マレーシアの通信事業者Maxisが2012年5月3日、同社が運営する「MYLAUNCHED Portal」でヘルスケアコンテンツの提供においてマレーシア国立循環器病センター 「Institut Jantung Negara(IJN)」と提携したことを発表した。
IJNとの提携による健康情報サービスの配信
マレーシアのMaxisは2010年9月から健康ポータル「Pocket Doctor」においてヘルスケア、健康に関する情報を提供している。また「MYLAUNCHED Portal」においても健康情報、ヘルスケア関する情報提供サービス「MLP Health」を行っている。
今回IJNとの提携によって、利用者は週に3回、IJNが発行する健康情報、ダイエット、運動、病気、心臓疾患などに関する情報をSMSで受信することができる。利用料金は月2リンギット(約50円)または1通につき0.20リンギット(約5円)である。
今回のMaxisとIJNとの提携でSMS収入のうち10%をIJNの患者らを支援する機関へ寄付される。
(図1)IJNが提供するMaxisのヘルスケアSMSサービス

(出典:Maxis提供)
マレーシアの肥満事情
2011年3月のレポートでマレーシアの肥満事情について紹介した。
2008年10月の報道によると、マレーシア成人の43.1%が平均体重をオーバーしており、3人に1人が高血圧、5人に1人が高コレステロール血症である。肥満が原因となっている心臓疾患の患者数は、2003年の3万7,284人から2006年は18%増の4万4,201人となり、心臓疾患による死者数も、同期比36%増の3,673人となったという。2010年12月の世界保健機関(WHO)の調査によると、マレーシアの成人の肥満率がアジアで6位(東南アジアでは1位)である。現時点でもそれ程大きく改善している訳ではない。非常に暑くて蒸しているから甘くて冷たいものが欲しくなる。外での運動をしたい気分にはならない。食事も中華、マレー、インド料理が混在し脂っこいが美味しい。たしかにクアラルンプールの街では多くの肥った方を見かける。女性にも肥った方は多い。
マレーシアでの肥満対策への取組み(1):
「SASUKE MALAYSIA」
2011年5月に、日本のTBSスポーツバラエティ番組『SASUKE』が、マレーシア政府青年スポーツ省(KBS)が肥満改善支援を目的として「SASUKE MALAYSIA」を開催、放送した。同番組はは2012年も開催された。マレーシアは1年中暑い。暑くて運動するのも躊躇するようなマレーシアでは、一般市民、まして肥満な人にとっては、いきなり「SASUKE」のようなハードなスポーツは難しいだろうが、「SASUKE」に刺激され、少しずつでも運動、体力作りを行う人が増えてマレーシアの肥満改善の一助になるかもしれない。
「SASUKE」はシンガポールでも現地版の制作が決まっている。日本のコンテンツ輸出がマレーシアの肥満対策として受け入れられているのは非常に興味深い。
マレーシアでの肥満対策への取組み(2):
学校売店でのチョコ&キャンディー販売禁止
10年前の調査では肥満と判定された学生の比率は21%だったが、2012年は26%に増加している。2012年1月の報道によると、マレーシア教育省では肥満児が増加している問題を受けて、学校売店ガイドラインの改訂版を発表した。学校売店で販売できる食品は227種類ある。マレーシア料理として一般的なチキンライスやナシレマ、チャーハン、カリーミー、ヌードルスープ、サンドウィッチ、スパゲッティ、フライドチキンなども含まれているが、量とカロリーは制限された。更にキャンディー、チョコレート、着色飲料、炭酸飲料などは学校での販売を禁止。インスタント麺、アイスクリーム、ハンバーガー、加糖飲料などは禁止しないが推奨しない食品に分類した。
またマレーシア教育省では肥満指数(BMI)調査を年に2回に増やす方針も示した。
肥満対策に向けてICTはあくまでも補助的ツール
通信事業者Maxisが提供するヘルスケアコンテンツ以外にもマレーシアではヘルスケアコンテンツは人気がある。スマートフォンのアプリなら世界中のアプリがダウンロードできるし、マレーシア人は英語のアプリ、コンテンツでもほぼ問題なく利用できる。人々の健康に対する意識が高くなってきているのだろう。
しかし、ICTはあくまでもモチベーション向上や健康管理の手段として利用するだけである。もちろんSMSで健康に関するTipsを送られてきて健康管理の意識を向上させることも重要である。しかしスポーツ、食事制限といった基本的なことをしっかりやることの方が重要であることは言うまでもない。
【参考動画】肥満は心臓に負担をかけるから危険です、というマレーシア政府作成の広告。
【参考動画】「SASUKE MALAYSIA」(2011年)
種目は日本の番組とほぼ同じ。
(参考)
*本情報は2012年7月2日のものです。