ホーム > Global Perspective 2011 >
Global Perspective 2011
2011年12月14日掲載

COP17:Google Earthで見る「気候変動問題」〜ICTと環境問題を再考する

グローバル研究グループ 佐藤 仁
[tweet]

 2011年11月28日から12月9日まで、南アフリカのダーバンにて「第17回 国連気候変動枠組み条約締約国会議 (COP17)」が開催されていたことは周知の事実だ。今回のCOP17は、2013年以降の温暖化対策の枠組み「ポスト京都議定書」の行方をめぐって日本だけでなく世界中からも注目されていた。

 COPや環境問題については様々なところで報じられているので、本稿では、COP17においてNGO団体が気候変動問題の啓発手段としてGoogle Earth(グーグルアース)を活用していることに着目してみたい。

Google Earthビデオツアーの活用

 環境系NGOの「International Rivers」「Friends of the Earth International」が、世界のダム建設が気候変動悪化に繋がっていることを紹介するために、Google Earthを活用したビデオツアー「Wrong Climate for Damming Rivers 」(下記動画)を作成していると、2011年11月28日のナショナルジオグラフィックが報じている。
本動画は、COP17の会場において公開された。

【参考動画:Wrong Climate for Damming Rivers(2011年)】

 12分程度の動画を見て頂くとわかったと思うが、環境問題と気候変動に与える影響が非常によくわかる。アフリカ、ヒマラヤ、アマゾンのダム建設で想定される気候問題をシミュレーションしており、問題点が明快でわかりやすく伝わってくる。ダム建設、水不足、地球温暖化、気候変動問題に関しては、ナショナルジオグラフィックスや、各NGO、COP17のサイトに詳細が紹介されているので、論はそちらに任せたい。

 今回、このビデオツアーを開発したアイルランドのソフトウェア開発者David Tryse氏は、今までも環境団体、NGO、科学者ら向けにGoogle Earthアプリケーションを開発してきた。彼も述べているようにGoogle Earthは、このような環境問題をビジュアルとして世界にアピールするのに非常に優れたツールである。世界中の人が高解像度の衛星画像を活用したビデオツアーを通じて、環境問題の意識を高めることができる。

 Google Earthは非常に利便性も高いツールである。Tryse氏も以下のような具体例を挙げてGoogle Earthの有用性を強調している。

"If a logging company claims there is no deforestation next to an important national park, then anyone can 'fly in' to verify this,"
(木材会社が重要な国立公園での森林伐採に証拠がないと反論してきたとしても、誰でもGoogle Earthを使えば本当かどうか確認できてしまう。)'fly in' とはGoogle Earthの「Fly to機能」と状況が上空から見える(fly)をかけて表現している。

 また本プロジェクトに関わっているButler氏は以下のように述べている。

"Before Google Earth, there was really not a good way to do this. It's a very powerful way to convey a story. Maybe you would have had satellite pictures, but I'm sure the process would have been a lot more costly. Google Earth has made it a lot easier."
(Google Earthが登場するまでは、このようにビジュアル化して伝える強力な手段がなかった。衛星画像では物凄く費用が高くなっていただろうけど、Google Earthのおかげでとても簡単にビジュアル化して情報発信できるようになった。)

 2005年に登場したGoogle Earthは、解像度も高く、画像データも豊富なことからニュースでの映像で衛星写真として最近ではよく利用されているからお馴染みだろう。Google Earthは、過去にも軍事施設、政府機関が衛星から見えてしまうことや、「日本海(Sea of Japan)」の表記方法について問題になったこともあったが、改めてGoogle Earthの利便性と有用性を再認識させられる映像であった。

 気候変動問題に関しては、COP以外にも”気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)”「IPCC」がお馴染みである。2007年に第4次評価報告書が発表された。第4次評価報告書では、スーパーコンピュータが活用されたことは有名であるが、Google EarthもIPCCの「気候変動の可視化」において活用されていることは特筆すべきことだ。

GoogleとCOP15

 2009年にコペンハーゲンで開催されたCOP15の際には、デンマーク政府はGoogleと協力し、COP15開催期間中に「Raise your voice during COP15」と称して、ネットでの情報発信に対する取組みを発表したことは記憶に新しい。

 COP15開催期間中にタウンホールで行われる討論会を世界に向けて中継を行ったり、COP15の専用YouTubeチャンネルを開設し、提出された疑問は世界中のネット経由で報じられた。

 また、Google自身もCOP15に合わせて「Climate change in Google Earth」というサイトを開設した。ゴア元副大統領(地球環境問題に積極的に取り組んでおりIPCCと共に2007年にノーベル平和賞を受賞したことは有名)やシュワルツネガー元カリフォルニア州知事らの多くの動画を提供した。

ICTと環境問題

 今後も、このような環境問題の重要性のアピールのために、Google Earthを活用することによって世界の多くの人に情報を発信することによって環境問題を考えるきっかけを与えることに期待したい。

 ICT業界では省電力や製品リサイクルなど環境問題に配慮された製品、サービスが開発されている。世界ではITUが中心になって気候変動問題とICTについての取組みを行っている。日本でも「ICTを活用したグリーン化」を掲げてCO2排出削減に向けて総務省が研究会を開催し、官民で地球温暖化問題への対応に向けた対策が講じられている。

 一方でGoogle EarthのようにICTというツールを活用して環境問題を世界の人々にアピールできる。このような啓蒙活動に今後もICTは多いに利用されるだろう。

地球温暖化、気候変動の問題に対してICTは様々な角度から関与できるのだ。

【参考動画:ITUによる「Saving Energy: Episode from "ICTs for a Better Future"」(2011年)】

*本情報は2011年12月10日現在のものである。

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。