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Enterprise Evolution
2009年4月掲載

Enterprise Evolution ことはじめ

 今日、ICTは企業戦略に多大なる影響を与えており、さらに、世界的・社会的問題(気候変動、資源エネルギー枯渇、食糧自給等)の解決の手段としてもICTは注目されている。本コーナーでは、大きく3つの分類(1.クラウドコンピューティングの潮流、2.ICT政策と企業のBCP(Business ContinuICTy Plan)、3.グリーンICT・イノベーション)でEnterprise Evolutionを考えて行く。

クラウドコンピューティングの潮流

 現在起きているクラウドコンピューティングの動向を把握し、クラウドコンピューティングが、ビジネスとしてどのように進展していくのかを追っていくものである。

 昨年から急速に注目を集め出した「クラウドコンピューティング」は、現在、さまざまな見方が混在している。そのうち、クラウドコンピューティングを肯定する立場の人の多くは、「クラウドコンピューティングは新しいパラダイムである」と歓迎している。一方、否定的な立場を取る人も存在する。彼らの中には「クラウドコンピューティングは決して新しいものでもなんでもない。昔から言われていることを、響きの良いバズワードに置き換えただけだ」と主張している人が多い。

 たしかに、クラウドコンピューティングの本質を見極めるための議論は重要ではあるが、本稿では、そのようなクラウドコンピューティングに対するさまざまな見方があることを踏まえつつ、あくまで「今、目の前で起きているもの」として、クラウドコンピューティングのビジネス動向を紹介していくこととする。

 なお、今回は連載1回目として、本稿で扱う「クラウドコンピューティング」という用語の定義を明らかにしておく。本稿では、以下の図に示したように、「クラウドコンピューティング」をネットワーク経由でサービスを提供する形態の総称として扱う。そして、その具体的なサービスとしては、図1にある通り、SaaS、PaaS、HaaSが存在する。したがって、今後の連載では、SaaSやPaaS、そしてHaaSといったサービスを提供するプレイヤーやトレンドを中心に取り上げていくこととする。

図1:クラウドコンピューティングの分類

ICT政策と企業のBCP

 昨年の世界的金融恐慌から始まった「100年に1度」の不況の真っ直中に我々は居ます。この「100年に1度」の出来事ですが、ICTの世界では「ドッグイヤー」と懐かしい言葉ですが、他の産業に比べ非常に早い時間の進み方が非常に早いと言われます。そう考えると、ICTの世界の「100年に1度」とはおよそ「10年に1度」ぐらいの感覚でしょうか?

 10年前では、インターネットも普及し始めていましたが、今から比べればまだまだで、1999年の年末にNTT東西がADSLに本格的に提供を始める発表をし、当時のADSLの普及数がまだ1万にも満たない状態でした。

 同様に企業のICT化についてもこの10年間に見違えるほどの進化を遂げました。ホスト中心で、社員一人一人にパソコンが普及していない時代から、クライアントサーバ、SaaS/ASP、そしていまのトレンドはクラウドと、当時からは考えられない、テクノロジーの進化やパラダイムシフトが起こっています。

 今や企業におけるICTは、昨年から始まった金融商品取引法(いわゆる「J-SOX法」)では、ICT統制という言葉が浸透し、企業経営に多大なる影響を与え、欠かすことが出来ないだけでなく、制度にも大きく関与しています。

 しかし、日本の企業におけるICTの浸透は、進んでいるにもかかわらず、政府の調べでは、その用途として、米国では顧客獲得の為など「攻めのICT」が進んでいるにもかかわらず、日本では、業務効率化など「守りのICT」という「使い方」の違いが産業の底力の違いの大きな要因であるという分析もでています。

 私が担当するパートでは、この様なめまぐるしい時代の中で進化する企業のICT、つまりコラムのテーマでもある「Enterprise Evolution」と呼ばれるような時代にどのように企業ICTが進化し、また政策がそれを支援する内容をご紹介します。また、鳥インフルエンザに代表される「パンデミック対策」など、企業継続性、見えない脅威への対策のセキュリティなども取り上げて行きます。また併せて、顧客となるコンシューマサイドのICT状況、特に情報家電など、こちらも進展著しいホームネットワーク関連についても、併せてご紹介します。

グリーンIT・イノベーション

 社会的課題解決と社会の持続的成長をめざし、企業は社会的課題解決を目的とした事業開発(社会事業開発)を積極的に行い、その経営戦略にソーシャルイノベーションを取り込む動きが出てきている。

 そして、ICTを利用することで、環境負荷の軽減や電力コスト抑制等の社会的動機により、環境に配慮した製品設計・開発、データセンターの“グリーン化”に取り組み始めている。1997年12月に議決された京都議定書以降、企業は低炭素社会をめざし、企業のCSR(Corporate Social Responsibility)やGSR(Global Social Responsibility)の一環で、エコ製品の積極利用やリサイクルを始め、さらに、最近では気候変動やエネルギー枯渇、食糧自給等の社会的課題から環境保護による生物多様性の領域までカバーする企業も台頭してきている。2009年1月に誕生したオバマ政権では、これからの100年は、ICTとエネルギーテクノロジー(ET)の2大技術のイノベーションが、今後世界を牽引するとまで言われている。

 本稿では、このようなICTやETによるイノベーションを俯瞰的にとらえ、海外を中心とした企業の「グリーン」な先進的取り組みを中心に紹介し、社会の持続的発展を考えていく中で、ICTがどのような役割を果たし、今後どのような方向性が考えられるか検証していく。

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