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志村一隆「ロックメディア」
2008年5月掲載
ロックメディア 第12回

NAB Showレポート1:
メディアとコンテンツの分離


志村一隆(略歴はこちら)

アメリカ人の言い回し、コンテンツとメディア

 アメリカでカンファレンスに出席していると、アメリカ人(MBA、ビジネス系人種)の口癖、言い回しがだんだんわかってくる。●●のコモディティ化・・・とにかくなんでもコモディティ化、チャレンジング、ビリーブ・イン・ユアセルフ、困難な環境も自分を信じて・・・などなど。

 こうした「言い回し」と、欧米流の考え方「とにかく物事は細かく分解して考える」という「枠組み」に慣れてくると、英語の理解力がグンとあがる。

 一塁にでたら「ピッチャーの癖を細かく見るより、ボーッと全体を見よ」(盗塁王3回の高橋慶彦千葉ロッテコーチ、中学野球小僧2008年5月号、白夜書房)、個々の単語を追うより、全体のコンセプトの理解のほうが大切である。

 NAB Show 2008での議論をボーとながめると、「メディアとコンテンツは別」という枠組みが浮かび上がる。

 アメリカでは、ちょうど10ヶ月後にデジタル放送移行(2009年2月)が迫っている。メディアとコンテンツは別モノという枠組みを適用すると、「CSI見てるけど、そういえばネットでもこの前見てたなぁ・・デジタルTVって同じこと?」という雰囲気が醸し出され、問題箇所が限定される。

コンテンツは不変だが、メディアは変わる必要がある。

未来を予測する世代

 メディアはなぜ変わらないといけないのか、それは消費者ニーズを満たしてないから。。時代の瞬間の消費者ニーズを敏感に感じ取っているのは、メディアビジネスをしている人よりも、メディアにコンテンツを提供しているクリエイターたちである。

「若者はスナック・サイズ(YouTubeみたいに短尺サイズの動画のこと)のコンテンツしか集中力が続かない(Intention Economy)」  アンソニー・ズイカー氏、「CSI」のプロデューサー
「メディアはメッセージである。これからの世代は、大画面とケータイ画面、両極端なサイズで映画を見ることになるから、作品の撮影方法も変化する」 バリー・ソネンフェルド監督、「メン・イン・ブラック」ほか
「The O.C.では一晩で出演者がアメリカのスターになった。インターネットを利用すれば、世界のスターが作れる」  ダグ・リーマン監督、「Jumper」、「ボーン・アイデンティティ」、「The O.C.」

 ある編集者が、「本は人間の「欲望」を満たすためにある。出版社は、泣きたい人には泣ける小説を、笑いたい人には喜劇を提示するのです」と言っていた。古代ギリシャから、エンターテイメントの役割に変化はないが、受け手のニーズを満たす必要はある。

[写真]

 ディズニーのアイガーCEOが、「Facebookに登録している」ように、デジタルへの感性、キッズ世代を受け手として捉えることがメディアビジネスの長期的成長に重要である。

 農耕社会以降、天変地異など未来を予測する人が尊敬されてきた。毎年同じこと繰り返す社会では過去の経験がモノを言う。大昔は、経験豊富なおじいちゃん・おばあちゃんが尊敬された。工業化社会になってからはお父さんが尊敬され、そして、今未来を予測できるのは、子供である。(アルビン・トフラー氏@NABでの講演)

 歴史を知る必要はあるが、過去を振り返る必要はない。環境が変わってしまったら、古き良き時代の記憶はそばに置いて、新たなルールで生きるほうが楽しい。

“Welcome to the “rest” of 21st century” (アルビン・トフラー氏 NAB Show)
“One door is closing, but another door open” (NAB、デビッド・リールCEO、NAB Show)
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