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Enterprise Evolution
2009年7月掲載

次世代マイクログリッドの潮流(1)

 米オバマ政権が実施する景気対策の一環で、米財務省とエネルギー省はクリーンエネルギー(風力や太陽光等の再生エネルギー)の推進のために、約30億ドルの開発支援を実施すると発表した。(2009年7月9日) 国家レベルのインフラ整備で始まったスマートグリッドは欧米アジア圏で注目されている。日本では、2010年度から、東京工業大学、東京電力、東芝、日立製作所などが共同で「日本版スマートグリッド」実証実験を東工大キャンパスで行うことが発表されており、日本においてもスマートグリッドの導入検討がいよいよ始まるのである。米国では送電線の老朽化からインフラ整備で始まったスマートグリッドではあるが、果たして日本でも同じようにスマートグリッドを推進するべきであろうか。日本では、安定した電力供給がなされ、すでにスマートグリッドが実現されているといえる。

 クリーンエネルギーを使った電力供給は2050年の先進国温暖化ガス80%削減目標を実現していくためには、必要十分な取り組みではあるが、今後日本で取組むべきは、「スマートグリッド」よりもむしろインテリジェントな「マイクログリッド」であると考えられる。2009年7月2日、宮古島など10離島で太陽光発電のための実証実験を行うことが発表された。離島における次世代送配電ネットワークの構築を見据えた実証試験で、太陽光発電や風力発電とそれを蓄積するための蓄電池が設置されるという。

 日本では、マイクログリッドの研究開発はこれまでも行われてきた。最近では、家庭の発電と消費の最適化のため、ホームネットワークとの連携により、家電製品との連携の研究開発も進められているという。その一つが分電盤問題である。家庭で利用されている家電製品は交流電源であり、一方で、外部からの電力供給は直流電源となっていることから、このような従来の分電盤の見直しと共通化が検討されている。

 このように、日本ではマイクログリッドで安定した電力供給を行うための実証実験が非常に重要な意味を持っているといえる。多様なクリーンエネルギーを利用して、外部電力事業者が多様なエネルギーを利用することで安定した電力共有を行い、各家庭に送電されることが温暖化ガス削減の有効な手段と考えられる。次号では、このようなマイクログリッドで実現される社会を考え、日本が世界をリードしていくために取り組むべき環境エネルギー領域を考えていきたい。

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