2002年6月号(通巻159号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:移動通信サービス>

中国語圏でのSMSの普及、入力方法が鍵

 SMSの市場は世界中で急成長している。しかし携帯電話の小さなキーを使って文章を作成することは依然として煩雑で、そのことが多くのユーザーを遠ざけている。特に中国語圏においては、漢字を入力することはアルファベットに比べてプロセスが複雑であるため、いかに簡単な入力方法を提供できるがSMS普及の大きな鍵を握っている。本稿では、中国語圏における携帯電話での入力方法を紹介する。

 中国語の主な入力方法は「ピンイン(PinYin)」、「ピーホァ(BiHua)」、「ズウイン(ZhuYin)」の3種類があり、それらの補助機能としてT9テキスト・インプットが香港を中心に普及している。各方法の詳細は以下のとおり

PinYin

表1「PinYin」は中国本土で主流な中国語(マンダリン)の音による入力方法で、アルファベットを用いる。「手提電話(携帯電話)」と入力する場合を例にとると、4つの文字はマンダリンを音にした「SHOU TI DIAN HUA」に置き換わる。キーパッドに従って、入力したい文字の数だけ該当のキーを押す必要がある。例えば、文字「S」は、数字キー7の4番目に割り当てられている為、数字キー7を4回押す。以下も同様に続け、全ての入力が終了した時点で変換キーを押すと「SHOU」で始まる文字がリストアップされ、その中から「手」を選択する。ひとつの単語を完成させるには、全ての文字についてこの操作を繰り返す必要がある。「手提電話」と入力した場合のキー操作は表1のとおり。

BiHua

表2
表3
「BiHua」は、漢字のひと筆を記号化し利用する入力方法で、香港で販売されている携帯電話のほとんどがこの方法を搭載しており、広範に利用されている。ノキア製の端末「8310」の場合、表2の様に配置されている。上段は数字キーを表しており、下段は中国語のひと筆記号が標記されている。それらの意味は、1.交差、2.直線、3.曲線、4.点、5.ハネである。基本的に、個々の単語の書き順に沿った記号を認識していなければならない。例えば、「手」ならば、「曲線」、「交差」2回、「直線」からなっている。ほとんどの文字においては、最初のキーから数回が押された時点で自動的に候補となる文字が表示される。その中から該当する文字を選択する。ノキア8310で「手提電話」と入力した場合のキー操作は表3のとおり。

ZhuYin

表4
表5
「ZhuYin」は、発音をあらわす記号を利用した入力方法である。この方法は特に台湾で人気があり、販売されている携帯電話の多くにに搭載されている。機種によって多少異なるが、ノキア8310の場合は各音節が表5の様に各キーへ割り当てられている。最初の縦列は端末の数字キーを表しており、2列目から6列目がそれらの音節を表示するのに必要なキーを押す回数を表している。例えば音節「T」を表示する為には、数字キー4を3回押す。ひとつの文字を作成するには、個々の音節を知っている必要があり、それらを順に入力していく。全ての音節が入力されると、候補となる文字が表示されるのでその中から選択する。ノキア8310で「手提電話」と入力した場合のキー操作は表4のとおり。

T9テキスト・インプット

 T9とは「text on 9 keys」という意味で、携帯電話の9桁のキーだけでユーザーが素早く容易にメッセージを入力することができるソフトウエアを利用した方法であり、世界の180種を超える携帯電話に搭載されている。T9に対応した携帯電話のユーザーは、1文字につき1回キーを押せばソフトウェアがボタンの組み合わせで考えられる文字列候補を類推するため、何度も何度もキーを押す必要がない。中国語においても、T9は既出の3つの方法(PinYin、BiHua、ZhuYin)全てに対応している。中国語圏でも新しい端末の多くがT9を搭載し、香港を中心に一般的になりつつある。また、T9にはレギュラーとアドバンスの2つのバージョンがあり、ノキア8310などの最新機種ではアドバンスを搭載している。レギュラーとアドバンスの最も大きな違いは、レギュラーでは次の文字の最初の記号(PinYinでは最初の音、ZhuYinでは音節)を入力するまで候補が表示されないところである。BiHuaで「手提電話」と入力した場合のキー操作は表6のとおり。

表6

 なお、入力方法は端末に依存しており、例えば香港でT9が普及している背景として、モトローラを除くほとんどの人気端末が同技術を搭載していることが上げられる。また、各国の市場で絶大な人気とシェアを持つノキアの動向が、入力方法の浸透に大きな影響を及ぼしている。

移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 吉川 誠
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