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Global Perspective 2011
2011年5月26日掲載

インド:携帯電話SMSを活用した輸血情報提供サービス

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 インドにおける携帯電話のSMSを活用した輸血情報提供とインドの輸血事情について紹介したい。

 2011年1月12日、インドの通信事業者Tata DOCOMOは緊急時の輸血サービス登録サービス「Bloodline Club」を開始した。同サービスは、Tata DOCOMOのユーザがSMSで血液情報を登録し、緊急時にはSMSを送信することによって輸血情報がもらえるというサービスである。登録されたメンバーには、登録した血液が必要な時には、アラートが送信される。血液が必要な時には未登録ユーザでもSMSを送信することによって情報受信が可能だ。

 インドでは同様のサービスを提供している通信事業者として他にも以下の通りある。

それぞれ、通信事業者だけの取り組みではなく、血液バンクと提携している。

インドでの輸血事情についてみていきたい。
 「国境なき医師団」のレポートによると、インドではまだ輸血によるHIV感染が多く安全ではないとのこと。また、2009年7月15日のHindustan Timesの報道によると、同性愛者からの献血を断る病院が多いとのこと。2011年1月28日のThe Timis of Indiaの報道によると、インド品質委員会(QCI)は輸血によるHIVや伝染病の肝炎の患者を減らすことを目的として、輸血用血液の安全性確保のためインド全土にある2,635箇所の血液バンクに委員会を設置した。彼らは、輸血行政の改善に向けQCIに対して制度の改革提言も行っていくそうだ。インドでは毎年850万人分の血液が必要とされているが、実際には250万人のドナーから650万人分しか集まらないとのこと。
 さらに残念なことに、インドではいまだに別のカーストからの輸血は受け付けないという人も農村部を中心に多数いるとのこと。国土が広く血液センターや医療機関の整備がまだ遅れているためにドナーの大部分は近親者、もしくは知人になるようだ。

 インドでは、Blood Donors Clubという団体やインド赤十字社によって積極的な輸血登録者を募っている。またインド政府保健福祉省のNACOがBBC放送と提携してインドでテレビ広告による輸血活動の促進も行っている。(下記動画参照)
インドの通信事業者としてはBharti Airtel社がCSRの一環でインド赤十字社と協力して輸血活動も行っている。同社はアフリカにも進出しておりアフリカでもHIV啓蒙活動を実施している。

 今後インドの通信事業者でもこのようなシンプルかつユーザにとって有益で社会性の高いサービスが出てくることが期待される。
SMS対応した端末があれば良いので、多くの人が利用できる。またインド(特に農村部)ではテレビはないが、携帯電話は持っているという人も多い。彼らにとって携帯電話はライフラインであるのだ。インドではMNPが本格的に導入された。通信事業者独自のサービスによる顧客の囲い込み競争も激しくなっていくことが想定される。通信事業者はSIMを通じて顧客との接点を持っている強みを活かして、このような取組みを積極的に行ってもらいたい。同時にインドでいまだに残る輸血に対する偏見・先入観を無くすような啓蒙活動にも率先して取り組んでいくことを期待したい。

【参考動画:インドでの輸血促進のテレビ広告】

(参考)インド:携帯電話を活用したエイズ対策教育に向けた取組み

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