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2012年12月7日掲載 |
2011年11月、インドVodafoneがインドのICICI銀行と提携してモバイル送金・モバイルマネーサービス「m-pesa」を開始することを発表した。「m-pesa」はVodafoneグループがケニアで提供しているモバイル送金と同じサービス名である。 グローバリゼーションが進む現代社会の途上国におけるモバイル送金について考えてみたい。 途上国では社会インフラになっているモバイル送金モバイル送金「m-pesa」はケニアで2007年に開始された。銀行口座を持たない人でも携帯電話を活用して送金、受金ができる。銀行口座を持たない人が多い新興国では人気があり、アフリカだけでなく、中南米でも社会インフラになりつつある。 フィリピンでは2004年から現地通信事業者Smart、Globeからモバイル送金は提供されている。現在では世界中に出稼ぎに出ているフィリピン人が母国に送金するプラットフォームとして活躍している。フィリピン経済は昔から海外に出稼ぎに出ている移民労働者によって成立している。アメリカ、中東(サウジアラビア、UAE、カタール)やアジア(香港、シンガポール)への出稼ぎ労働者と彼らからの送金は重要な国家の収入源である。いわゆるOFW(Overseas Filipino Worker)やGlobal Filipinoと呼ばれる人々が、全世界に約1,250万人いる。フィリピン経済にも大きく貢献しており、OFWからの送金は、2010 年は前年から8.2%増の187億6,300 万ドルとなった(モバイル以外の送金含む)。 「送金世界1位」の在外インド人からの送金このように海外に出稼ぎに出ている人からの送金はその国の経済に大きな影響を与える。インドを見てみると、海外に住んでいる「在外インド人(Non-Resident Indians:NRI)」や「インド系移民(Persons of Indian Origin:PIO)」が全世界に約3,000万人いると言われている。日本にも約2万人のインド人が住んでいる。東京の江戸川区や江東区にはインド人のコミュニティがある。世界銀行によると、2012年に海外からインドへの送金は700億ドルに達し、途上国の仕向け先1位を記録した(注1)。2011年は640億ドルでGDPの3%近くを占めていた(携帯電話以外からの送金含む)。
(図1)インドのVodafoneストア、町の小売店
![]() 銀行口座への送金は貯蓄という新しい習慣へインドVodafone、インドAirtelのモバイル送金は携帯電話番号への送金だけではなく、銀行口座を指定しての送金も可能である。フィリピンで提供されているモバイル送金も同様に携帯電話番号宛だけでなく、銀行口座への送金も可能である。従来の携帯電話番号宛への送金の場合、キオスクのような店舗に行って送金されてきたお金を受け取りに行く。つまり手元にはお金が入るが、入ったお金を使ってしまい、手元に残らないことが多い。銀行口座を持っている人は銀行口座に送金してもらうことによって、そのまま貯蓄につながることになる。必要な金額を必要な時に銀行から下すことによって、残ったお金は銀行に貯金しておくことができる。そして貯金することによって利子もつく。お金を貯めることによって、教育費など様々な投資に回すことができるようになる。 グローバル時代のモバイル送金現在はグローバル化(グローバリゼーション)が高度に進展している。グローバリゼーションの特徴は、「世界的な規模での人・物・金・情報の移動」と「新興国の台頭」である。国境を越えて人が移動することによって、付随する物、金、情報も世界規模で瞬く間に移動する。海外に出稼ぎに行っている人が自国に送金することによって、世界の経済発展と活性化に貢献するモバイル送金はグローバリゼーションの象徴である。 一方で、途上国ではモバイル送金は社会のインフラになりつつあるが、モバイル送金を利用できる人はまだ限られている。「携帯電話を持っていない人」、「送金してくれる相手がいない人」は途上国に多数存在している。 【参考動画】インドAirtelの「airtel money」の広告 注1 2012年11月20日世界銀行発表。2012年の公式な送金の仕向け先上位国は、インド(700億ドル)、中国(660億ドル)、フィリピン及びメキシコ(各240億ドル)、ナイジェリア(210億ドル)。 *本情報は2012年12月5日時点のものである。 |
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