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Global Perspective 2012
2012年3月12日掲載

コロンビア〜量から質への転化に向けて

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2012年2月28日、モバイル業界団体GSMAが毎年MWC(Mobile World Congress)時にモバイル通信事業の発展に貢献した政府を受賞している。2012年はコロンビア政府が受賞した。
HSBCが提唱した「BRICs」の次に成長が期待できる「CIVETS」(コロンビア、インドネシア、ベトナム、エジプト、トルコ、南アフリカ)の1国であるコロンビアの携帯電話事情について見ていきたい。

 受賞理由として、コロンビア政府がモバイル産業を通してラテンアメリカの中において経済成長を発展させ、競争力のある市場に育てたことが挙げられている。またモバイルを社会と経済の発展の中核に位置付けていること、新たなコミュニケーションツールとして活用している他に、ラテンアメリカにおいて初めて2.6GHzの周波数帯域の割当を行ったことも挙げられている。

 約4,600万の人口(中南米ではブラジル、メキシコに次ぐ3位)をかかえるコロンビアは携帯電話普及率も100%を超え、10年前では考えられなかったような急成長を遂げた。2001年には携帯電話加入者は300万人しかいなかった。同国の政治の安定化とそれに向けた政府の果たす役割が大きかった。

 スマートフォンの利用者も増えてきて、利用者の約20%がスマートフォンを利用していると言われている。しかし、3Gの普及率は約9%の約420万加入とまだ決して多くはない。携帯電話の90%以上が2Gである。また多くがプリペイド方式である。南米では100ドル程度の廉価版スマートフォンが非常に人気あるが、3G利用が行き届いてないことから、まだスマートフォンでのアプリや動画などのダウンロードには適していない。
携帯電話の盗難、スリも多く注意喚起および被害にあってしまった場合に備えたパスワードの設定を促すビデオが放送されていた。

 以下がコロンビアの携帯電話事業者である。同国には市場参入への外資規制がないので外資資本のグループ会社が主流である。

(表1)コロンビアの携帯電話会社

会社 加入者 シェア 備考
Comcel 約3,122万 67% America Movilグループ
Telefonica Moviles
Colombia (Movistar)
約1,072万 23% Telefonicaグループ
Tigo 約466万 10% Tigoグループ
Une-EPM NA NA

2010年6月2.6GHzの免許取得。
2011年11月LTE導入を発表。

 周波数は各社で以下のように割り当てられている。かつて、800MHzをTDMA、CDMA2000としてComcel、Movistarに割り当てられていたが、現在は利用しておらず、両社ともGSMに統合している。

(表2)コロンビア各社の周波数割当

帯域(MHz) Comcel Telefonica Moviles
Colombia (Movistar)
Tigo Une-EPM
2600 - - - LTE(予定)
2100 - W-CDMA
HSDPA
W-CDMA -
1900 - GSM
GPRS
GSM
GPRS
EDGE
-
850 GSM
GPRS
EDGE
W-CDMA
HSDPA
- - -

 20年前までコロンビアは誘拐、殺人、麻薬で悪名高い国家で、1990年代には10万人当たりの殺人事件発生率が世界最悪であった。しかし現在では治安も安定している。豊富な天然資源、人材を活用し経済も発展してきている。観光客も増加し2011年には約170万人がコロンビアに観光で訪れている。

 日本との貿易も盛んで日本からは工業製品を多く輸出し、コロンビアからはコーヒー(コロンビアからの輸入の72%がコーヒー)を輸入している。
2011年9月には、野田首相が総理就任後初の首脳会談をコロンビアのサントス大統領と行った。両国は、EPA(経済連携協定)交渉に向けた共同研究を開始することで合意した。

 貿易面でもコロンビアは北米と南米、大西洋と太平洋の接続点に位置している「地の利」を活かし港も発展している。コロンビアを経由して第三国への輸出ができる輸出基地としても重要な拠点になりうる。

 GDPも毎年約5%の成長をしている。世界金融危機でも影響は少なく回復も早かった。ますますコロンビアは日本にとって重要な国になってくるだろう。

 コロンビア政府のICTへの取組として「Vive Digital」というプランがある。コロンビアでのブロードバンドやモバイルの普及、教育、医療へのICTの活用、雇用促進を目指しており、インターネット接続を2014年までに、現在の4倍の880万にすることをゴールに設定している。

 コロンビアの携帯電話の普及率は100%を超えた。今後は普及した携帯電話を活用してどのようなサービスを提供していくかが求められてくる。今までのような「量の拡大」から「質の高い発展」を目指していく段階に来ている。

【参考動画】
GSMA受賞後に紹介されたコロンビア政府の取組みを紹介するビデオ(2012年)

Vive Digital紹介ビデオ(スペイン語)(2010年)

※本情報は2012年3月7日時点のものである。

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