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研究の眼
2011年4月19日掲載

新たな動きをみせるYouTube

グローバル研究グループ 山本 惇一
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 以前清水主任研究員が執筆していた記事(「黒字化する動画共有サイト」を参照)で、YouTubeが登場した5年前とは状況が変わってきているという紹介があった。記事にもあるように違法動画にも広告をつけるという方法という新たなマネタイズ手段が確立、黒字化も見えてきた中で、最近のニュースでは更に積極的にYouTubeが事業領域を広げようとしていこうとしている様子が窺える。

 具体的には、(1)2011年4月、ライブストリーミングサービス「YouTube Live」を開始、(2)2011年3月にネット向けの番組を制作するNext New Networksの買収(※買収金額は不明)という2つの動きである。

 まずライブストリーミングサービスであるが、日本ではUstream、ニコニコ生放送、米国ではUstreamの他にもJustin.TVやLivestreamといった企業がサービスを提供しており、現在注目市場の一つである。(詳細は筆者の執筆記事がITproに掲載されているので、そちらを参照戴きたい。)

 この記事でも触れているが2010年9月、YouTubeはライブストリーミングサービスのトライアルを実施するなど、着々と準備を進めていた。YouTubeによるとライブストリーミングのプラットフォームのβ版を2011年4月8日より提供開始、今後数千のパートナーが自身のチャンネルからライブ中継を行えるようになる、とのこと。

 ちなみにこの原稿を執筆している4月18日(月)の11時時点では、Coachella 2011 Live Webcast(音楽ライブ)、Indiatimes IPL DLF 2011(インドのクリケットの試合)、Fashion TV Paris(世界最大のファッション専門チャンネルFashion TV)など様々な分野のコンテンツが、既にライブ配信されていた。

 次に、Next New Networksの買収に関して簡単に説明していきたい。Next New Networksは2007年3月に設立されたベンチャー企業で、オリジナルWeb動画の制作および配給を手がけている。提携テレビ局/番組ネットワークを含めて視聴者数は約600万人、視聴回数は20億ビューを超えていた。Next New Networksのブログのコメントによると、同社は「YouTube Next」のコア要素になるとのことであった。この「You Tube Next」は、YouTube上におけるクリエーター支援と動画作成の促進を目的としているようだ。

 これに関連してWSJ(2011年4月7日)は、「YouTubeは放送やケーブルテレビと競争しようとしている」と報じている。同記事によると、YouTubeは1億ドルをかけて、オリジナル番組に注力する模様、20のチャンネルについて、1週間に5〜10時間のオリジナルコンテンツを提供予定であると伝えている。

(参考)YouTube Recasts for New Viewers(WSJ, 2011.4.7)

 このようにこの1ヶ月のYouTubeの動きは、明らかに今までより一歩踏み込んで映像ビジネスに参入しようとしている意思が窺える。

 スマートフォンの普及などにより映像を配信すること自体はそれほど難しいことではなくなってきている。また、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアの普及により、一個人から発信される情報は世界中に一瞬に伝達できるようになった。

 今回のYouTubeの動きが、今後、社会にどのようなインパクトを与えていくのか注目である。

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