2012年9月26日、アメリカのInternet Retailerが、2012年のアメリカにおけるモバイルコマースの売上高が前年比98.6%増の208.5億ドルに達するという予測を公表した。アメリカでのモバイルコマースの概要を考察していきたい。
アメリカで拡大するモバイルコマース: AmazonとAppleがけん引
アメリカのeコマース全体の売上に占めるモバイルコマースの割合は、2011年の5.4%から2012年には9.2%に上昇すると予測している。
また、同社ではモバイルコマースでの売上トップ400も発表している。なおトップ10は以下の通りで、この上位10社の売上高合計でモバイルコマース売上の約40%の81.9億ドルである。
そして1位のAmazon.comが約40億ドルで、2位のAppleが11.7億ドルでこの2社だけで、モバイルコマース売上全体の約4分の1を占めている。3位以下にはホテルや飛行機チケットなど旅行関連が多いのも特長である。
(表1)アメリカのモバイルコマース売上高内訳

(Internet Retailer公開のデータを元に筆者作成)
【アメリカのモバイルコマース売上トップ10】
- Amazon.com
- Apple
- Marriott International
- Orbitz LLC
- QVC
- Wal-Mart Stores
- Hilton Worldwide
- easyJet
- InterContinental Hotels & Resorts
- Expedia
(ebayは含まれていない)
モバイルコマースを後押しするスマートフォン、
タブレットの普及:iPadがけん引
アメリカでのモバイルコマースの売上高の急増の背景にあるのは、言うまでもなく、ここ数年での急速なスマートフォン、タブレット端末の拡大である。
それまでのアメリカの携帯電話(フィーチャーフォン)では、物販やデジタルコンテンツ(ゲームや音楽、電子書籍など)を購入できるようなものでないシンプルな携帯電話端末が多かった。
2007年にiPhoneが販売されたのを皮切りにスマートフォンやタブレット端末が急速に普及していった。それに伴って、人々はそれらスマートフォン、タブレット端末で商品やデジタルコンテンツを購入するようになった。スマートフォン、タブレットは掌で楽しめるパソコンのようなものである。2012年2月時点で、アメリカの成人の46%がスマートフォンを所有しており、2012年6月には携帯電話保有者のうち54.9%がスマートフォンを所有しているとの調査結果がある。そして2012年8月時点でアメリカの成人のうち25%がタブレット端末を保有している。スマートフォンとタブレットの保有者数はこれからも増加し続けることが想定される。
特にiPadからのモバイルショッピングが盛況である。2012年4月にRichRelevance社が公表したデータによると、モバイルショッピングを行うデバイスのうち、iPadが68%と大きな割合を占めている。また、iPadユーザの平均購入価格は158ドルで、デスクトップPCでの平均購入価格153ドルよりも高い。(なお、iPhoneの平均購入価格は104ドル、他端末では105ドルである)さらにiPadユーザは、購入単価が平均52.66ドルで、デスクトップPCユーザの21.86ドルより遥かに高い。
なお、アメリカではiPhoneが8,500万台、iPadが3,400万台、既に販売されているとの報道が2012年8月にあった。
これからもまだまだ成長が期待されるモバイルコマース
スマートフォンやタブレット端末の急速な拡大に伴って、モバイルコマースの利用者、売上高も急増しているが、それでもまだアメリカのeコマース売上高全体に占める割合は10%未満である。アメリカではまだパソコンからのネットショッピングが主流である。
スマートフォンやタブレット端末はこれからも増加していく傾向にあることからモバイルコマースの売上増加は更なる成長が期待できる。まもなく大量の消費が期待できるクリスマスシーズンである。
現在、アメリカでのモバイルコマースは、iPadからAmazon、Appleでの買い物が大半を占めている。今後は更なる端末や対応ショップサイトの拡充にも注目していきたい。
(表2)アメリカにおけるeコマース売上高の推移(PC、モバイル合計)

(出所:U.S.Census Bureaus公表資料(2012年5月)を元に筆者作成)
【参考動画】
*本情報は2012年10月4日時点のものである。