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Global Perspective 2012
2012年1月6日掲載

パキスタン:モバイルラーニング「from text books to telephone」:ユネスコの取組み

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2011年12月12日から16日まで、国連の機関であるユネスコ(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO・国際連合教育科学文化機関)では「Mobile Learning Week」として、携帯電話を活用した教育(モバイルラーニング)に関するシンポジウムが開催された。携帯電話が教育分野で果たす可能性について地域ごと、テーマごとに議論された。同会合での資料はユネスコのサイトからダウンロードできる。

パキスタンでの取組みと「from text books to telephone」

 ユネスコのイスラマバード事務所とNokiaパキスタンは、2011年12月24日に「Mobile Learning Project for Teachers Professional Development」を開始した。本プロジェクトは、ユネスコのパートナーであるパキスタンの教育系NPO団体「AGAHI」によって実行される。パキスタン地方部の公立学校の教員を対象に携帯電話を活用してビデオ教材へのアクセスや動画のダウンロードなどができる。(但し、パキスタンではまだ3G網が導入されていないから、動画のダウンロードは決して高速ではない)それらを通じて地方にいても都市部と同じ教育を提供できるようになることが目的である。

 日本人はユネスコの活動というと、世界遺産の登録と保護という「文化の多様性の保護および文明間対話の促進」の活動が想起される。もう1つの重要な活動として「万人のための基礎教育」があり、識字率の向上や義務教育の普及のための活動を行っている。今回のモバイルラーニングの取組みもその一環である。

 携帯電話は新興国でも非常に普及してきている。携帯電話を活用した「モバイルラーニング」は今後も世界中で注目されていくだろう。ユネスコのような国際機関と民間企業、NPO団体が協力してモバイルラーニングを推進していく取組みは今後も国際社会において重要になっていくだろう。携帯電話は教育のツールとしても活用される生活インフラになってきている。今回のユネスコのモバイルラーニングのシンポジウムのサブタイトルもfrom text books to telephone(テキストブックから携帯電話へ)である。

 教育分野での携帯電話の活用がますます重視されてくるだろう。そしてこれからは携帯電話を持っていない人とのデジタル・デバイド解消に向けた取組みや電気のないエリアでの活用に向けた対策も必要になるだろう。今後もモバイルラーニングの普及に向けた国際機関、民間企業、NPOの積極的な取組みに期待したい。

パキスタンと携帯電話事情

 パキスタンは人口約1億8,000万人で世界6位(中国、インド、アメリカ、インドネシア、ブラジル、パキスタン)の人口で日本よりも多い。識字率は、約57%である(外務省、2008年)

 パキスタンの携帯電話事情について簡単にみてみたい。
携帯電話加入者約1億1,000万人。普及率約66%。年間約10%成長している。
3Gはまだ導入されていない。(2011年11月現在)

1.Mobilink
 ・シェア約30.4%
 ・エジプトOrascomグループ 

2.Telenor Pakistan
 ・シェア約24.8%
  ・ノルウェーTelenorグループ

3.Ufone
 ・シェア約18.8%
 ・パキスタンテレコムグループ

4.Warid Telecom
 ・シェア約14.9%
 ・UAEのWaridグループ

5.CMPak (Zong)
 ・シェア約10.8%
 ・チャイナモバイルグループ

 今回のモバイルラーニングの取組みがパキスタンでの基礎教育普及、平和と復興に繋がることを祈願している。

【参考動画】
AGAHIによる今回のパキスタンでの取組み紹介ビデオ(AGAHI)

【参考動画】
Nokia Education Delivery Software紹介ビデオ(Nokia)

*本情報は2012年1月4日時点のものである。

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