トレンド情報 トレンド情報 -シリーズ[1997年] -InfoCom Law Report
(第1回)パソコン通信事業者を震撼させるニフティ判決

【争点】 (わかりやすくするため判決原文中の整理の仕方とはやや異なっている。また反訴については省略した。)

原告被告ら裁判所
発言はXの社会的評価を低下させるものか Xは会員情報を公開していたこと、Y3の発行する雑誌でも氏名が明らかにされていたこと、自己のID番号の入った名刺を配っていたことから、本件フォーラムに参加した会員ならY1がXを批判していることを知り得たのだから、社会的評価を低下させる。 通常会員についてはID、ハンドル名、書き込み日時、文章以外は明らかではなく、ネットワーク上で本人の社会的評価というものを観念できない。また、Xは容易に反論し自らの社会的評価の回復をはかることができるのであるから、社会的評価を低下させるものではない。 Y1の書き込みにはXの本名が含まれていること、Y3の雑誌にはXの本名が明らかにされていること、Xが「ニフティーサーブ」上で自らの情報を公開していることから、本件においてXの匿名性は確保されていない。Y1の発言はいずれも激烈であり、必要以上に揶揄したり、侮蔑的表現が多用されているなど、Xへの個人攻撃的な色彩が強く、Xの社会的評価を低下させるのに十分。
Y2の発言監視義務はあるか Y3には会員の発言書き込みを常時監視すべき一般的注意義務があり、Y3に代わってフォーラムを運営しているY2にも同様の責任がある。 Y2はボランティアでシスオペを行っていた。
パソコン通信ではシスオペのボランティア的活動に基礎をおいており、仮に監視義務を負わせるとすると、ネットワーク発展の目をつむことになる。
「ニフティーサーブ」には300ほどのフォーラムがあり、それぞれ異なった個性を有するのであるから、その管理は基本的にシスオペの合理的裁量に委ねられているが、裁量は私法秩序に反しない限り認められる。
シスオペは新聞雑誌とは異なること、発言を書き込み前に知ることが出来ず、Y2を含む多くのシスオペがボランティアで、本業の合間に活動していたこと、シスオペの業務内容はフォーラムの運営・管理全般に及ぶこと、一つのフォーラム全体に一日に書き込まれる発言数は膨大であることからすると、Y2に発言の常時監視義務は無い。
Y2の削除義務はあるか 本件書き込み対して、Xは対抗手段を持たず、Y2にのみ削除という対抗手段が与えられている。「ニフティーサーブ」の会員契約、フォーラム運営規約に照らすと、「ニフティーサーブ」では他人を誹謗中傷するような違法発言に対しては原則削除することがルールとして確立していた。 速やかに発言を削除したとしても、既に多くの会員にダウンロードされていることが多く、対策として無意味。
会員のアクセス自体を停止しても他のIDで発言することや意を通じた他の会員に発言させることが可能である。
Y2はY3に対し会員の権利を最大限尊重する義務を負う。
Y2は電気通信事業法上、会員の発言を伝達する義務がある。
Y2は憲法に規定される表現の自由や適正手続きのよう性を尊重しなくてはならない。
仮にY2が削除などで通信内容への関与を強めると、それが雑誌・新聞の編集行為と同等の行為とみなされ通信内容すべてについて不法行為責任を負う可能性が出てくる。
発言削除でかえってXの反論の機会を奪ったり、訴えの提起に対する証拠を失わせたり、さらに削除を契機とした脅迫等のXに対する被害発生の危険性がでてくる。
よって、削除義務は無い。
「ニフティーサーブ」には300ほどのフォーラムがあり、それぞれ異なった個性を有するのであるから、その管理は基本的にシスオペの合理的裁量に委ねられているが、裁量は私法秩序に反しない限り認められる。
発言の削除はフォーラムの管理の一部であり、シスオペが発言を削除することで他の会員の目に触れないように出来る一方、当該発言によって名誉を毀損された者は具体的手段がない。
会員規約、フォーラム運営マニュアルには名誉毀損発言に対する記載があるから、そのような発言が書き込まれたと知ったと認められる場合には、名誉が不当に害されないよう必要な措置を取るべき義務を負う。
Y3の安全配慮義務はあるか 電気通信事業法が目的(1条)で「利用者の利益の保護」を挙げている、会員を保護できるのはY2、Y3のみである、Y3は有償でサービスを提供しているのだから、契約上の安全配慮義務を負う。 会員契約の主旨は「ニフティーサーブ」を利用させることの対価としてY3が利用料金を受け取ることであり、会員契約から生じる付随的義務は会員が自由に情報を提供し、取得できるようにする義務である。 Y3が、会員に対し、「ニフティーサーブ」を利用する権利を与える対価として、会員がY3に一定の利用料を払うという会員契約の主旨から安全配慮義務が無いことは明らか。
Y3の使用者責任 Y3はY2に自らが行うべきフォーラムの運営管理を委託しており、フォーラム運営契約などから判断すると、実質的指揮監督関係がある。 シスオペには広範な裁量権を与え、その自主的な判断に委ねている。また、フォーラムのローカルルールについてもシスオペが独自に決定するのが原則だから実質的指揮監督関係は無い。 フォーラム運営契約に照らすと、実質的指揮監督関係が認められる。
損害額 1000万   本件フォーラムの参加者数などから判断すると、損害額は総額50万
Y1 50万
Y2,Y3 10万(Y1と不真正連帯債務)
謝罪広告 必要   不要
原告被告ら裁判所

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