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2009年6月掲載

ICT政策と企業のBCP(2):平成21年度 ICTに掛かる予算

 5月29日に政府の追加経済対策の裏付けとなる、過去最大13兆9300億円の補正予算が成立されました。身近な話で言えば、エコポイント(外部リンク)で国民に還元されるポイントの原資が成立されました。
補正予算の中には多くのICTに関する施策もあり、今回はその中で幾つかの内容を紹介します。

総務省の主要なH21年度ICT関係補正予算

 総務省では、テレコム関係の補正予算総額は約2760億円あります。大別すると表1の様になります

表1 総務省における、テレコム関係の平成21年度補正予算
表1 総務省における、テレコム関係の平成21年度補正予算
出所:政府関係資料

 「地域における情報通信インフラ整備」の中には、ブロードバンド・ゼロ地域解消の「地域情報通信基盤整備推進交付金」に約433億円割り当てられています。これは例年から有る交付金ですが、当初予算ベースで、平成19年が約57億円、平成20年度が約62億円(後に1次、2次補正予算で約105億を追加措置)であった事を考えると、その規模の大きさが想像できるかと思います。また、携帯電話の不感地域解消についても、約453億円がついており、一気にデジタル・ディバイドの解消が進む事が見込まれます。

 総務省の予算でもう一点注目すべきは「クラウド関係」と言えます。予算別に見ると、「電子政府・電子自治体の加速」において、クラウド・ネットワーク技術の研究開発等に約156億円、自治体クラウドの開発実証に約20億円が配分されています。
 クラウド・ネットワーク技術の研究開発のうち「セキュアクラウド」として、約30億円配分(外部リンク)されています。狙いとしては、今後の発展が期待されるクラウドコンピューティングですが、現時点では標準的な規約が無く、各社独自仕様で進めています。総務省としては、この点を「今後の市場の健全な発展を阻害しかねない」という懸念を持っています。また、現状サービスの信頼性や即応性(遅延時間)などにも問題があると考えており、実際、交通や金融等のミッションクリティカルな分野のニーズを十分に答えられていないという認識を持っています。その為、国際標準化の取り組みと共に、高品質・高信頼・省電力で使い勝手がよいクラウドの研究開発を目指し進められています。

文科省関連

 校内LAN整備は従来から何度も、普通教室への整備率100%を目指し計画されていましたが、なかなか進んでおらず、2008年3月現在で、小中学校が約60%、高校が約85%(全体で約63%)の整備率です。今回の補正予算では、これらを後押しする施策も盛り込まれていました。
文科省では「スクール・ニューディール」構想を掲げ、その一部に学校のICT環境整備として、約2087億円の予算が割り当てられ、地デジ(電子黒板含む)の整備に約667億円、学校のコンピュータ、校内LAN整備(公立学校/普通教室)に1420億円の配賦がされています。
今回の補正予算における各整備目標は、表2に示したとおりです。

表2 学校ICT環境整備事業の目標
表2 学校ICT環境整備事業の目標
出所:http://www.japet.or.jp/handlers/getfile.cfm/4,250,121,pdf

 今回の補正により、一気に公立学校のICT環境は進む可能性が出てきました。自治体への予算措置についても、学校ICT環境整備事業補助金は1/2の補助率(財政力指数0.5以下の離島・へき地の小中学校に対しては2/3)で、残りの1/2は自治体が費用を準備する必要がありました。しかし補助金とは別に「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」等により、残る1/2についても、手当される事が決まっており、現状では限りなく、自治体の負担は少なく済む予定です。
約14兆円という、あまりにも巨額な補正予算なので、その額だけで圧倒される事もありますが、ご紹介したようなICTの未来に繋がる内容が多く盛り込まれています。

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