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Global Perspective 2013
2013年1月8日掲載

イスラエル:サイバーセキュリティ人材育成によるDigital Iron Dome構築

(株)情報通信総合研究所
グローバル研究グループ
佐藤 仁
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イスラエルのネタニヤフ首相がイスラエルでの新たなサイバーセキュリティ人材育成プログラムのオープニングセレモニーに参加した(※1)。

「Digital Iron Dome」構築に向けて

イスラエルでは16歳から18歳を対象にしたサイバーセキュリティ人材育成のプログラム『Magshimim Le'umit』が開始された。そのオープニングセレモニーに参加したネタニヤフ首相は、サイバーセキュリティの重要性について語り、同国はイランやその他多くの国からサイバー攻撃を受けており、サイバースペース防衛はイスラエルにとって死活問題であること、「Digital Iron Dome」の構築が必要であることを述べた(※2)。サイバー攻撃を受けている国の名前をあげて、サイバースペースを国家として防衛していく意志があるということをイスラエルは世界に訴えている。

Iron Dome(アイアンドーム)とはイスラエル国防軍が開発した防空システムである。イスラエルは周辺国と紛争が絶えない。そのため多くのロケット弾による攻撃を受けている。Iron Domeはそれら空からのロケット攻撃を迎撃するための防空システムである。昨年末のガザ地区からの攻撃時にも利用された。
 今回はそのIron Domeのサイバー版として「Digital Iron Dome」構築の必要性をイスラエルは強調している。イスラエルでは1日に数百万のサイバー攻撃を受けていると以前にスタイニッツ財務大臣が述べていた(参考レポート)。愉快犯のような攻撃から大規模DoS攻撃まで様々なサイバー攻撃を受けているのだろう。今回の人材育成を通じて、イスラエルは諸外国からのあらゆるサイバー攻撃に「迎え撃つ」構えである。

サイバーセキュリティにおいて重要なのは人材育成

サイバー攻撃は地震や津波のような天災ではない。人が構築した人工的空間(サイバースペース)に対して、人が攻撃をしかけてくるものである。当然、そこを防御するのも人である。そのためには人材育成が重要になってくる。優秀な人材の確保が国家のサイバー

スペース防衛において必須となる。現代社会はイスラエルだけでなくほぼ全ての国家がサイバースペースに依拠している。サイバースペースなしでは個人の生活も社会経済も成立しない。そのサイバースペースへ侵入し乱すものから徹底的に防御しなければならない。サイバーセキュリティの人材育成は国家にとって重要な課題である。

さらに今回のイスラエルのプログラムでは16歳から18歳という若い人材が対象であることが重要だろう。現在の情報通信技術は次から次に新しいプロダクトやサービスが登場するが、それに比例して多くの脆弱性も存在している。そのような脆弱性を標的としてサイバー攻撃は行われる。それらを早期に検知し、対応プログラム(パッチ)を開発して修正するといった行為は若い人材の方が得意だろう。サイバースペースを構成しているシステムはプログラミングされたソースコードの集積である。若い人材の育成は国家のサイバーセキュリティを考慮すると長期的にも有用である。

自民党「政権公約J-ファイル2012」でのサイバーセキュリティ

日本では2012年12月26日に政権交代で自民党が政権に返り咲いた。自民党が選挙時に掲げていた「政権公約J-ファイル2012」の44番と126番において「サイバーセキュリティの強化」をあげている。それぞれ「経済成長」と「外交・安全保障」の分野である(※3)。その中には雇用創出、人材育成も挙げられている。
サイバースペース防衛は国家安全保障の重要なイシューであり、それを支えるのは人材である。「J-ファイル2012」においてサイバーセキュリティを安全保障として掲げていることは、日本も国家としてサイバースペースの防衛に本気で取り組んでいくというシグナルを世界に対して送っていることが伺える。日本においてもサイバーセキュリティ防衛のための若い人材育成に向けた取組みに期待したい。

【参考動画】Digital  Iron Domeについて説明するイスラエルのネタニヤフ首相

*本情報は2013年1月7日時点のものである。

※1 Jerusalem Post(2013)” PM to cyberwarfare pupils: We're building digital Iron Dome,” January 1, 2013, http://www.jpost.com/Headlines/Article.aspx?id=298018

※2 原文(下線は筆者):"The threat of cyber attacks against Israel comes from Iran and other elements," "Our vital systems are targets for attack, and this will only increase as we enter the digital age. We are bolstering our ability to deal with these threats and are building a digital Iron Dome," http://www.daijiworld.com/news/news_disp.asp?n_id=159707

※3 「政権公約J-ファイル2012」より(下線は筆者)
「経済成長」としてのサイバーセキュリティ強化(p8)以下引用
44. サイバーセキュリティの対策強化
頻発するサイバー犯罪から国民を守るため、さらに各省の連携を強化し、総合力を発揮できる体制を整備するとともに、官への投資と民間転用を呼び水に経済成長へ貢献します。
特に、警察庁や防衛省、海上保安庁において、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関の全ての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。これらの施策と共に、最高度のセキュリティ技術を製品/サービス化し政府機関に納入するとともに、民間へ転用するための拠点を構築する事を呼び水として、わが国の高度情報セキュリティ産業を創出し、10万人規模の新規雇用を創出して経済成長へ貢献します。

「安全保障」としてのサイバーセキュリティ強化(p21)以下引用
126. サイバーセキュリティの対策強化
わが国の情報セキュリティ技術は未だ世界最高峰にはほど遠く、現行目標(2020年)では足下の有事に対処できません。国家安全保障、外交、国民の安心・安全等の観点から、外国からのサイバー攻撃を有事と定義し、情報セキュリティの抜本的強化を図ります。具体的には、今後5年程度に目標を短縮し、官民の設備投資、情報システム担当者等の集中的な訓練や人材育成、啓発活動、研究開発等の総合的な対策を推進するための基金の創設や予算措置を行うと同時に、有事関連法令や秘密保護関連法令の法的整備や情報セキュリティ関連組織の増強を行います。特に、警察庁や防衛省、海上保安庁においては、米国並みの動的防御システムやバックアップシステムを早急に構築します。また、政府機関の全ての情報機器や複合機を厳密なセキュリティ監視下におくための措置を早急に整備します。

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