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みんなのためのIT経済メモ2005
2005年10月掲載

「IT分野の景気は今どうなっているのか?」「IT経済の今後の見通しは?」
マクロの視点からIT経済に関する概況をみなさんにお知らせする、

みんなのためのIT経済メモ
No.2(2005年10月号)IT関連設備投資

今月は、「注目トピック」(10,11,1,2,4,5月)をお届けいたします。(「四半期概況」は9,12,3,6月)

◆注目トピック

  1. ICR作成のIT関連経済指標から読み取れるIT経済:ICR作成のIT関連経済指標から、IT経済動向を紹介。
  2. 公表統計から読み取れるIT経済:IT関連設備投資の動向を捉える上で役に立つ公表統計を紹介。
  3. 今後のポイント
NO.2(2005年10月号)」のポイント
  1. 設備投資の先行指標である「機械受注統計」(内閣府)の受注額が増加基調。要因の一つとして、IT関連設備投資の好調が挙げられる。
  2. 「設備投資計画調査」(日本政策投資銀行)によると、IT産業である電機機械、通信・情報分野の2005年度の設備投資計画は新製品対応で増加の見通し。さらに、全産業の情報化投資も増加見通し。IT関連設備投資の増加基調が定着する見通しである。

*IT関連設備投資は、(1)IT産業(電機機械産業、通信・情報産業)の設備投資、(2)企業の情報化投資(コンピュータやソフトウェアへの投資等)。

<なぜ設備投資動向をとりあげるのか?>
 内閣府は、10月の月例経済報告で「穏やかに回復している」という判断基準を示した。これにより、8月の月例経済報告で「踊り場を脱却した」という判断を出してから3ヵ月間連続で回復基調が続いていることになる。
 景気動向を左右するものは、主な要因は何であろうか?それは設備投資である。設備投資は波及効果があるからである。中でも民間企業の設備投資は、GDP(国内総生産)の60%を占める民間最終消費に次いで高い比率(15%)を占め、先行きの消費を見込んで行なわれるもので、景気を左右する指標として最も注目すべきである。
 情報通信総合研究所では、企業の設備投資を「IT」というキーワードで捉えなおし、この「IT経済メモ」で日本の今を読み取っていく。

1. ICR作成のIT関連経済指標から読み取るIT経済

図表1:IT関連設備投資動向
図表1:IT関連設備投資動向

設備投資増加分の4割は、IT関連設備投資

 2005年8月の設備投資は前年同期比13.4%増となった。この中でIT関連の設備投資を、情報通信総合研究所が開発した「IT関連経済指標」で分析してみると、前年同期比10.8%増加となった。設備投資全体の前年同期と比べた増加分の4割を占めている(図表1)。

*内閣府「機械受注統計」の民需(船舶、電力除く)の受注金額。原統計。

 従来からIT関連の設備投資が、投資全体の増減を左右する主因となっているため、今回もIT関連の設備投資が全体の増加に大きな役割を果たしたと言えよう

*ただし、「機械受注統計」は月ごとのデータの増減が激しいので、一概にその傾向が確定しているわけではない。

IT関連設備投資の品目別の動向

 IT関連設備投資の品目別の状況を見ると、電子計算機は前年同期比20.4%増、半導体製造装置は同5.2%増となった。一方、通信機は同マイナス0.5%と横ばいであった。製造業では、電機がコンピュータや半導体製造装置の発注を増加した。非製造業では携帯電話の通信基盤を整備するための機器や、金融・保険業界からのコンピュータの受注が増加した。その背景として、(1)電機業界のデジタル家電に対する先行きの需要増加の見通し、(2)携帯電話の第二世代から第三世代への移行、(3)銀行業界における東京三菱銀行とUFJ銀行の合併によるシステム統合や、金融業界の収益性向上のためのシステム投資の活発化がある。

*日本経済新聞 2005年10月12日。

 次章では、2005年度のIT関連の設備投資計画に関して、日本政策投資銀行「設備投資計画調査」より紹介する。

内閣府「機械受注統計」とは

各企業が設備投資のための機械を機械メーカーに発注する段階をとらえて、設備投資の動向を知ろうとするもので、受注を受ける主要機械メーカーの受注額を集計した統計。収録データの企業の範囲は1995年度時点で94.5%。
「機械受注統計」は、実際の設備投資まで半年から3四半期の先行性を持つと言われている。受注から取り付けまでのタイム・ラグは受注内容、受注企業の持つ受注残高の大きさ等により大きく変動する。
受注統計であるため見込み生産品は対象外となっていること、非製造業の設備投資動向については機械に対する投資額が製造業に比べ相対的に小さいこともあり、必ずしも反映しているとはいえないことを注意する必要がある。

IT関連経済指標

情報通信総合研究所が開発した独自の指標。IT経済の動向を分析するため、生産・サービス、消費、設備投資、輸出入ごとにIT関連経済指標を作成している。          
なかでも今回は「IT関連設備投資指標」の動向をとりあげる。「IT関連設備投資指標」は、設備投資の動向を把握するためのもので、内閣府が公表する「機械受注統計」から、民需(船舶、電力除く)で、IT関連と定義できる品目の「電子計算機」、「通信機」、「半導体製造装置」の受注金額を集計し、“IT関連設備投資”として指標化したものである。

2. 公表統計から読み取るIT経済

日本政策投資銀行公表の「設備投資計画調査」から読み取れるIT関連の設備投資計画

図表2:2005年度のIT産業(電気機械産業、通信・情報産業)の設備投資計画 IT関連の設備投資は、(1)IT産業の設備投資と、(2)全産業の情報化投資がある。
まず、(1)に関しては、日本政策投資銀行が8月に公表した「設備投資計画調査」によると、2005年度の電気機械分野の設備投資計画は前年度比12.7%増の見通しとなった。投資内容は、(1)300mmウェハー対応ライン(デジタル家電向けシステムLSIなど)(2)薄型ディスプレイ関連投資−である。
通信・情報分野は、同9.4%増の見通しとなった。投資内容は、(1)第3世代携帯電話サービス (2)光ファイバ網整備?地上波デジタル化対応―となっている。
これにより、電気機械分野、通信・情報分野ともに、投資内容は新製品対応のための投資となっているのが分かる(図表2)。

図表3:2005年度の情報化投資計画 (2)に関しては、「設備投資計画調査」によると2005年度の全産業の情報化投資計画は、前年度比6.3%増加と2年連続の増加となっている。
業種別では、製造業が、輸送用機械業の生産・在庫管理システムの更新や、食品・石油業の基幹システムの再構築で同5.3%増加の見通しである。
また非製造業は同7.1%の増加を見通す。要因として、卸売・小売業のPOSシステム関連投資や、運輸業のシステム更新・統合がある。
製造業、非製造業ともに情報化投資は堅調に推移するとみられている(図表3)。

3. 今後のポイント

(今後のIT経済を見通す上でのポイントを提示します。)

 ICRの「IT関連設備投資指標」の動向を分析すると、足元でIT関連設備投資は増加し、投資全体を引き上げている。さらに、日本政策投資銀行「設備投資計画調査」や「日銀短観9月調査*1」でも、IT関連の設備投資は好調な見通しとなっていることから、IT関連の設備投資は増加基調が定着するものとみられる。また、個別企業の動向を見ても、IT関連の設備装置は増加している。例えば、半導体関連装置大手の東京エレクトロンは2005年7-9月期の半導体製造装置の単独ベースの受注高(液晶映像装置を含む速報値)が1,312億円程度と4-6月期に比べ19%増加し、7−9月期は増加基調への転換期となった。アドバンテストの連結ベースの受注高は610億円程度と、微増する見込み*2である。
 設備投資は出荷動向に影響を受けるものであることから、IT関連の消費が持続的に上向くかが今後の注目すべきポイントとなる。

*1 本稿では「日銀短観」の内容に関しては紹介していないが、2005年度のソフトウェア投資計画は、全産業で前年度比3.7%増と増加見通し。業種別には、製造業は同マイナス4.1%と減少するものの、非製造業は同7.0%と増加見通し。

*2 日経新聞 2005年10月12日


*IT経済の個別動向をお知りになりたい方は、お問い合わ せください。

手嶋 彩子
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