.7%という順序。

  • 国際相互連結網 総伝送容量 82,617Mbps 前年同期53,941Mbpsの53%増。
    CHINANET:44,895Mbps 中国公用計算機互聯網 ChinaTelecom
    UNINET:3450Mbps 中国聯通互聯網 China Unicom
    CERNET:1599Mbps 中国教育和科研計算機網-旧国家教育委員会
    CMNET: 1285Mbps
    CSTNET:5275Mbps 中国科技網 中国科学院
    CIETNET:2Mbps
    CHINA169:26111Mbps
    CGWNET:建設中
    CSNET:建設中

  • IPアドレス数本土68,300,032、台湾15,017,984、香港6,118,680、マカオ127,232
<寄稿> 高橋 洋文(元関西大学教授)
編集室宛 nl@icr.co.jp
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