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InfoComアイ
1996年8月掲載

テレコムほど素敵な商売はない

  1. 競争=マルチメディア時代は、顧客・市場が選択権を持っている。
  2. ネットワークの利用増によるパイ(市場規模)の拡大は、料金値下げと経営合理化のショックの緩和を可能にする。
  3. 情報ネットワーク社会において、電話会社の社会的責任は極めて重大である。
  4. あらゆる企業、家庭や個人に対して、電話回線やインターネット・アクセス手段を持つメリットを最大限に活用すべきである。
  5. ビジネス機会と社会的貢献の両面から、テレコムは最も素晴らしい産業の1つである。

 1950年代に米国で好評を博したミュージカルに「ショーほど素敵な商売はない」というのがある。最近のわが国でも、CATSやレ・ミゼラブルなど、米国、英国製のミュージカルがロングランを続けている。
 広帯域の映像時代を迎え、光ファイバー・ケーブルやディジタル直接衛星放送(DBS)により数十チャンネルのビデオ番組を楽しむようになると、世界の映画市場を席けんしているハリウッド映画もこれに加わることになろうか。
 マルチメディア時代の花形は「コンテンツ(情報の内容)産業」であるといわれて久しいが、独創性が勝負のハイリスク・ハイリターンの世界であり、電話会社はもとより、モノづくりではならしてきたが、集団的行動様式が濃厚な日本人自体が不得手な分野だといえようか。

 しかし、マルチメディア/インターネット/ディジタル社会では、コンテンツであれ、電子商取引であれ、イントラネットであれ、在宅勤務であれ、情報は音声、データ、画像、映像のいずれにせよ、すべて放送や衛星も含めたテレコム・ネットワークの中で運ばれる。
 電話会社は、直接加入者と結ぶ地域電話会社やセルラ携帯電話事業者であれ、間接的にサービスを提供する長距離電話会社などであれ、今や文字通り、あらゆる企業、教育・医療・行政機関、家庭・個人と情報のパイプを持っている。
 高校生や大学生も最近ではポケベルからPHS(簡易型携帯電話)にコミュニケーション手段をレベルアップしはじめた。
 プライベートであれ、ビジネスであれ、「いつでも、どこでも(anytime, anywhere)」通信が、技術革新と競争の進展により急速に実現しつつある。
ところが在来の電話会社はこの素晴らしいビジネス・チャンスをモノにすることに成功していないようだ。

  1. 競争時代は、独占時代と異なり、顧客=市場が選択権を持っており、実際及び潜在的なニーズを様々なユーザーや利用局面から吸い上げ、それを経済的な料金で提供していくことが競争=勝負のポイントである。
  2. ネットワークの利用が増えれば(例えば、現在1日あたり、1加入あたり、20分しか利用されていない電話の利用を30分に増やす−米国では現在約50分)、米国、英国と比較してかなり割高な料金値下げも可能となるし、コスト削減のための経営合理化のショックも緩和できる。
     新サービスの開発、多様なパッケージ料金、利用アプリケーションの開発、販売・保守体制の整備など、業界をあげてパイ(市場規模)を拡大することに取組む必要がある。そのための努力が著しく不足していると考えられる。
  3. 情報ネットワーク社会において、電気通信インフラを受持つ電話会社の社会的役割と責任は極めて重大である。
     多様で高品質のサービスをできるだけ低料金で迅速に提供することに総力をあげるとともに、国民経済及び他の諸産業の発展、資源・環境、高齢化などの地球的規模の問題、教育・医療への貢献、発展途上国への支援などの社会的使命にも積極的に取組むべきである。
     電話料金は、今やあらゆる価格体系の中で最も重要である。

 あらゆる企業や家庭、将来的には個人と双方向の通信手段として有線または無線の電話回線やインターネット・アクセス手段を持っていることは、何と素晴らしいことではないか。このメリットをフルに活用すべきである。
 ビジネス機会と社会的役割の重要性の点から、テレコムは今や最も素敵な産業である。

取締役 海外調査部部長 堀 伸樹
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