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マンスリーフォーカス
No.74 September 2005

世界の通信企業の戦略提携図(2005年9月7日現在)

220. インテルサットのパンナムサット買収(概要)

 衛星通信はマイクロウェーブ、コンピュータ通信とともに1970年代米国通信自由化の尖端分野であった。それから10年後パンナムサットを興してINTELSATの既存国際通信独占を破ったR.アンセルモは「真理と技術はタブーとビューロクラシーに勝つ」と言い残したが、光ファイバ通信に追越された国際衛星通信の生残り競争のなかで買収ファンドが仲介するインテルサット株式会社のパンナムサット買収が合意された。世界一巨大な衛星通信会社の誕生をアンセルモが生きていたらどのようにあしらうだろうか?

 マードック・グループがGMから買収したヒューズエレクトロニクス(HES)のディレクTV(DTV)が80.5%所有するパンナムサットは、DTVケーブルTV放送及び直接衛星放送サービス(DTH)を北米・中南米の1億2,500万世帯に提供している。約一年前コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、カーライル・グループ、プロビデンス・エクィティ・パートナーズから成る投資グループはHES買収処理残の穴埋めからLBOを考えるパンナムサットを$34億で買取り(2004.4.20合意、2004.8.20完了)、支配株主としてパンナムサット持株会社を設け、パンナムサットは7ヶ月後再上場し5000万株を1株当たり$18で売出し$9億を得た(2005.3.17)。パンナムサットの2005年第1四半期業績は売上高が対前年同期比1.6%増の$2.088億、前年同期$3,190万の損失が転じて純益$1,100万であった。

 インテルサットは国際電気通信衛星機構締約国総会決議と米国「市場開放国際電気通信改善法(ORBIT Act 2000.3.17制定)」に基づき民営化された(2001.7.18)。

 インテルサットの2005年上半期業績は売上高$5.83億、損失$2.05億、EBITDA(利払・税金・償却利益)$2.66億と停滞期の衛星通信経営を表わしている。2004年11月にA-7衛星、2005年1月IS-804衛星と重なる事故に伴う資金需要に対し、インテルサットはLBOファンド4社=エイペックス・パートナーズ、アポロ・マネジメント、MDパートナーズ、パーミラ・アドバイザーから$30億を得て持株会社を設立した(2005.1.28)。
インテルサットはパンナムサットを$32億で買収すると発表した(2005.8.29)。両社取締役会が承認したインテルサットとパンナムサットの合併協定により、年間売上高$19億、通信衛星53基を持つ世界最大の衛星通信会社が誕生する。買収手続の完了は株主総会や規制当局の承認を得て半年ないし一年後と見込まれる。

 インテルサットのパンナムサット買収の特徴は、(1)インテルサットがパンナムサットの発行済み株式を取得する費用$32億のほかにパンナムサットの債務$32億を引受ける、(2)SEC申請資料によれば合計$64億の決済に株式交換を交えることなく格付け投資適格未満を含む社債による、(3)史上最大のジャンクボンド取引である。
インテルサットの上場株式は投資ファンド3社KKR、カーライル、プロビデンスが所有し、インテルサットの債務はLBOファンド4社が保証するが、パンナムサットの低格付け社債には不安がある。

 ともあれ米州以外の国際電話・データに強いインテルサットと米州の映像サービスに強いパンナムサットの合併は良い組合せである。ただ新会社がインテルサットのビューロクラシーを克服できるか注目される。

221. ディジタル・メディア融合の転回点(概要)

DVD市場はかつての輝きを失う

 米国の有力調査会社ディジタル・エンターテインメント・グループ(DEG)によれば、2005年上半期のDVDソフト出荷実績は対前年同期比19%増の7億7,200万枚と、2003年の対前年同期比49%増、2004年の48%増と続けてきた高成長の勢いが俄に衰え始めた。小売市場の2005年第四半期業績ではDVDソフト売上高が前年同期比7.3%増の$70億で前年同期比26%増だった2004年より伸びが縮小し、大手映画会社の映画事業収入の半分を占めるDVDソフトに陰りが出てきた。音楽CD市場も米国内CDアルバム販売枚数が2005年上半期実績2億8,300万と前年同期比7%減を記録し、2001年以来減り続けていたCD販売枚数が2004年に増加に転じたのが再び減少に向った。
新型ネットワークの躍進のなかで伝統的音楽CDが影響を受け新しいDVDの成長も屈折したとすれば、メディア産業の動きを巨視的に見て行く必要がある。

 ただ市場評価を柱にした分析は、企業経営の実績とともに最近存在感を増してきた投資ファンドの動きにも注目しなければならない。例えばグローバルメディアNo.1のタイムワーナーは、下記の「表 世界の情報通信サービスプロバイダーTOP30社」で前回(情報通信メガトレンド2005年8月)のNo.7からNo.5に上がっている。順位は相対的なものなのでドイツテレコム(DT)やSBCコミュニケーションズ(SBC)が下がったからと見ることもできるし、「著名投資家のカール・アイカーンがTWX会長兼CEOリチャード・パースンズと会談しCATV子会社の完全分離を要求した(日経夕刊2005,8.17記事”タイムワーナー会長と直談判”)」と報道された投資家意見で株価が上がったと見ることもできる。

表 世界の情報通信SP30社(2005.8.31)

ディジタル・メディアの転形期

 上表「世界の情報通信サービスプロバイダーTOP30社(2005.8.31」にはメガメディア6社(TimeWarner Inc./ComcastCorp./News Corp./Walt Disney Co./Viacom Inc./Vivendi Universal AD)、新型ネットワークサービス4社(Google/eBay /Yahoo!/Amazon)及び通信サービス企業10社が載っており、皆ブロードバンド・無線技術革新の只中にある。プライス・ウォーターハウス・クーパーズ(PWC)の分析によれば、ブロードバンド・無線技術は2009年に至る世界のグローバル娯楽メディア支出を総額$1兆8,000億まで投入させ、高速広帯域無線通信開発による新収入を2004年の$114億から2009年には$730億に拡大する。地域別には米国が娯楽・メディア投資の支配的地位を維持し最低速ではあるが平均年率5.6%の伸びで総額$6,900億の新収入を実現する。アジア地域は平均年率11.6%という最高の伸び率で期間中総額$4,320億の新収入を実現する。欧州中東アフリカ地域は平均年率6.5%伸び総額$5,720億の新収入を実現する。中南米地域は平均年率8.2%というアジアに次いで高い伸びにより総額$470億の新収入を実現する。こうした数値は各地域の最近の成長傾向から予測したもので、中国とインターネットが世界で最もホットな地域・セクターであり、ディジタル・メディア融合が革新の焦点である。

 ところが、これまでの主戦場「ビジネス市場」よりも「ホーム市場」のこれからが重要と考えるマイクロソフト、インテル、ソニー、ベライズン、コムキャスト、ヒューレット・パッカード、アップルなど家電/コンピュータ/テレコム/インターネットなどの大企業は最近「ディジタル・ホーム」、「電子ホーム」、「ネットワーク・ホーム」等の「モデル・ハウス」に「家庭用ソリューション」を展示し実物教育・実際体験により消費者にアピールする戦略に乗り出したが、どうも上手く行ってないようである。
例えば、或る企業が作成した教育ビデオは「若い男が目覚めるとベッドサイドのスクリーンからロック・ミュージックが流れ、起きて朝食を摂りに台所に行くとスクリーンが附いて来る、居間に移るとロック・ミュージックのスクリーンが附いて来るほか別のスクリーンからポップスが流れる、家を出て車に乗るとハンドルに附いたビデオのスクリーンが演奏し始める」というもの。アナリストは「四六時中ビデオ・ストリームに浸っている人間など実際に居はしない、ビジネスソフトで”ソリューション"売り込み戦法が成功したからと言ってホーム戦略も”ソリューション"でと言うのは間違い」「消費者が買うのはモノであってシステムではない」「購入決定が衝動的でデタラメな消費者真理の研究が重要」「そんなこと言ったって実際の使い方を見せないと始まらない」など。

 モデル・ハウスはさておき、現実の世界で異種のデバイスが上手く通じ合いコンテントを送受するには相互運用可能性を確保する必要である。そのため第一にファイル・フォーマットとコーデック、第二にディジタル著作権管理ソフト(DRM)を統一しなければならない。前者は写真・音楽。映画などのアナログ情報をコード化してデータフローとし,人間の感知し得る情報に復元するためのコードの体系で、後者は情報をピラシー(piracy=剽窃)や無断コピーから保護するシステムである。コード体系は国際標準化機構(ISO)の動画像専門家グループ(MPEG)がビデオについてMPEG-2、オーディオについてMP3と標準を定めたが、マイクロソフトはWM9、アップルはAACと大ベンダーが独自体系を定めており、異コード情報はそのままでは相互に通信できない。DRMも同様にマイクロソフトはWindows DRM、リアルネットはHelix、ソニーはOpen MG、アップルはFairPlayとそれぞれの著作権管理システムを推進している。その結果消費者がカネを出して得たオンラインサービス、システム、ソフトはそのDRMの範囲だけしか使えない。

 パソコン通信が始まった時プロトコルの違うパソコンのデータは相互に流通しない事態が生まれたがインターネットが解決した。ディジタルメディア融合ではコードとDRMが統一されないと一層複雑大規模な混乱が生まれる。しかし、消費者はディジタル・ホームの危機に気づいてない。ホーム・システムのニーズは第一にインターネット・アクセス共用、第二にプリンター共用で、融合システムのトラブルは機器を手にして初めて気づく。サプライサイドでは公的標準の確立と相互運用可能性の確保を叫びつつ、知的所有権を主張し互いに利の相手との提携による技勢力圏拡大に余念がない。

 ディジタル・メディア融合の将来について確かなことは相互運用可能性を説きながら知的所有の覇権を追及する努力が当分続くことと思われる。そこでディジタル・メディア転形期のシナリオは論理的に(1)一社または一グループの勝利、(2)技術戦争の休戦、(3)戦争の継続の三つになる。(1)はディジタル・ホームが勝った企業の標準で統一され、それが大衆市場の現実となるシナリオで、これは関係企業・産業が戦略を間違え、それを消費者が受容する場合、今日の PC産業”ウィンテル(Windows and Intel”のような事態の再現である。(2)は産業コンソーシアムによるオープンス・タンダード推進が実る場合、(3)はかつてのペーパーレス社会の夢の再現である。コンピュータ化によって無くなる筈の紙が今も使われているようにネットメディアの時代にも馴染みのCDやDVDを使われる未来である。

222. ロシア連邦の新しい動き(概要)

独立国家共同体と統一経済圏

 この夏に旧ソ連・東欧地域で新しい動きが始まった。旧ソ連12カ国で構成する独立国家共同体(CIS)の首脳会議がロシア連邦内自治共和国タタルスタン首都カザンで開催され、ウクライナ(UA)の親欧米政権誕生で揺らぐCISの機構改革問題でひとまず「CIS存続」が合意された。ただしトルクメニスタンは同日限りで恒久構成員資格を停止した。ウクライナが春からCISに発展性がないので財政負担打ち切りを検討中としていたのに対し、ロシアは首脳会議の直前にウクライナ向け天然ガス出荷価格を3年以内に現行特恵価格($5/1000?)から国際価格($170前後)に引上げると通知し圧力をかけた模様。ソ連崩壊・CIS結成前に独立したエストニア(EE)・ラトビア(LV)・リスアニア(LT)のバルト三国、ポーランド(PL)、ルーマニア(RO)等EU加盟・加盟予定国とウクライナ・モルドバ・グルジア・アルメニア・アゼルバイジャンなど親米諸国はロシアが支援する「欧州最後の独裁国家」ベラルーシの民主化支援に動こうとしていた。

 CIS首脳会議の翌日同じカザンでロシア・ウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンの4カ国は「統一経済圏」の首脳会議を開催し創設作業を開始することで合意した。V.ユーシェンコUA大統領は就任(2005.1.23)の翌日急進改革派の女性指導者Y.ティモシェンコを首相に指名し前政権の腐敗体質を断ち民主改革に取り組む強い姿勢を示していた。ユーシェンコ大統領はその後のプーチン大統領との会談でロシアとの関係改善を強調する一方統一経済圏の協議では「他の経済圏との統合を阻害しないこと」を条件につけ、今回は段階的に統一経済圏に加わるという基本合意とし親EUのウクライナ西部を基盤としつつ親露派東部にも配慮したのだった。だが政権内不統一を理由にティモシェンコ内閣を否定する政変が起きた(2005.9.8閣僚全員解任)。大統領腹心のY.イェハヌロフドニペトロフスク州知事が組閣を命じられたが、独立後2回目の2006年3月総選挙まで余りにも時間が無く、前政権に密着しロシア語を使う東部商工民とウクライナ語を喋る西部農民の双方を統一するチームを創るには亀裂が大き過ぎることが露呈した。

統一経済圏4カ国電気通信の現状

 ロシア連邦の電気通信事情は「マンスリーフォーカスNo.59 June,2004-177ロシアの電気通信産業」で紹介した現状と余り変わりがないが、「マンスリーフォーカスNo.69 Apri,2005-207東欧の電気通信産業M&A」で紹介した概況の様式で整理すると次表「統一経済圏・東欧諸国電気通信の概況」の通りである。

表 統一経済圏・東欧諸国電気通信の概況

ロシア連邦

 電気通信産業の資金調達は、固定系事業は国有持株会社シアズインベストが担当し、移動系は固定系地域事業者・国内投資ファンド・外資によって賄われ、業績はロシア会計基準による決算であるものの概ね順調に推移してきた。
固定系事業はシアズインベスト資本の七大地域通信事業者、(1)センターテレコム(モスクワを含む中央)、(2)ノースウェストテレコム(旧サンクトペテルブルク電話)、(3)ボルガテレコム(ボルガ中流域)、(4)サウステレコム(ロストフ以南)、(5)ウラルスビアジンフォルム(ウラル地方)、(6)シベリアテレコム、(7)ファーイーストテレコム(極東地方)、モスクワ市内網(MGTS)、長距離・国際通信ロステレコム)等が電話市場の90%以上を構成する。
最近シアズインベストを「重要戦略企業」の指定から外す経済貿易省の大統領令案が大統領室に回送された。プーチン大統領が署名すると国家資本75%ー1株確保の歯止めが消え、2005年末から2006年にかけシアズインベストIPOの可能性が出てくる。シアズインベスト株式の25%は民間銀行トップのアルファ・グループや素材・資源系新興財閥アクセス・インダストリーが保有しているが、ユーコス事件の余波が新IPO株式取得にどう影響するか注目される。

 概況表記載のロシア連邦2003年電話加入数は固定電話回線数3,550万携帯電話加入数1,760万合計5,310万だが、携帯電話は2003年末3,623万、2004年末7,385万と急成長してきて2005年8月末にはi億730万に達した。ただし携帯電話機の90%以上は流通業者の輸入依存であり最近関税逃れの違法輸入が摘発されただけに統計上の危うさがある。

 移動系三大企業(1)MTS、(2)ビンペルコム、(3)メガフォンは2005年3月末携帯電話加入数がそれぞれ3,025万、2,961万、1,568万、合計7,554万を記録し、ロシア連邦携帯電話1億突破の柱となっている。三社の資本構成は、MTSがロシアの金融産業持株会社システマ50.5%でドイツテレコム(DTの移動通信子会社T-Mobile経由)13%で残りはニューヨーク証取経由の浮動株、ビンペルコムがノルウェー通信企業テレノール)25%+13株、ロシア金融産業持株会社アルファグループ25.3%+2株、浮動株48.4%で、メガフォンが設立時のベンチャー企業テレコムインベスト31.3%、設立時のフィンランド通信企業ソネラ26%、アルファグループ25.1%、設立時のスウェーデン通信企業テリア8.1%、ベンチャー企業イポック6.5%で構成されている。ドイツテレコムはMTS株式を40%保有していた時もあったが、2003年に15%、2004年12月に12%売却し、残る13%%株式を6ヶ月間保有する約束をしていたのが8月15日に期限切れとなったので近く処分すると見られる。直接市場で競りにかけるのかシステマに買って貰うのか注目される。

ウクライナ

 ウクライナの電気通信改革は独立後間も無い郵電分離(1993年)に伴う市内通信ウクライナテレコムと長距離・国際通信子会社ユーテルの設立に始まる。民営化前提の国有会社としたものの、政府持株を経営者に5%、従業員に2.14%放出しただけで)2002年3月)、新電気通信法制定時(2005年6月)に42.9%売却案(政府保有50%+1株)を発表したが、ユーシェンコ政権も2005年中は政府持株92.86%を続けるとした。設備投資がなければ固定系事業は足踏みとなり申込積帯が300万を超え、外資合弁の企業向け無線アクセスを除くと電話回線数は2003年末1,085万からほとんど増えていない。

 移動系事業はウクライナ移動通信(UMC)とキエフスターが、それぞれの加入数2003年200万/220万、2005年8月末1,052万/1,041万で、2社合計市場シェア98%という寡占状態にある。UMCはロシア一の移動系企業MTSの100%子会社で発足、その後非公開合弁会社(2004.10.18変更)で、キエフスターはノルウェー通信企業テレノール(持株比率56.51%)とロシアの金融会社アルファグループ傘下持株会社(持株比率43.49%)の合弁でロシア勢力下にある。このほかトルコテレコム移動通信子会社トルクセルが株式の52.35%を保有するアステリト、地場産業合弁のウクライナ無線(URS)など中小企業がある。アステリトの筆頭はトルコ系だが、第二の大株主(41,4%保有)ウクライナ一の富豪R.アクメトフとアステリト会長V.ステパネンコ(6.3%保有)の二人が移動通通信企業DCC名義で免許を得ている。2004年にUMCは$2.32億、キエフスターは$2.29億の利益をあげているがDCC(アステリト)は$2億を投じて光ファイバ中継網整備を先行しライフブランドによる西欧流マーケティンで成長を指向している。

カザフスタン

 カザフ人(53%)ロシア人(30%)など多民族で構成され、カザフ語が憲法上の国家語でロシア語が公用語、カザフ人の宗教はイスラム強スンニー派という国で、独立半年前に就任したナザルバーエフ大統領支配下の民営化・石油ガス開発で経済成長を続けているが、欧米から民主的と見られていない。首都をアルマティ(アルマ・アタ)からアスタナに移した(1997.12.10)。

 カザフスタンの電気通信は1994年に公衆電気通信事業体から株式会社化されたカザフテレコム(KT)が総合免許(1996年11月交付)に基づき独占してきた。長距離・国際通信自由化(2004年9月)に伴い天然ガス事業子会社のカズトランスコム、鉄道会社特約通信事業者トランステレコム、企業通信向け伝送路会社アステル、旧首都圏地域通信会社が合同したデュカなどの競争企業が参入したものの、KTは長距離・国際通信料金20%切下げで対抗し独占状態を維持している。商用インターネット市場(1996年4月開放)もKTのデータ子会社カザフスタン・オンラインのシェアが55%。KTの政府持株は現在50.1%+1株、他は中央アジア持株会社30.4%、ニューヨーク銀行6.7%など。

 移動通信事業は1994年にKTと英国無線会社折半出資のアルテル社がアナログ網(AMPS )を開始したが4万加入に達した5年後、トルコ系トルクセル・瑞芬系テリアソネラ合弁フィントゥール持株会社(51%)とKT(49%)合弁のディジタル携帯電話会社GSMカザフスタン( GSMK)が登場しプリペイドサービスなどで躍進した結果、アナログ事業は成長が止まり英国勢は撤退した。アルテルはデジタル化(cdma20001x)を企画しエリクソンに網開発を依頼し(2003年8月)、完成を待ってCDMA-GSM両用機販売を始めた。GMSKの2005年3月末加入数は200万に達し、アルテルの現在加入数は10万(アナログ/ディジタル半々)と見られる。移動系第二キャリアーは1999-2003年の間GSM900網を建設した携帯電話会社カーテル(KaR-Tel)で、ロシア移動通信企業No.2のビンペルコム(Vimpelcom)とカザフスタンNo.4金融機関ATF Bankが支配する投資会社クローウェル投資(Crowell Investment)折半出資(V:50%+1株保有、C:50%=1株)のキプロス登記企業リムノテックス(Limnotex)が保有している。カーテルの2005年3月末加入数は113万である。

ベラルーシ

 スラブ系ベラルーシ人78%、ロシア人13%だがロシアの影響が強くソ連計画経済体制下より独立後に経済が悪化した国で、A.ルカシェンコ初代大統領は1994年7月就任以来権限を強化してきた。
ベラルーシ電気通信をロシアから分離する枠組みを定める1994年通信法に基づき国有国営のベルテレコムが1995年に設立され、自由化は2007年からと発表された。固定系電話回線数は2003年末315万からほとんど伸びていない。
移動系通信事業は(1)ベルテレコム/CJBBV折半出資のアナログ網(NWT-450)ベルセル(Belcel)が最も古く(1993年開始)また最近CDMAも始めたが(2004年末)、2005年3月末加入数9万と小粒、(2)首都ミンスク圏から高速道路沿いに2002年からGSM網を展開したMTSベラルーシ(Mobile TeleSystems LLC)が都市間通信会社(51%出資)とロシア通信企業MTS(49%出資)合弁事業で2005年3月末140万加入と最大規模で、(3)1999年GSM900網開始は最大規模だったが2003年にGPRS網も始めたベルコム(Velcom)は資本構成がキプロステレコム(SB Telecom of Cyprus)49%、ベラルーシ政府31%、ベルテックエクスポート(Beltechexport)20%と複雑な経営でもあり、2005年3月末加入数128万と二番手で、3社合計277万加入は2003年末111万の2.5倍になっている。

<寄稿> 高橋 洋文(元関西大学教授)
編集室宛 nl@icr.co.jp
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