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Enterprise Evolution
2009年9月14日掲載

スマートグリッドが生み出すMachine-to-Machine市場

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 ICTで既存の電力網に双方向性を取り入れることで、電力の流れを制御し、効率を高める次世代の電力供給システムとして、スマートグリッドは注目されているが、最近では、このスマートグリッドが家庭の家電を中心とした情報ネットワークにも影響を及ぼすことが米国を中心に注目されている。HEMS(Home Energy Management System)(図1)は、家庭の省エネや各種エネルギー(電力、自然エネルギー等の分散エネルギー)を家電情報ネットワークと配電網を利用して、最適化管理を行う。家電製品の管理だけでなく、生活関連サービス(防犯セキュリティ、防災管理、ヘルスケア管理等)への展開へも可能なHEMSは、スマートグリッドで電力の最適化管理を行うことに加え、その結果、家庭内の情報家電に送電される電力の流れも最適化され、その情報家電を利用する需要者の生活環境を担う防犯、防災、ヘルスケア管理も最適されることが期待される。低炭素社会の実現は、電力の最適化管理は当然のことながら、生活環境に深く入り込んでいる情報家電利用の最適化管理も重要となってくる。
図1:HEMS_Home Energy Management System
図1:HEMS_Home Energy Management System
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 米国を中心に、スマートグリッドは、ICT業界とエネルギー業界の融合が始まっているとも考えられる。2009年8月号でご紹介したように、エネルギー業界にICT業界ベンダーやサービス事業者がスマートグリッドソリューションを積極展開が始まっている。スマートグリッドネットワークを担うスマートグリッド機器を提供するIBMやCisco、電力利用状況を需要者に提供するマイクロソフトやGoogleの大手企業に加え、スマートメーター機器やモジュール、ソフトウェアを提供するICTベンチャーも台頭してきている。

 さらに、米国の主要通信事業者である、AT&T、Verizon、T-Mobile-USAは、スマートメーターベンダーと提携(AT&T:SmartSync、Verizon:Itron、T-Mobile-USA:ECHELON)し、スマートグリッド市場への参入を始めている。通信事業者は、スマートメーターをゲートウェイとするHEMSを新たな市場ととらえ、スマートグリッドで進む機器のインテリジェント化で実現するMachine-to-Machineに注目していることが考えられる。その中でAT&Tは、9月2日、米オースティンにemerging deviceを検証する研究所の設立を発表している。これは、携帯端末に加え、スマートメーターから始まる通信機能が搭載された機器の自社開発を積極的に行っていくことがいえる。emerging deviceとしての情報家電は、その先行例と考えられるが、そのネットワーク化が今後は現実的になってくることも想定され、通信事業者は、HEMSで期待される情報家電の最適管理やそれに関連する生活関連サービスにも重要な役割を担うことが期待できる。

 日本においても、HEMSで実現する家電のインテリジェント化は、今後も加速することが考えられ、情報家電メーカーと通信会社との協業により、エネルギー業界を新たな市場として、開拓していくことが期待される。

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