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2009年11月4日掲載

ICT政策と企業のBCP(5):
パンデミック対策と各種政府施策

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 急速な勢いで感染が広がっている新型インフルエンザ。今春、関西地域を中心に広がりを見せた際は、関西出張を控えるなど、影響が見られた。一時注目されたWHOのフェーズも11月4日時点ではフェーズ6 、いわゆる「パンデミック」を示すフェーズである。

 政府が出す新型インフルエンザ対策ガイドライン(平成21年2月17日)において、事業継続計画(BCP :Business Continuity Plan)における地震災害と新型インフルエンザの比較をしている。

事業継続計画における地震災害と新型インフルエンザの相違

項目 地震災害 新型インフルエンザ
事業継続方針 できる限り事業の継続・早期復旧を図る 感染リスク、社会的責任、経営面を勘案し、事業継続のレベルを決める
被害の対象 主として、施設・設備等、社会インフラへの被害が大きい 主として、人に対する被害が大きい
地理的な
影響範囲
被害が地域的・局所的(代替施設での操業や取引事業者間の補完が可能) 被害が国内全域、全世界的となる(代替施設での操業や取引事業者間の補完が困難)
被害の期間 過去事例等からある程度の影響想定が可能 長期化すると考えられるが、不確実性が高く影響予測が困難
災害発生と
被害制御
主に兆候無く突発する
被害量は事後の制御不可能
海外で発生した場合、国内発生までの間、準備が可能
被害量は感染防止策により左右される
事業への影響 事業を復旧すれば業績回復が期待出来る 集客施設等では長期間利用客等が減少し、業績悪化が懸念される

様々な点で違いが見られるが、新型インフルエンザでは、被害の期間が不確定な上、影響に地域性が無く代替施設など補完する事が困難な点が挙げられ、これまでとは異なる事業継続方法を考える必要がある。

 ガイドラインには「事業を継続する際の感染防止策の例」も併せて挙げている。

業務を継続する際の感染防止策の例(抜粋)

項目 地震災害 新型インフルエンザ
従業員の感染リスクの低減 全般 在宅勤務、職場内等での宿直の実施
  • 在宅勤務実施の為の就業規則等の見直し、通信機器等の整備を行う
通勤(都市部での満員電車・バス) ラッシュ時の公共交通機関の利用を防ぐ為の時差出勤、自家用車・自転車・徒歩による出勤の推進
外出先等 出張や会議の中止
  • 対面による会議を避け、電話会議やビデオ会議を利用する

 具体的な対策例として、在宅勤務や電話会議、ビデオ会議も挙げられるなど、ICTを活用する事が新型インフルエンザの対策には重要である事が伺える。

 いずれの対策も「人との接触を最小限にとどめる事で、感染リスクを低減する」事が狙いである。この考え方はCO2削減対策にも通じ、いわゆる「Green by ICT」と呼ばれる分野が、パンデミック対策にも活用出来るケースがある事を伺わせる。これについては、筆者の前回コラム(ICT政策と企業のBCP(4))の「ICTの利活用によるCO2削減効果の評価分野と利用シーン」をご参照されたい。
その中で「人の移動」が前述の対策例にあたるが、それ他「物質の電子情報化」は、店頭に出向く移動の減少を、「電子政府・電子自治体」は、役所への訪問を減らすことができる。

 このように、パンデミック対策は政府等の施策との関連性が伺える。例えば、「i-japan戦略2015」では、子育てや介護等と仕事の両立や障害者等の就労促進、個人の創造力の発揮、危機時の事業継続等の対策の為に、2015年までに在宅型テレワーカーを倍増し700万人にまで拡大する計画がある。総務省では、業務効率化・生産性向上による企業競争力強化のために「テレワーク環境整備税制」も創設している。

 パンデミック対策と言えば、危機対策の色合いが強いが、政府等の様々な施策を注意深く見れば様々な支援等もあることがわかる。同じ投資なら危機対策+環境対策+競争力強化と併せて実施しする事を計画し、一粒で2度3度おいしい進め方をされてはどうか思う。

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