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マンスリーフォーカス
No.90 January 2007

世界の通信企業の戦略提携図(2007年1月8日現在)

266. 2007年の情報通信市場展望(概要)

世界の超長期展望

 新年に相応しい未来展望ものを探してみると2066年の世界を扱うエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(:EIU)特集記事「祝六十年(2006.12.14)」がある。これは60年前のエコノミスト編集長G.クローサーが第二次大戦後のビジネスを導くインテリジェンスの必要性を力説し、1946年10月にEIUが誕生したことを回顧し、近年革新力が低下しているEIUの立て直しを呼びかけたものと思われる。

 特集記事導入部「2026年の世界」は「2066年への道の1/3辺りの予測にそこそこ自信が持てるのは2026年の世界が今よりほど遠く見えないからである」で始まり「今トップ10一位のアメリカ軍事費支出額は9カ国合算を超えたままで、経済力・生産性の優位も維持してるだろう。しかしアメリカ人の高齢化は早く高齢人口/労働力人口比率は今より上がって25%になる。EUも似たような傾向で27カ国になる緩和要因があっても高齢者負担率は1/3を超える。でもEUは日本よりましだ・・・世界全体の実質価格GDPは今の2倍になり、増加分の45%は中国とインドになり、アジアの成長により先進国と途上国の格差が縮む」とする。

 問題は2066年予測であり、「人口動向とコンピュータ・ロボット工学・バイオテクノロジーなど技術革新が決定的要因となる。中国一人っ子政策の影響は2030年に明白になり都市農村格差もあって2066年の中国人口は14億と見込まれ、順調に伸び17億になるインドに追越されよう。2066年世界の人口大国トップ10はインド・中国・米国・ナイジェリア・インドネシア・パキスタン・ブラジル・フィリピン・メキシコ・エジプトと予測される。経済成長は教育システムと技術革新に優れた国が伸びる。若年人口とイノベーション文化がアジアの世紀を創造するだろう。2066年世界のGDP大国(購買力平価換算米ドルベース)トップ10は中国($450兆)、インド($400兆)、米国($300兆)、インドネシア($40兆)、ブラジル($36兆)。ロシア($27兆)、韓国($26兆)、英国($25兆)、日本($24兆).パキスタン($20兆)と予測される。比較経済力が地政学的影響を及ぼし、米国は2066年までに超大国の地位を断念し、アメリカ人は内向きとなって多極化世界の責任をとるより南半球・太平洋沿岸に関心を集中し、NATOよりもASEANとの関係が重要となろう。紛争の源中近東ではイスラエル・パレスティナ・アラブ諸国などとの協議が続くが、イランは人口増に伴い傑出した地位につき米国とは友好関係にあるかも知れない。EUは高齢者比率が65~75%を超えウクライナ・ロシア・北アフリカ・トルコ系労働者による緊張は絶えないが、比較的安定した英国は人口減が止まってかつての輝きを取戻してるかも知れない」とある。最も興味深いのは結語部分で「このようなシナリオは確かかと言えば、核戦争・環境問題・小惑星の衝突・何か有害な新技術の登場などの脅威はあり、中国・韓国・日本の確執、香港・台湾・西蔵を含む中華圏の緊張はあろう。2066年までに独立する国・地域は数えれば24もある。しかし真に恐れるべき脅威は予想以上の地球温暖化だけ」と言い切っている。

2007年の情報通信市場

 エコノミスト(EIU)「世界の産業見通し」は農業・自動車・消費者製品・国防・電子商取引・エネルギー・環境・娯楽・金融サービス・食料品・保健・情報技術・メディア・原材料・電気通信・旅行の16産業の2007年市場予測の要点を説明している。

 電気通信については「今や世界中に普及した携帯電話が固定・無線高速インターネット接続の導入と急速に合体して電気通信市場の激変が始まる。この種の高速接続とVoIPソフトウエアが結合すると利用者は世界中どこでも電気通信事業者と独立に電話がかけられる。その結果スカイプ、ボネージなど3年前には余り耳にしなかったVoIP会社がAT&Tなど有名なブランドに無料ないし低料金で挑戦しよう。米国調査会社インフォネティクスによれば2005年$10億のVoIP収入が2009年には米国だけで$23億にはね上がる。それでも米国の総電話サービス収入の8%足らずだが、犠牲になる既存事業者は携帯電話サービス売上高の成長鈍化の折から埋め合わせ困難である。

 既存事業者がやり返す手段としては、固定網でも無線網でも電話発信できる固定・移動融合機がある。ノキア、モトローラ、ラッキーゴールド、サムソンなど世界の大通信機器メーカーが両用ワイファイ-モバイル両用端末機を投入して市場を撹拌するだろう。利用者は両用機とVoIPソフトで無線LAN接続点(ホットスポット)ならIEEE802.11規格接続WiFiで、世界中の地方自治体に設けられるWiMAXサービスならIEEE802.16接続規格で無料ないし低料金の電話がかけられる。2007年には腕時計モバイル端末も発売される」としている。

参考 地域別人口100人当たり携帯電話普及率
北米 77.6%
日本 80.6
西欧 108.9
市場移行国 96.9
アジア・オーストラリア(日本除く) 25.9
中南米 59.4
中近東・アフリカ 41.5
世界 46.7

 メディアについては「世界広告調査センター」によれば、経済成長の鈍化とめぼしいスポーツ行事がないため米国の広告支出額伸び率が2006/2005の5%から2007/2006の4.2%に落ち、ユーロ圏も同様に3.7%から3.3%に落ちる。ゼニスオプティメディアによればインターネット広告は2007年に順位が屋外広告に取って代り、全体に占めるシェアが2005年の8.5%から2008年の7.9%に落ちる・・・Informa Telecoms & Media研究員は世界のモバイルTV利用者数は2010年に1億2,480万と予測」としている。

267.中国は通信の国家管理を強化

 ばく進する中国経済は2007年には一息つかざるを得ないと予想される(エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)。中国政府は石油や通信、航空など七業種を事実上の「国家管理産業」に指定し、国有企業が絶対的支配力を持たなければならないと規定した(2006.12.20付け日本経済新聞)。

中国経済の変化

 エコノミスト(EIU)「世界の2007年」所載の香港担当記者ウエイジャン・シャン署名記事「轟音を立てて走る中国」によれば、「中国の浪費経済は多年にわたり世界の物財メーカーとその株主、融資元金融機関を驚かせてきたが、中国を巡る資金循環変調の兆しと環境汚染のひどさから近く一息つくことになる。

 21世紀に入って中国の物財・原材料消費ぶりは大変なものになった。経済成長のシェアは世界のGDPの4%なのに消費する鉱物その他原材料は世界供給の30%に達し、鉄鉱・銅・錫などの価格を急上昇させてきた。中国の食欲がすざましいものになったのは、世界経済市場初めて年成長率50%を超える固定資産投資によるものである。 2005年に中国が必要としたエネルギー消費は、GDP一単位当たり消費量が3年で3.4倍になった2005年の米国のエネルギー消費量の4.3倍に達した。2005年の中国のエネルギー消費量は2002年の15%増で、急成長するインドのGDP一単位当たりエネルギー消費量は中国の61%に過ぎない。
このように資源を浪費する中国の成長は世界の物財メーカーとその株主、融資元金融機関を喜ばせてきた。物財の基礎の鉄鋼大手企業と鉄鉱石を中心とする資源大手企業は、地域単位の組合せで価格交渉を行ってきた。ところが旺盛な需要を背景とする資源争奪戦に伴い最近はグローバルな価格決定競争に変貌し、今や世界最大の鉄鋼生産国となった中国の宝鋼集団がブラジルの資源大手リオドセと2007年度の鉄鉱石価格を前年度比9.5%の値上げで合意し、従来の日欧メーカーによるチャンピオン交渉を革新することとなった(2006.12.22付け日本経済新聞)。
中国企業の地位向上は朗報だが、投資主導型成長は過熱をもたらすという問題が生じた。
中国企業の生産拡大と売上増加は確かだが、中国製品の買手の側で換金が遅れたり購入額に見合う融資が得られなかったりで、中国企業が現金支払いを得難くなる問題である。国家管理の中国大企業166社で見ると、2006年第1四半期受取り勘定が前年同期比14%増となり、こうした焦げ付き勘定が平均粗利益の2倍に及ぶ企業が30%に達し、1990年代半ばの企業改革期に似た混乱の様相である。中国の経済成長は過剰投資が原材料価格を引上げる一方最終製品価格を押し下げ、2003年から2005年の2年間に輸入原材料価格を急激に上げる一方中国製品対米輸出を5.2%減少させた。中国は高成長を高値で買ったのである。割りの合わないことは止めるべきだろう。

 中国は環境汚染対応でも経済成長を一服する必要がある。近年中国本土を訪れた者は知っての通り、全ての大都市は煙にむせて環境被害はぞっとするレベルに達している。中国は地球温暖化防止のための国際的枠組である京都議定書に参加していないが、中国政府は2006年4月「2010年までにS02など大気汚染物質の排出量を2005年比10%削減する」公約を掲げ、この公約達成を省など地方政府にも義務づけた。ところが2006年上半期のS02排出量実績は前年同期比4.2%増となっている。

 中国人民銀行(中央銀行)は対外証券投資の本格的解禁に踏み切った(2006.4.14発表)。
中国政府は四大国有銀行を「国際競争力を備えた銀行につくり替えるため」先に不祥事件対応で中国建設銀行の改組・香港市場上場を行ったが(2005.10.27)、今回資産規模や健全性など一定の基準をもとに国内銀行・保険会社に対し外国の有価証券への投資を認める「適格国内機関投資家制度」を設け、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)を整備した。1984年に中国工商銀行を分離した中国人民銀行(中央銀行)も上場し(2006.6.1)、中国最大の商業銀行として産業金融を行う中国工商銀行は不良債権比率(2006年6月末)を残しつつも、外国銀行に人民元業務を開放するWTO加盟時の公約を履行する前に上場した(2006.10.27)。中国政府は人民元業務を行う外国銀行には現地法人への切替えを促すこととして「外資銀行管理条例」を制定し(2006.12.11)、日本のみずほコーポレート銀行、英国の香港上海銀行(HSBC)とスタンダード・チャータード銀行(SCB)、米国のシティバンク、オランダのABNアムロ、シンガポールのDBS銀行、香港の東亜銀行とハンセン銀行の8行から現法設立申請を受理した(2006.12.12)。各行は2007年前半に営業を開始する。2006年末の世界の金融機関時価総額ランキングで初めて中国工商銀行は第4位、中国建設銀行は第7位になった(2007.1.1付け日本経済新聞)。

 このような金融業界の体制整備のなかで、中国政府は「投資の伸びが速過ぎる」過熱対策のため、中国人民銀行(中央銀行)の基準金利引上げ(2006.4.18)から地方の乱開発に歯止めを掛ける工業用地最低譲渡価格設定・納付金倍増制度(2007年1月実施)まで直接介入を進めている。しかし貿易黒字・外貨準備高の増加でホットマネーは減る兆しなく、主要金融機関の2007年実質経済成長率予測によれば日米欧の減速見通しに対し中国は9%台の見通しである。

重要産業の国家統制

 WTO加盟から5年経ち市場開放のための「助走期間」を終えた中国の2007年の課題は何か。2006年まで5年間平均9.5%の高成長の原動力は海外からの直接投資で、中国は工業生産の三割強、輸出の六割弱を外資系企業が担う「外資大国」となった。公約の金融・貿易開放は果たしても重要産業が外資支配下のままでは経済大国の道は歩めない。
新聞報道によれば「中国政府は石油や通信、航空など七業種を事実上の国家管理産業に指定した」(2006.12.20付け日本経済新聞)。「中国政府がまとめた指針によると電力、石油・石油化学、通信、石炭、航空、水運、軍事の七業種では国有企業が経営権を持たなければならない」「2010年までに国有企業の再編や株式上場を進め、七業種で三十~五十社の国際競争力を持つ企業グループを育成する」「外資企業から事業拡大の認可を受けた場合は国有企業への影響を考慮して是非を判断する」という。
米国経済誌フォーチュンが発表した2003年売上高(金融機関の場合営業収益)に基づく企業番付「世界500社」に選ばれた中国企業は次表の通り14社である。

[表 Fortune500社にランクインした中国企業]

 ところが上記14社は全て独占力の強い国有企業であり近年目覚ましい成長を見せている非国有企業はまだ上位に姿を表わしていない。本格的開放期に入った中国企業は今や国内外市場で平等なルールに基づく競争を展開しなければならないが、国有資産監督管理委員会の李栄融主任は「国家の安全と国民経済を守るには国有企業のコントロールと影響力が必要」と語る(2006.12.19記者会見)。それにしても「事実上の・・」「WTO加盟時の公約に基づく開放政策の一方で、国有企業保護の姿勢も崩さないことを明確にした格好で、米国などと新たな摩擦を引起す可能性がある」との宮沢徹日経北京特派員の記事は飯野克彦中国総局長のコラム「"地球回覧"-錯綜する中国のメディア統制(2006.12.29付け日本経済新聞)」を先取りしたものか。
このコラム記事によれば、中国政府は2006.12.1政令で外国人記者の取材活動への制限を2007年から大幅に緩める方針を打ち出し、北京オリンピックとその準備期間中だけ時限措置だが、実際の経験を踏まえ将来は恒久的措置したいと意欲を示すとある。
エコノミスト誌(2007.1.3)記事「スポーツ関連ジェスチャー」も日経同様中国は北京オリンピック関連でメディア規制を緩和すると伝える。オリンピック・ゲームは中国にとって経済の成果を見せ誇りと自信を示す政治的に極めて重要な機会、そこで西洋との連携を強めたい。外国メディアとのトラブルによる1980年モスコー・オリンピックのボイコット事件のような事態を避けたい。外国人記者の地方旅行も希望通りとし、中国人の外国出版物・外国ウェブサイトへのアクセスも自由化する。こうした新ルールはパラリンピックを含む北京オリンピックが終了する2008年10月限りで失効する。ただ中国政府報道管理担当高級幹部は「新ルールが中国の発展に寄与することが証明されれば効力は続く」と述べている。

 情報通信政策/サービスの焦点がディジタル放送・モバイルTVを含む次世代網(NGN)に移った今日、独自の3Gサービス標準TD-SCDMA実証実験の評価作業に手間取った中国は3Gサービス免許付与を2007年に持越したが、オリンピックに3Gサービスが間に合うことについて王旭東情報産業大臣は自信満々と伝えられる。ただ躍進する四大中国通信企業は皆ニューヨーク証券取引所に上場し、今や世界の情報通信サービスプロバイダー上位30社番付(2007.1.3現在)にランクインしているが、中国移動通信(現在GSM方式)、中国聯通(現在GSM/CDMA二方式)、中国電信(固定電話サービス)、中国網絡通信(固定電話サービス・PHSなど)にどの3Gサービス免許を与えるか、特に民営化・再編成の過程で移動通信を手放した中国電信に如何なる再参入を認めるのか、2007年の重要政策課題である。

268.オールド・メディアの再生

 Vivendi UniversalのJ-Mメシエ、BertelsmannのT.メッデルホーフ、TimeWarnerのT.ターナー、Walt DisneyのM.D.アイズナー、ViacomのS.M.レッドストーンなど伝統的メディアの大立者が引退後、75才にしてニューズ社(NWS)会長兼CEOの現職を続けるR.マードックとメディア大手リバティ・メディアの創始者J.マローンとの積年の対立と主導権争いが終結することになった(2006.12.22発表)。

 J.マローンはリバーティ・メディアを創業し(1991.3.28Nasdaq上場)ケーブルTV会社TCIの傘下に入って(1994.8.4)メディア・ベンチャー部門TCI Ventures Incと改め、TCIを米国ケーブルTV最大手とするのに功労があった。旧AT&TのTCI買収に際しリバーティ・メディアをAT&Tコンテンツ部門のトラッキングストック(Liberty Media Group: LMG.A/LMG.B)とし(1999.3.9)、AT&Tのメディア・ワン買収FCC承認条件選択に際しAT&Tから独立し(LMC.A/LMC.Bとして2001.8.10NYSE上場)、AT&TのLMG売却に伴い(2001.11.15発表)含み資産ができたのでニューズ社に出資し社外筆頭株主となった。次に米国衛星放送ディレクTV(DirecTV)を保有するGM子会社ヒューズ・エレクトロニクス(HE)とニューズ社の合弁会社スカイ・グローバル・ネットワーク( SGN)の5%株主となった(2001年5月)。
一方R.マードック率いるニューズ社は、DirecTV保有GM-HEとエコスター・コミュニケーションズ(EC)の合併合意により(2001.10.29発表)掌中の球を奪われたが、その後も目を離さず寡占審査とつなぎ融資による実施遅れにつけ込んで新会社ECの$66億買収合意に漕着けた(2003.4.9発表)。

 リバーティ・メディアは(1)ビデオ・電子商取引集中のリバーティ・インタラクティブ・グループ(LINTA)と(2)ネット小売・メディア・通信・娯楽事業集中のリバーティ・キャピタル・グループ(LCAP)を保有する持株会社化したが(トラッキングストックを発行しNasdaq上場)、投資活動の対象としてヒューズ社は有望なのでニューズ社株買い増しを加速しマードック一族保有比率29.5%に迫る勢いになった。これを感知したR.マードックは株主権方式を考え一株主の15%を超える議決権株保有を防ぐ毒薬条項を設定した(2004.11.8発表)。これはニューズ社現株主全員にニューズ社株式を$80まで半値で引き受ける権利を与え、同条項の発動によりニューズ社株式が急膨張して買収を企てる者の保有比率引下げ効果を期待するものである。当時リバティ・メディアのニューズ社株保有比率は9%から17%に迫る勢いだったと見られるが、ニューズ社とリバティ・メディアは互いに友好関係にあることを強調し、ニューズ社は「株主権方式はリバティ社の話し合いも事前通知も無く議決権株を買収する動きに備えた」との声明を出した。

 その後両者の関心は、J.マローンは欧州進出、R.マードックはインターネット市場を焦点としながらも本体の相互買収問題から去らず、電話による直接会談とリバティ・メディアG.マッフェイCEO/ニューズ社D.デヴォー財務担当役の事務折衝を重ね、話し合いを進めてきた結果合意点に達した(2006.12.6電話確認)(2006.12.22発表)。取引の要点は、ニューズ社が無議決権株式3億2,460万株と議決権株式1億8,800万株からなるリバーティ・キャピタル・グループ(LCAP)保有ニューズ社株式16.3%を受取り、引き換えにリバティ・メディアはニューズ社が保有する米衛星放送DirecTVとそのローカル子会社の株式(時価総額$117億)の38.5%と現金$5.5億を受取ることである。資産の売却ではなく交換なので両社とも巨額の節税になる。取引はニューズ社普通株主の議決と規制当局の審査を経て2007年第2四半期完了と見込まれる。ニューズ社は加入者伸び悩みのDirecTVを整理してインターネット市場に専念でき、R.マードック一族のニューズ社株式保有率は36%に上がる。リバティ・メディアはDirecTV取得により米国でのビデオ・サービス販売に拍車をかけ手持ち番組資産再編成が加速される。
ニューズ社は同族経営を基軸とし、リバティ・メディアは投資活動依存と形は違うが、ともにオールドメディア再生の道を辿る。次表に見る通り、ニューズ社(News Corp)は世界の情報通信サービスプロバイダー上位30社番付に第24位の地位を維持している。リバティ・メディアは通信企業扱いするのをためらい計上してないが、二種のトラッキングストックを単純合算すると第21位(時価総額$285億)になる。

「[世界の情報通信サービスプロバイダーTOP30社(2007.1.3現在)]

<寄稿> 高橋 洋文(元関西大学教授)
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