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Global Perspective 2012
2012年4月4日掲載

M-Ticket(モバイルチケット):携帯電話と交通機関の親和性再考

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 携帯電話と交通機関の親和性と利便性について改めて考えてみたい。

携帯電話料金から引き落とされるイタリアのM-Ticket

 2012年3月29日、イタリアの通信事業者TIM、Vodafoneイタリア、Wind、3イタリアの4社はATAFが運営する公共交通機関のチケットがSMSで購入できるサービスをフィレンツェにて開始したことを発表した。イタリアでの公共交通機関でのM-TicketサービスはATAFが初となる。

 利用者は交通機関に乗る前にチケットを携帯電話のSMS経由で購入することができる。SMSを受信後、その画面に発行時間や有効期限などが表示されており、それを掲示することによってチケットとなる。チケットは1.2ユーロ(約120円)で、利用者の携帯電話料金から引き落とされる。プリペイドの場合は残金がなければチケットの購入はできない。利用者は交通機関に乗る前に購入しておく必要がある。システムはエリクソンが構築している。

 利用者にとっても小銭の持ち合わせがなくてもチケットが購入できるので便利だろう。交通機関にとっても料金支払いの手段が増えることによって利便性の向上と安全性の確保につながるだろう。
イタリアの通信事業者らはこのようなマイクロペイメント市場は今後も大きなビジネス・チャンスの可能性を秘めていると期待を寄せている。ATAFと通信事業者間のビジネスモデルは明らかにされていないが、おそらくチケット代金の何パーセントかを通信事業者に課金代行手数料として支払っているのだろう。

 M-Ticketサービスがイタリア全土に拡大していくこと、それらが通信事業者の新たなビジネスとして成長するのか注目していきたい。

インド:M-TicketとSMSを活用した鉄道関連の情報配信

 2011年7月、インドの国有鉄道「Indian Railway」が携帯電話でチケット購入を行い、SMSを受信してそのSMSをチケットとして提示することによって乗車ができるサービスを開始したと報じられた。

 Indian Railwayでは、以前からSMSでの鉄道運行情報、時刻表、電車情報、運賃情報をSMSで通知するサービスを提供していた。利用者はSMSで自分の知りたい情報の番号にアクセスしてSMSを受信して情報を入手することができるサービスである。

 Indian Railwayはアメリカ、ロシア、中国に次ぐ世界4番目の鉄道でインド全土に7,500の駅があり、1日約3,000万人を輸送している(JR東日本の2010年度一日平均輸送人員数は約1,659万人)。インドは世界2位の人口(約12億人)を持ち、世界7位の面積(日本の約8.7倍)の大国である。まだ鉄道が未整備な地域も多い。今後も鉄道拡大とともに、モバイルによるサービスも拡大の余地は多いにある。

(図1)一般的なインドの駅とプラットフォーム(筆者撮影)
まだSMSをチケットとして活用している人は見当たらなかった。

(図1)一般的なインドの駅とプラットフォーム

まだSMSをチケットとして活用している人は見当たらなかった。

携帯電話と交通機関

 日本でも携帯電話による電車や公共交通機関の情報入手に非常によく利用されている。ルート検索、乗換案内、運賃案内から終電情報まであらゆる情報を携帯電話で調べることが可能である。駅やホームでそれらの情報を検索している人も多いことだろう。さらにモバイルSuicaなど発達しており、携帯電話さえあれば電車に乗降できる。

 日本では当たり前のようになった携帯電話による電車や公共交通機関の情報配信サービスや「モバイルSuica」のようなアプリも海外ではまだこれからという所は非常に多い。
海外の鉄道会社、サービスプロバイダーは日本での経験や事例から多く学ぶことができるだろう。また、「交通機関のチケット代を電話料金と一緒に支払うことができるイタリアの事例」は一考に値するのではないだろうか。

 手のひらで欲しい情報が即時に入手できるし、チケットにもなる利便性の高さから携帯電話と交通機関での利用は非常に親和性が高い。これは日本だけでなく、世界共通であろう。今後も携帯電話を活用した多くの交通機関向けサービスが登場してくることが期待されている。日常生活において携帯電話はまだまだ多くの可能性を秘めている。

【参考動画】
Indian RailwaysのSMSサービス紹介(2011年)

*本情報は2012年4月2日時点のものである。

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