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2007年1月掲載

AT&T/Bell Southの超大型合併、いよいよ発足へ
---FCCがようやく認可。内部の反対論で最終段階に混乱。
今後のFCCの政策策定にも影響か---

 840億ドルにのぼるAT&TによるBell Southの合併の審査を行っていたFCCでは、消費者保護の視点から合併に厳しい姿勢の民主党(野党)系委員の反乱で混乱していたが、年末ギリギリの12月29日にようやく合意に達し、認可のはこびとなった。

 これで間もなく、ずば抜けて超大型の通信/放送会社となる新々AT&Tが発足する。

その規模は、

  • 年間売上高1,000億ドル(約11兆5千億円)
  • 6,700万の加入者アクセス回線
  • 従業員300,000名
  • 米国最大の携帯電話事業者であるCingular Wirelessを100%所有
  • 米国の22州をカバー
  • 1,100万のDSL顧客
  • 米国の広帯域設備の23%近くをコントロール
    [数字は、Copps FCC委員]

という巨大会社が誕生するのである。しかも、AT&Tは最近、急ピッチで光ファイバ網を建設し、通信のみならずIP方式のビデオの配信を行う事業の立ち上げに努めており、CATV会社の寡占に立ち向かって放送事業への進出にも意欲的を見せている

 これほどのマグニチュードの合併だけに大きな論議を呼んだが、独禁法の観点から審査に当たっていた司法省独禁局は、10月10日にこの合併を無条件で承認すると発表した。FCCでもMartin委員長はこの合併を承認する命令の草案を委員の間で回覧し始めていたと報じられていたが、FCCでは、10月13日民主党系の2名の委員が連名でMartin委員長あてに「例を見ない巨大合併の案件でもあり、これまでの審議過程では不なので、さらにコメントを広く募り、それをも織り込んで慎重に審議するべきだ」との反対の書簡を送った

 その後FCCでの審議は何回も延期され、12月になってもコンセンサスが得られず、硬直状態が続いていたが、合併を申請したAT&T/Bell Southの両社が合併による競争減退の懸念に対処する様々な約束(commitment)を大幅に追加して、民主党系の2名の委員もようやく同意し、急転直下、合併が承認されたのである。

 こうした経緯を掘り下げてみると、米国で合併がどのように審査されるのかという手続面ともに、FCC内部での共和党系委員と民主党委員の考え方の違いが明確になり、今後のFCCの政策決定を占うためにも参考となる点が多いと考えられる。

■かっては7社あったベル系地域電話会社は3社に統合・集中

 独禁法訴訟の末、1984年の「AT&T分割」(AT&T Divestiture)によって、AT&Tを中心とした研究開発/通信機器製造/電話事業運営という垂直統合体だったいわゆる「ベル・システム」が解体され、地域通信のベル系地域電話会社24社(2社のマイノリティ所有を含む。)は7社の地域持株会社(RBOC)のもとに再編成された。ベル系地域電話会社は、長距離通信事業を禁止され、かっての親会社で長距離通信専業となったAT&Tと資本、人事関係で明確に切離された。

 その7社のRBOCは、業績の差やマネージメントの差から次第に統合されていった。そのなかでももっとも意欲的にM&A路線を追求したのがテキサス州等の南西部を地盤とするSouth Western Bell(SBC)であり、太平洋岸のPacific Telesisとシカゴ周辺のAmeritechを相次いで(それぞれ1997,1999年)併合した。さらに2005年11月、業績の破綻した元の親会社である長距離通信のAT&Tをも買収して、その伝統ある社名とブランドを引継いだばかりである。

 一方、ワシントンDCやフロリダ州等の東海岸南部を地盤としたBell Atlanticは、ニューヨーク、ボストンなどを地盤とした東海岸北部のNynexを買収し(1997)、さらに独立系電話会社最大手だったGTEをも買収して(1999)、社名をVerizonと改めた。残る2社のうち、ロッキー山脈地帯のUS Westは、新興の長距離通信事業者Qwestによって買収された。2006年初めに手付かずで残ったのは、Bell South一社だけとなり、ベル系地域電話会社は新AT&T(元SBC)、Verizon、Bell South、Qwestの4社に統合集約されていた。1996年電気通信法が制定された10年前には,誰もが考えもしなかったベル系地域電話会社同士の大型合併が次々に認められたのである。

 このような買収、統合の盛行の背景としては、1990年代後半に「グローパル規模で通信市場での競争が激化し、近い将来グローバルな通信事業者として生き残れるのは大規模な3-4社のみとなろう」という信仰から「規模の経済」を競って追求したからである。また、長距離通信事業者が、永年の過酷な料金戦争やIP電話の出現で打撃を受け疲弊し、さらには、地域サービスにも進出しようとしながら、FCCの支援方針 (新規参入者助成のためのUNE政策) の変更もあって、軒並み破綻しつつあったのを救済する必要もあった。

 そして2006年3月、AT&Tを吸収合併したばかりのSBC(新AT&T)が、その余勢を駆るかのように、兄弟会社のBell Southをも買収すると発表したのである。

■発端は民主党系委員の反乱

 AT&T/Bell Southの合併審査が難航したのは、民主党系の委員の反乱である。

 FCCには5名の委員がおり、大統領が候補者を指名して上院が承認することとなっているが、「一つの党が3名を超えてはならない」との法の規定があり、これまでおおむね与党系が3名、野党系が2名の構成が常態となっている。

 ブッシュ共和党政権の発足とともに、FCCは共和党系が3名の委員を擁し、その政策も規制緩和や市場の自主性の尊重に傾いてきた。この5年間、具体的な政策でも民主党政権当時の「地域通信への競争の導入最優先」で行過ぎた「競争事業者偏重」の弊害を反省し、「既存事業者の設備投資インセンティブ」にも目配りするよう舵きりを大きく変えてきていた。例えば、UNE制度[訳注: Unbundled Network Elements ;1996年電気通信法により設けられた市内通信への競争参入促進の便法。市内サービスをいくつかの要素に細分し、競争参入事業者が自前では賄えない要素の提供を既存事業者に強制できる。その場合の事業者間料金は、州当局が格安に設定している。競争事業者がこの制度を安易に乱用する弊害が目立ったため、FCCは既に絞込み等の是正措置をおこなった。]の運用においても、「これまでのFCCは、競争事業者の助成を優先しすぎた」とし、これでは既存事業者の光ファイバ網建設のインセンティブがしぼみ、重要な政策目標の一つである「高度通信の迅速な全米への普及促進」が阻害されてしまうとして、光ファイバについてはUNE制度から除外するなどの決定を行っている。

 今回の騒動は、冒頭にも触れたように、司法省独禁局が「AT&T/Bell Southの合併は何等問題がない」と早々と決定し、FCCでもMartin委員長が「認可OK」の案を内部に回覧し始めていた10月中旬に起こった。

 少数派である民主党系のCoppsおよびAdelsteinの両委員は10月13日連名で委員長に書簡を送り、「これほどの超大型合併であり、議員、州当局者、僻地関係者、消費者保護団体、競争事業者、さらに数千名の個人がFCCによるこの案件に十分な審議を求めているところであって、FCCの審査はまだ不十分であり、さらに広くコメントを求めて慎重審議すべきである」とし、予定されていたFCCの審査会合の延期を求めた。また、司法省が無条件で合併に青信号を出したことについて、「司法省は職責を放棄して歩み去った」と強い調子で非難した。

■委員長は一応柔軟に対応。しかし、業を煮やして多数派工作へ

 Martin委員長はこれを受けて、とりあえず審議を延期し、提案どおり再度広くコメントを求める手続をとった。しかし、合併の認可申請以降、すでに長期間が経過していることから、コメント手続も短縮して迅速な結論の必要性を強調した。

 しかし、FCC内部での意見の対立は、政党ライン間で溝が埋まらず、混迷の様相を呈してきた。数の力で3対2で押し切れない事情もあった。FCCでは暫く共和党系委員1名の欠員が続いていた。秋口にようやくMcDowell委員が任命されたものの、彼の前職が、ベル系地域電話会社のライバルである中小電話会社の業界団体幹部であったため、先頃のSBC/AT&TやVerizon/MCIの合併等にも反対の一翼を担ってきた経緯があった。そのためみずから「利害相反」を懸念し「AT&T/Bell Southの合併審査には参画しない」として、身を引いていた。

 委員長は業を煮やして、何とかMcDowell委員を審議に参画させ、3対2で押し切れないかと考え、FCCの法務部長に「利害相反かどうか」の正式認定を命じ、法務部長は苦心して「審議に参画しても問題はない」との長文の裁定文を出した。

 しかし、McDowell委員は、12月18日、「近時、公僕の倫理が低下している。私は、倫理を厳格に考える観点から本案件の審理には参加しない」と声明して身を引いてしまい、委員長の最後の切り札も宙に浮いてしまった。

■AT&T/Bell Southが大幅な追加の約束(commitments)

 AT&T/Bell Southは、既に10月13日に「合併が認可された暁には、顧客サービスの向上等でこれこれを実現する」とした自発的な約束(commitments)のリストを提示していた。こうした切羽詰った状況を打開すべく、AT&T/Bell Southは、12月28日になって、さらに19ページにも及ぶ大幅で詳細な「追加の約束」を行った。主要な内容は、広帯域サービスの一層早急な普及努力、競争事業者からの要請へのタイムリーな対応、ビジネス慣行の改善、一部サービスの料金の値上げ自粛、ネットワークの中立性やBell Southの海外での仕事の米国への復帰などである。

 AT&T/Bell Southは、約束の提示にあたり、「本来必要のない約束を強要された」との次の「恨み言」ともとれるような文言を添付している。

2006年10月13日にAT&Tは来るべき合併に関する諸約束(commitments)を提出した。これはAT&T/Bell Southの合併の早期承認を期待してのことであった。その時点でわれわれは、本件合併がもたらす大幅な公益と、これといった競争に対する弊害がないことから、これらの諸約束はまったく必要がないものと信ずると付言していた。われわれの確信は、司法省独禁当局、19の関連諸州、3カ国の海外諸国によるわれわれの合併の審査とそれによる何等の反競争的影響のないことが確認され、支持された。さらにまた、われわれは、今回の合併は、既に認可されたAT&T/SBCやVerizon/MCIの合併の場合よりも競争面での両社のオーバーラップが少ないことをも述べておいた。前の二件の合併では、10月13日の諸約束よりも数も少なく度合いも軽微な約束でありながら、FCCは昨年、全会一致で承認してまだ日も浅い。
2それにもかかわらず、合併に反対する者たちは、議会からも得られないような更なる譲歩を強要している。そのなかには、FCCで業界全体に関するルールの設定の論議途上のものも含まれている。こうした次々の要求のため本件合併は未だに認可を得られずに立ち往生している現状にある。したがって、こうした停滞を離脱することを目指して、FCCの迅速な認可を促進するために、申請二社は添付された合併に伴う諸約束に合意するものである。これらは10月13日の諸約束に比して一層大幅な約束となっている。申請二社は、今後ある時点で書面により(その書面通知の段階で未だにFCCが認可を行っていない場合に)これらの諸約束を撤回する権利を留保するものである。

■2追加の約束の概要

 2006年12月29日付けのニューヨーク・タイムズは、「AT&Tは、Bell South買収の(沈没しそうな)申請をなんとか引き揚げるために連邦の規制当局に新たな譲歩を提示した」と報じているが、この間の事情を端的に言い当てているといえよう。

 追加された約束の概要は以下のとおりであり、実行期限や規模等をも明示している。FCCがその履行を強制できるものであることをもAT&T/Bell Southは明文で認めている。

  • 仕事の米国への帰還---- Bell Southが海外で雇用している3,000の仕事を、2008年12月31日までに本国に帰還させる。
  • 広帯域サービスへのアクセスの促進-----2007年12月31日までに、AT&T/Bell Southの営業区域での住宅住居 (residential living units)の100%に対し、広帯域インターネット・アクセス・サービスを提供する。
  • ビデオ・サービスの展開----2007年末までにBell Southの営業区域においても150万の家庭にUverse等のビデオ番組サービスを提供できるよう設備拡充に努める。
  • 公安・災害復旧----2007年6月1日までに、AT&Tは、Bell South地域でのハリケーンやその他の災害による障害やサービスの中断にも対処する能力を利用できるようにする。
  • 障害者顧客へのサービス----合併手続完了後12か月以内に、障害を持つ顧客に対する高品質のサービス提供努力についてFCCに報告書を提出する。
  • UNEs[Unbundled Network Elements]----合併手続完了日現在に存在するUNEsやコロケーションは今後も提供を継続、事業者間料金も値上げしない。
  • 相互接続関連コストの削減----いかなる電気通信事業者に対しても、これまでにAT&T/Bell Southが締結したいかなる相互接続協定総体をも閲覧させる。既存の他の事業者との相互接続協定を新規の交渉の出発点としたいとする他の事業者の要請を拒否しない。
  • 特別アクセス----事業者に対する特別アクセス・サービスの既存顧客には料金値上げをしない。系列会社を優遇しない。
  • ADSLサービス----合併手続完了日から12か月以内に、AT&T/Bell Southはその管内で、768Kbpsまでの速度のADSLサービスが利用できるようにする。この場合、顧客に対し回線交換方式の音声グレードの電話サービスをも購入するよう義務づけることはしない。
  • ネットワークの中立性(Net Neutrality)---- AT&T/Bell Southの系列会社をも含め、インターネット・コンテンツ、アプリケーションまたはサービス事業者 に対し、AT&T/Bell Southの有線広帯域インターネット・アプリケーション・サービスにより伝送されるいかなるパケットであれ、そのソース、所有関係または配信先の如何によって、特権を付与したり、劣後したり、優先したりはしない。
  • インターネット・バックボーン---- 合併完了から3年間は、AT&T/Bell Southは、米国内の国内事業者とのインターネット・バックボーン・サービスに関する精算不要(settlement-free)の仲間内優遇アレンジ(peering arrangement)を継続する。
  • 携帯電話----2010年7月21日までに営業区域の人口の25%までに2.3GHz帯のサービスを提供する。
  • 設備の第三者への切り出し(Divestiture of Facilities)----合併完了から12か月以内に、AT&T/Bell Southは、系列外の第三者に対し付表Bに掲げるビルに対する光ファイバの利用権(IRU)を売却する。
  • 確認書(Certification)----AT&T/Bell Southは、AT&T/Bell Southがこの諸約束を十分に遵守した旨の一役員による宣言書(declaration)を毎年FCCに届け出る。

■妥結後もFCC委員の間に亀裂。今後の政策決定にシコリか。

 こうしてなんとか妥結したわけであるが、両派の評価は大きく割れている。各委員が付帯声明を出しているが、それを概観してみよう。

 まず、民主党系委員は、「満点とは言えるものではなく、純粋に妥協の産物である」、「米国の消費者にとって、大勝利とはいえないがまずまずの勝利を祝う」というスタンスである。そのほかとしては、次のようなものである。

当初、このような大規模合併はとても承認できないと直感したが、消費者が料金値上げや少ない競争という袋小路に取り残されずに、何らかの目に見える便益を確保することで、私もなんとか支持しえる方策はないものかと考えた。

10月に司法省は、AT&T/Bell Southの合併には関心がないという不可思議な結論を出した。前例もないこの大型合併で、司法省は一つたりとも条件をつけず、「悪い事は聞かない、見ない、言わない」のプレス・レリーズを出し、逃走した。

AT&T/Bell Southは、前例のないほど徹底した多岐にわたる約束を追加提示した。私はこれでも十分には満足していない。まだまだ足りない。それでも今後数年にわたり米国民によい結果をもたらすものと信じ、これまでにしてきたことを喜んでいる。

今回の合併案件を少なくとも最低として米国民にとって受け入れられるものとしたと信ずる。

われわれがすべての問題を精査したとか、競争を根っこから断ち切るFCCの永年にわたる悪弊を改めることはできなかったことを率直に申し上げる。

インターネットのオープンで中立的な性質を守り、低廉な広帯域サービスを促進することで消費者に利便をもたらし、消費者に競争面での選択肢を確保するための意味のある諸条件を求めることでこの取引でバランスをとることに努力した。

他方、共和党系委員は、

この合併で消費者に多様なIP準拠サービスの提供が促進される。例えばBell Southの営業区域で広帯域とIPTVの展開が促進される。

強力な事業者の誕生で、国防面でも前進し、グローバルなリーチが促進される。

とくに、通信政策の重要な柱である広帯域とビデオ市場での競争が促進される。AT&TはIPTVサービスでケーブル事業者や衛星事業者と競争していく。

など合併のメリットを挙げる一方で、とくにMartin委員長が次のように述べて、民主党系委員たちが認可と取引して、ゴリ押しで多くの条件や譲歩をとりつけたことを、事業者のインセンティブの減殺のおそれがあると指摘した。

 またさらに重要な懸念として、約束や条件の実施がFCCの措置をも必要とするような場合には、まだFCCの正式な一般的方針が決定されていないのに将来のFCCの意思決定を縛るような関係になり、一民間会社のアクションがFCCの政策決定に影響を与えるような許されざる事態となる危険性を冷静に指摘している。

しかし、条件は附ければ附けるほど良いというものではなく、かえって害となるものである。AT&T/Bell Southが提示した多岐な約束の一部について、われわれ(共和党系委員)は、不要と考えたり、かえって広帯域インフラへの投資を妨害する有害なものとして留保の立場をとる。

民主党系の少数派委員たちは、AT&Tから譲歩を引き出したのかもしれないが、これは何等FCCの今後の措置を縛るものではない。少数派の委員がFCCの既定の決定をひっくり返し、また、今後のFCCの決定、政策、措置そして規則等を縛ることはできない。

AT&Tは企業であり、特定のアクションをすると決めればそれは行える。しかし、提示されている条件の一部には、AT&Tのみでは実行に移せないものもある。これらの条件を発効するために方針としてFCCのアクションが必要な限り、われわれは条件のこうした側面を支持しえず、かかる方針が進展することに反対することとなろう。

例えば、本日のFCC命令は、FCCが新たにnetwork neutralityに関する方針を採択したことを意味するものではない。かかる要件は必要がなく、インフラの展開を阻害する。したがって、AT&Tが任意で自発的にあるビジネス・デシジョンを行ったからといって、それが政府の方針を縛り、命ずることにはならない。同様に本件FCC命令は、FCCが再び料金を規制したり、料金コントロールを復活するものではない。

 この合併案件でFCCは何とか分裂を避けえたものの、両派の委員間の根本的な方針が違う以上、今後も合併の具体的進展に際して様々な問題が出てこよう。

 すなわち、共和党系委員は、規制はできる限り最少にし、市場や事業者の自由な行動を尊重する。競争の促進は重要ではあるが、僻地をも含めて高度インフラの早期の整備拡充のためには財務力のある「既存事業者」の投資インセンティブの尊重が不可欠であり、UNE制度などで「競争事業者」の助成に傾きすぎるべきではない、というのが基本的な立場である。

 これに対して民主党系委員は、弱者である消費者の保護のため競争の促進は不可欠である。最近のFCCは、政策をUターンし、1996年電気通信法の精神をないがしろにし、事業者の意向に引きずられすぎているとの立場である。

 単に今回の合併だけに留まらず、FCCの今後の他の政策論議でも、同様な対立が予測される。ましてや先頃の中間選挙で民主党が大勝し、両院で多数党となったことでもあり、少数派といえども民主党系委員の発言力が従来以上にインパクトをもつ可能性も大きいといえよう。

寄稿 木村 寛治
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